パリのテリアンシェフから、
「日本のレストランで働きたい若者が行くから、
ちょっと面倒を見てやってくれる?」と連絡が。
・フランス語と英語を話すけど
・日本語はできない
・京都か大阪の日本料理店で働きたい
ええ〜。それはなかなか厳しそう。
日本語ができない人を、日本料理店が雇うのかしら?
それはともかく、
ご当人から電話がきたので、
ル・ポンで会うことにしました。
なかなか登場せず、
ちょっと飲んでまちます。
迷ってるらしい。
だいぶ遅れて青年が登場。
・マルセイユ出身
・魚好き
・フランス料理人
・ワーキングホリデーで日本に1年滞在予定
きけば、パリの日本食料理店で食べた料理のあまりのおいしさに
感動。
「フランスにある、なんちゃって日本料理店の変な日本料理店ではなくて
本ものの日本料理をフランスに伝えるために!!」
と日本にやってきたのだそう。
「うさんくさいのはこんなんだよ」
と見せてくれた写真は
日本の寿司として
「アボカドとマグロのフライが中心に巻かれた巻き寿司」。
あ〜、カリフォルニアロールっぽいけど、
まあ、こんなものだよ。天むすのフライ変形だね。
と思いつつ、
たくさんの魚の写真を見せてくれたり、
コロナ禍、トリュフのファルスを詰めた
鳩のバロティンヌを顧客に発送する仕事をしてたとか、
日本の牡蠣はどこで食べられる? 京都?
とか、寿司以外で、日本の典型的料理は何?
鰻が好きなんだよ〜とか。いろんな食にまつわる話しを
支離滅裂にあれこれ。
「仕事の当てもなくいきなり日本にやってくるなんて、大丈夫なの? ちょっと無謀では〜!?」
と思ってましたが、
考えてみれば、
「フランスのレストランで働きたくて、何度も通ってお願いし、
念願叶って働かせてもらった」
という日本のフランス料理人の話はよく聞きます。
つまり、たんにその反対バージョンなのであって、
ツテがなくても飛び込んで行けるのは
若さゆえの特権なのかも。
日本国政府の発行した滞在許可書を見せてくれましたが、
誕生日からしたら26-27歳のようです。
よく考えたら、自分だって25歳のときに
フランス語もろくすっぽ分からず、料理の学校に留学した・・・
のですから、よくよく考えたら、
気持ちはとてもよく分かるハズなのです。
そういえば、私が料理の勉強のためにパリに到着してすぐ。
東京での会社員時代、仕事上行き来のあったよそ部署のフランス人デシャンさんに、
「会社を辞めてフランスに行く」
と行ったら、パリの弟さんを紹介してくれて、
「会って、何かあったら助けてもらうといいよ」
と電話番号をもらっていました。
すぐに電話して、カフェで待ち合わせてお茶を飲んだのです。
たどたどしいフランス語で「何のためにパリに来たのか」話しましたが、
趣味嗜好もまったく違い(先方はおそらくエンジニア)、
共通の話題もなく、
さして話しもはずまずに、
「じゃあ、またね!」
とわかれました。
でもそれでも、私を待つ人など誰もいない
ひとりぼっちのパリで、
(一人の知り合いも友達もいない状態で
パリに降り立ったのでした)
「だれかと待ち合わせをする」
ということだけでも、随分と心なごんだことを覚えています。
いまの彼にはスマホもあるし、京都のゲストハウスに滞在していて隣人もいるから、そんなこともないでしょうが、
「知り合いの知り合い」がいて、勝手のわからない土地で、
少しでも不安をなくしてあげられたらいいな
と思いつつ。
話しているうちに、
その高い志と楽しげな話しぶりに
すっかり、応援したい気分になりました
ちなみに日本料理店の仕事は
テリアンシェフの大阪の友人(料理人の方)が、
豊富なツテから、探してくださることになりました。
早く見つかって、彼の確たる居場所ができたらいいなあ
と思っています。