前回の続きでお送りします。
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カルロスさんに本音を伝える
カルロスさんのことで悩む前から、私のコミュ力と対人関係に何か問題があるというのは気づいていました。
特にプライベートレッスン初期のころはよく失敗していました。
「進むのが早すぎる」
「先生は、教えすぎます」
「今日はポイントがわからなかった」
生徒さんから言われた言葉の数々は今でも覚えている。
教え方の問題もあったけど、相手とやり取りしながらうまく進めることがむずかしかった。
私に問題はコミュ力。
対人関係の対応力。
それはわかるけどどうしよう?
とにかく、
カルロスさんがもう二度と怒りをぶちまけないよう何とかするワザが知りたい。
何か効き目のある手法がほしかった。
猛獣使いのムチのようなものを期待していたのだ。
ふと以前参加した研修を思い出した。
「日本語教師のためのコーチングセミナー2日間」(ジャパンオンラインスクール)のことを思い出した。
たしかコーチングは対人関係に有効なコミュニケーションの方法。
「これだ!」と思って飛びついた。
私はカルロスさんを”わたしが教えやすい生徒さん”に変えたかったのだ。
さっそくコーチング講座に通う。
しかし、コーチングを習い始めてがっかりした。
「コーチングは相手を変える方法ではない」と聞かされたから。
「コーチングは相手をサポートする手法」と聞いてますます憤りを感じた。
「私はそんな優しい気持ちで始めたんじゃない」
「すぐに効果のあるノウハウを教えてほしい」
イライラ。
モヤモヤ。
それをよそにコーチングの講座では「自分の感情を受け止めること」とか「他人さまにコーチングをする前に己を知りなさい」とか言われる。
毎回出る自己理解ための課題に取り組んだ。
課題というのは毎回テーマがあり、レポートを書き、講座で自己開示をする。
例えば「責任とは?」「自然体とは?」
抽象的で言葉にしたことのないことや、自分の過去について書き、自己開示をする。
当時の私は迷路をぐるぐる歩いているような気持ちだった。
コーチング講座にはいろいろな人が参加していた。
管理職、営業職、医療関係、サービス業など業種や世代を超えてセッション練習をする。
自信満々に見えた管理職の人も悩んでいたり、一見おとなしそうな人でも芯の強い人がいたり、様々な人との対話が繰り広げられた。
自分の感覚と他者の感覚はこんなにもちがう。
「人はみなちがう」
アタマではわかっていたけど初めて実感した。
それでもまだ、
カルロスさんとのレッスンは相変わらずだった。
「あと30分もあるよ~」
まだおびえていたんだよね。
コーチング講座ではこう教わった。
「相手の本音を聞きたければ、まずはコーチが腹を割って自己開示すること。まず自分から本音を言うことで、相手にも話してもらえるんだよ。」
「相手に話してもらう」か…
「答えさせる」とか「話させる」じゃないんだよね。
ある日、
私はカルロスさんに感じていることを伝える決心をする。
ついに、
意を決してカルロスさんにこういった。
「わ、わたし、カルロスさんがこわいんです。キンチョーするんです。」
すると
カルロスさんは
「ええええー!!わたし?こわいですか?! 先生、知りませんでしたっーーー!!」
心底おどろいたようだった。
カルロスさん自身はただフツウに振る舞っていただけだったんだ。
自分がそこまでコワイ印象を与えていることも気づいていませんでした。
怒りをぶちまけたときのことも。
コーチングを学ぶ以前の私だったらあり得ないことでした。
生徒さんに「あなたのことがこわいんです」なんていう選択肢は。。。
*コーチングのポイント
「自己開示の返報性」
コーチ(教師)が根ほり葉ほり質問すると、相手によっては一問一答の短い返事しか返ってこなくなります。何を聞いてもプツンと会話が途切れることはありませんか。
コーチ(教師)からの威圧感やコントロールを感じると学習者は安心して話せません。相手に本音を語ってほしいとき、コーチ(教師)が自分の気持ちを伝えること(自己開示)が必要です。それが伝わると、相手も「それなら自分も(お返しに)話そうかな」という気持ちが働き、話しやすくなります。
(次回に続く~「カルロスさんの自己開示」)
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