奇想の宮廷画家の脳内は凄かった！アルチンボルド展開催レポ

奇想の宮廷画家～ジュゼッペ・アルチンボルド
そのあまりにも奇妙な発想力と精緻なデッサン力で描かれた作品に
私たちはこれまで観た事のない世界を観
感じたことの無い奇妙さを覚えるかもしれません。

9月9日の”重陽の節句”の土曜日
上野・国立西洋美術館にて

【アルチンボルド展～アートギャザリング】を開催しました。

この美術展の作品の目玉は
なんといっても連作となる『四季』と『四大元素』が
一同に集結し鑑賞できるということ！

※但し、『四大元素』のうちの『大気』と『火』については、アルチンボルド本人のものであるのか
複製、又は工房の作であるのかははっきりしないようでありますが･･･

この作品の展示されている部屋には
円形にそれぞれ『四季』と『四大元素』が１枚ずつ、
呼応するように向かい合わせで展示されています。

『春』と向かい合わせなのは『大気』

『夏』と向かい合わせなのは『火』

『秋』と向かい合わせなのは『大地』

『冬』と向かい合わせなのは『水』

遠目には奇妙な人物像のように見えるけれども
近寄ってみればそれは･･･

『春』の人物は
咲き乱れる春の花々や草葉で出来ています。
首から下を描いている葉の緑色は美しく
帽子に白い百合が刺してあるのがとても印象的。

花の色彩や構図が、不気味なようでいて何とも言えない美しさを出しています★

『夏』の人物は
野菜と果物で構成されており、ちょうどこの頃
大航海時代を経て南米からもたらされたトウモロコシや
アフリカ大陸、アラビアなどからもたらされた野菜など
今でこそ当たり前にスーパーに並ぶけれど
当時の人々が観たことの無い野菜が多く描かれているのです。
襟には画家の名前が、
肩の辺りには1572という、制作された数字が描かれているのを見つけるのも
楽しいもの。

これは、夏らしい生命力に溢れていました

『秋』の人物は

秋に採れるきのこ類や果物、木の実や野菜などと
紅葉した木々から構成されています。
ちょっと美味しそう！と思っちゃたのです(笑)

『冬』の人物は
樹々の切り株や枯れ枝、コケやツタの葉、などで構成されており
胸には、冬の果物としてレモンがふたつぶら下がっているのがとても印象的で
静かな印象がとても深く残る絵でした。

また、黄色とも黄金色とも見える、稲のようなもので編まれた服にあしらわれる
”Ｍ”の文字は、神聖ローマ皇帝マクシミリアンを象徴するものだというのも綾子さんから伺い
この絵が実は、世界を制する皇帝自身を賛辞する絵なのだと判るります。

その他にも『四大元素』の『大気』は
鳥で描かれ
『火』は火打石や大砲、銃で描かれ
『大地』はライオンや羊、牛や象、狐などの動物達で描かれ
『水』は、魚や貝、海獣などの生物で描かれ

いわゆる”寄せ絵”の８枚が
一つの部屋の中で、なんとも云えぬ
奇妙で、しかしながら静謐で、そしてユニークな驚きをもって迎えてくれるのです。

アルチンボルドの、驚くべき緻密な描写力は
近寄ればまるで図鑑を観ているようですが
遠巻きに見れば、まったく違う構図となって立ち現れる。

だまし絵というよりも
高度で知的な謎解きをしているような展示の数々でした。

彼の脳内は、一体どうなっていたのか？
あれほどの作品を描くきっかけは何だったのか？

当時のアルチンボルドにインタビューしてみたいと思った私です(笑)

今回参加して下さったのは
久しぶりにリピート参加をしてくださった方の他に
九州から訪ねてきたお母さまと親子で初参加して下さった方もいらして

「初めての美術館なんです！」
と仰りながら、とても楽し気に一緒に綾子さんと解説を聴きながら
作品の鑑賞を楽しんでくださったようです。

【大人のギャザリング】で企画する
アートギャザリングや、資料解説付きのナビゲートツアーは
”普段、美術館にあまり行く機会の無い方が、気兼ねなく楽しんでもらえるように”
と開催しているものです。

”初めて”の方こそ、どうぞ気軽に参加してみてくださいね！

そうそう！今回の美術展ではとてもユニークな企画をしていて