“中華風ファンタジーの世界でダンジョンを作るゲーム”は、
RPG全盛期の頃に西洋風の世界観が幅を利かせる中で、これまでに作られてきたもの
“ではない”ものを考えていけば、自ずと導き出される発想だと思います。
世間から誤解され、悪者扱いされる主人公(=洞仙)の設定も、ただ単純に
“ダンジョンのヌシを悪者にしないためのこじつけ”だったわけです。
独特に見える世界設定も、こうして1つ1つ紐解いてみれば、どれも人間の頭で理解出来る
ものばかりだ、ということが分かるかと思います。真に優れた創作は、そうあるべきです。
それでは今度は“他に類を見ない”と言われる最大の所以(ゆえん)でもある、
複雑怪奇を極めるゲームシステムの解説に挑んでみることにします。
まずは実際に動いてるトコを見てみましょう。動画はスーファミ版のものです。
↓トレーニングシナリオ
↓本編シナリオその1
『カオスシード』のダンジョン(=仙窟)は、様々な機能を持つ“部屋”と、
それをつなぐ“通路”でもって構成されています。
“部屋”には、それぞれが持つ機能の他に“大きさ”と“属性”、
(主に)機能の維持に必要な“エネルギー”の消費/生産力、
(主に)機能強化に用いる“仙丹”の生産力、
(侵入者は時たま部屋を攻撃してくるので)“耐久力”がそれぞれ設定されており、
エネルギーと仙丹の生産力は(壁を含む)部屋の中に囲った色粒『因素(いんそ)』に比例します。
“属性”は木、火、土、金、水の5種類。作る場所とタイミング(ターン経過で変化)により決定され、
そしてこれこそがこのゲーム最大の醍醐味である“風水システム”に欠かせない要素となります。
あまり馴染みは無いかもしれませんが前述した5種類の“属性”は、
いわゆる『陰陽五行』というヤツで、それに基づく相性関係によって、
つないだ“部屋”同士に気が流れ込む…もとい『風水ポイント(勝手に命名)』が加算され、
その数値の組み合わせを条件として、さらに強力な機能が開放されます。
土属性の部屋を中心に見てみますと、金属性と水属性それぞれの部屋と接続し、
火属性の部屋とは2つの通路でつながっています。通路の端にくっついてるのは“扉”で、
くっついた側に向けてポイントを倍加させます。
陰陽五行では、火⇒土⇒金⇒水⇒木⇒火…の方向で相性が良く、
火⇒金⇒木⇒土⇒水⇒火…の方向で相性が悪い、とされています。
よってこの場合、土属性の『風水ポイント』は、
火:2(良相性)+4(扉で倍加)、土:1(自身の属性)、金:1(通常)、水:2(扉で倍加)
となります。(相性が悪い場合は“扉”があれば1ポイント加算)
コレを考えるのがメチャクチャ楽しいんですが、分かりましたか?
分かりませんよね。えぇ、分かりませんでしたとも。
ココまでなら、過去にさんざん読み漁ってちっとも頭に入らなかった
雑誌記事の内容と大して変わりません。問題はその先です。
スーファミ版サターン版どちらともゲーム内で懇切丁寧に説明してくれているんですが、
やはりルールやシステムは、何のために存在するのか?という“理由”や“必然性”に
基づいていることを証明しなければ、理解につなげるのは難しいのだと思います。
逆に言えばそれが証明出来ないのは、ルールの方が間違っているということです。
「人生で大切なことはすべてゲームで教わった」とはラストコンテニューの歌詞ですが、
自分はテレビゲームから、特にクソゲーのクソっぷりを自分の中で明確にする作業を通じて、
“ルールの方が間違っている”という感覚を、正しく育てることが出来ました。
基本的に出来ないことは絶対に出来ないテレビゲームの世界では、
その中での決まり事や周囲の環境によって人がどう動くのか、ということが明確に可視化されます。
ですがそのこと自体は、必ずしも作者の意図や都合に一致してくれるとは限りませんので、
そうした“ズレ”を顧みることなく、作者側の一方的な都合と価値観だけを優先すれば、
プレイヤー側の能動的な行動にいちいち水を差し、やりたくもないことを強制させられるだけの
単なる“不自由”と“不愉快”にしかなりません。それはルールの方が間違っています。
つい横道に逸れてしまいましたので本題に戻りますと、『カオスシード』の複雑怪奇な
ルールやシステムの“理由”や“必然性”とは一体なんぞや?ということになります。
そのためにはまず、このゲームの肝である“ダンジョンを作ること”すなわち、
“拠点防衛”と“作るゲーム”の構造的欠点について
書かなければならないわけですが、長くなりそうなので、その話はまた次回にて。
〈続く〉