おはようかも🦆
今週火曜日から『源氏物語』の全訳に挑戦し始めた鴨です。
月曜日から金曜日までの平日毎朝5時に投稿。
原文400文字程度を目安に訳していきます。
通勤、通学、家事の合間など、朝のスキマ時間にぜひお楽しみください♪
前回のあらすじ
その人の父・大納言は故人となっており、母・北の方は由緒ある家柄のお方ではありましたが、立派な後ろ盾がありません。しかし前世で帝との御縁が深かったのか、玉のように美しい皇子をお産みになります。高貴な右大臣家に生まれ、皇太子候補である第一皇子よりも可愛らしいので、帝はこの若君こそ大切に扱われるのでした。
第1帖 桐壺(3)
現代語訳
その人はもともと、普通の宮仕えをなさるような軽い身分ではありませんでした。後宮での評判はとても高く、貴人らしく振る舞っておられたのです。
けれども、帝が節度を越えて側に付き添わせるあまり、宮中で催される管絃のお遊びや、何でも風情ある催し事があるたびに、真っ先にその人をお呼び寄せなさいます。ある時は日が高くなるまで一緒に寝過ごされ、その日もそのまま帝の側に仕えるなどということもあったのです。帝が一途にその人を側から離さないので、軽々しく扱われている身分に見えることもありました。
それがこの美しい若君がお生まれになってからは、たいそうな特別扱いを心に決めておられる様子です。第一皇子の母君は、「悪くすると、この若君が皇太子になるかもしれない」と疑い始めました。誰よりも先に後宮へ入り、帝の御寵愛も並大抵ではなく、第一皇子の他にも御子たちをお産みになった女御です。このお方のご意見だけはやはり無視できず、帝は気がかりに感じておられました。
原文
はじめよりおしなべての上宮仕へしたまふべき際にはあらざりき。おぼえいとやむごとなく、上衆めかしけれど、わりなくまつはさせたまふあまりに、さるべき御遊びの折々、何ごとにもゆゑあることのふしぶしには、まづ参う上らせたまふ。ある時には大殿籠もり過ぐして、やがてさぶらはせたまひなど、あながちに御前去らずもてなさせたまひしほどに、おのづから軽き方にも見えしを、この御子生まれたまひて後はいと心ことに思ほしおきてたれば、坊にも、ようせずはこの御子の居たまふべきなめりと、一の皇子の女御は思し疑へり。人より先に参りたまひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子たちなどもおはしませば、この御方の諌めをのみぞなほわづらはしう、心苦しう思ひきこえさせたまひける。
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