●一九四六年憲法 ーーその拘束 @江藤淳 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

一九四六憲法・・って今の憲法の事。
1946年、つまり終戦の翌年の11月3日公布、
翌1947年5月3日施行、これが憲法記念日。


以来、この憲法は72年間、
一度も改正されることなく現在に至り
安部首相は改憲を目標に掲げているけど
日本国憲法を守れ!という声は大きくて、
護憲派の人達が、頑強に反対している。




この本は昭和55年、40年も前に書かれ
江藤さんがアメリカで調べた、膨大な
GHQ関連の資料から、戦後の日本人が
知り得なかった事実を解き明かしている。


まず日本人が認識するべきなのは
日本国憲法はGHQが作った、という事実。
にも拘わらず日本人の作、という体裁とし
真実を日本人に知らせないよう情報を検閲、
操作する工作がなされた、という事実。

文芸評論家、江藤淳。プリンストン大学に
留学し、講師も務めた。




江藤さんはワシントン郊外の、合衆国国立
公文書館分室で見つけた資料を挙げる。

1946年11月25日付、月例業務報告書
削除又は発行禁止処分の対象となる項目】
   3.SCAP(連合国最高司令部)が
      憲法を起草したことに対する批判
   4.検閲制度への言及


これつまり、◆GHQが憲法を起草しました。
◆それに対する批判を禁じました。
◆検閲について語ることも禁止しました。
って、ハッキリ言ってますわね。

アメリカ公文書館のワシントン本部




てゆうか、このような文書によらずとも
日本の憲法をGHQが作った事は、
当時からアメリカ国内で知られており、
その功罪について活発な論議がなされ
様々な論文が多数、発表されているのだ。


知らないのは日本人だけでしょ。
「憲法草案を検討する時、文章が不自然で
何故か添付されている英訳文を読む方が
よく意味を理解できた」、、なんて言うし


この本の当時も、かのライシャワーは
ハーバードに留学した東大法学部卒の学生が
憲法をGHQが起草した事実を全く知らない
ので「頗る奇異な感じがした」と仰っている。

原本




「戦争放棄」をマッカーサーと幣原喜重郎、
どちらが言い出したか、について
本人同士は幣原発案で一致している。けど
その一致が本当か?  黙契によるものか?


江藤さんはもちろん、日本人を納得させる
ための嘘だ、と結論し、根拠として
日本側の草案には最初から最後まで
軍隊が盛り込まれ、幣原も承認していた
事実を上げている。
日本政府は当然、軍隊を持つつもりだった。



その意志が挫かれるのが
マッカーサーがGHQに憲法草案を作るよう
指示した、2月3日のマッカーサーノート。
この時マッカーサーは、交戦権だけでなく
自衛権も持たせないよう指示している。


これを受けて、25人の職員・・この中には
弁護士4人(憲法学専攻者ゼロ)、前議員1人、
行政法専門家1人、社会学者2人、うち
日本の伝統、政治体制の有知識者は3人・・が
6日6晩の特急作業で草案を作り、

さすがに自衛権の否定は国家そのものの否定
になってしまうので、削除した上、、
白洲次郎らに一晩で日本語訳させたものが
現在の日本国憲法になる。


日本国政府はこの憲法を、全会一致で
可決した自主憲法、として発表した。
なぜなら、軍隊の無い国家なんてあり得ず
国民は納得しない。占領国の押し付けか?
という疑問を持たせない発信方法をとる。
これもマッカーサーの指令なのだ。





江藤さんが何より問題だ、と指摘するのが
憲法9条第2項の「交戦権はこれを認めない」
これは重大な主権侵害であり、
単なる「平和憲法」だの「非戦条項」だの
という言い換えで、誤魔化すべきでない。


国の危機に対して戦う、という当然の権利を
持たせてもらえず、敗戦国の日本は
主権を一部制限されたまま、再出発した。
そしてそれは今も変わっていない。


「交戦権」は素直に読めば、戦争する権利。
でも石破茂はテレビ朝日で、「権利じゃなく
戦争ルールのことです」、とか言ってたな。
このように、解釈からして不明瞭なのは
「交戦権」という言葉自体、世界に存在しない
から。これ厳然たる事実。





戦争放棄だろうと、軍隊不保持だろうと
外交権を認めない!って鎖国だろうと
自分の国で決めたことなら良いけどね、


アメリカ人が英語で作った文章を
そのまま日本語訳した憲法には
私はただただ、屈辱しか感じない。




*巻末の解説は、いつもとても参考になる
んだが、この本・白井聡さんの解説は
的外れで不快。なんだこれ。