おはようかも🦆
昨日から『源氏物語』の全訳に挑戦し始めた鴨です。
月曜日から金曜日までの平日毎朝5時に投稿。
原文400文字程度を目安に訳していきます。
通勤、通学、家事の合間など、朝のスキマ時間にぜひお楽しみください♪
前回のあらすじ
どの帝の御代でしたか、それほど高い身分ではないのに、誰よりも帝に寵愛されている人がおりました。後宮に仕える他の女御や更衣たちは、それが面白くありません。恨みや嫉妬を背負ったその人は、心労から病気がちになっていきました。それでも帝の御心づかいを支えにして、宮仕えを続けているのでした。
第1帖 桐壺(2)
現代語訳
その人の父・大納言はすでに亡くなっていて、母・北の方は古くから由緒のある家柄のお方でした。両親ともに健在で、今を時めく華やかな女御たちにもそれほど見劣りすることなく、母君はどんな儀式もうまく取り繕っておられました。けれども、これといって太い後ろ盾がないので、格別な祭事が行われる時はやはり頼れるところがなく、心細そうに見えました。
その人は前世でも、帝との御縁が深かったのでしょうか。世にまたとないほど清らかな、美しい玉のような皇子さえお生まれになりました。いつかいつかと心待ちにされていた帝は、急いで宮中に呼び寄せてご覧になると、めったにないほどかわいらしいお顔の乳児であります。
先にいらっしゃる第一皇子は、高貴な右大臣家の女御がお生みになった子です。後ろ盾が厚く、皇太子になられるお方として大切に育てられていると、疑いなく世に知られておりました。ですが新しく生まれた皇子の、この輝くような美しさには到底及びません。表向きは第一皇子として相応に扱われるぐらいで、内心はこの若君こそをば大切にしたいとお思いになり、帝は限りない愛情を注がれるのでした。
原文
父の大納言は亡くなりて、母北の方なんいにしへの人の由あるにて、親うち具し、さしあたりて世のおぼえ花やかなる御方々にもいたう劣らず、なにごとの儀式をももてなしたまひけれど、とりたててはかばかしき後見なければ、こととある時はなほ寄り所なく、心細げなり。
先の世にも御契りや深かりけむ、世になくきよらなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ。いつしかと心もとながらせたまひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児の御容貌なり。
一の御子は右大臣の女御の御腹にて、寄せ重く、疑ひなき儲の君と世にもてかしづききこゆれど、この御にほひには並びたまふべくもあらざりければ、大方のやむごとなき御思ひにて、この君をば私物に思ほし、かしづきたまふこと限りなし。
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