12月の料理基礎講座で | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

塚本有紀のおいしいもの大好き!

フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

12月16日(木)、17日(金)

今月の料理基礎講座はクリスマス用パーティメニューを組み込んだ内容です。ちょっと大変。

アミューズ・グールは先日いただいたシャンパーニュ地方ランスのお土産「シャンパーニュのジュレ gelee de champagne」$塚本有紀のおいしいもの大好き!
をみなさんに召し上がっていただくため、小さいフォワ・グラのテリーヌを仕込みました。
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テリーヌをスプーンですくってオーツ麦のクラッカーにのせ、ジュレをかけます。
わあ、ステキ!という歓声があがります。憎いくらい素敵なものをフランス人はよくまあ考えつくものです。ロゼのシャンパンのジュレもあるのだそう。
ジュレは単体で食べると、酸味のあるアルコール感やぎゅっとうまみの凝縮した味(ちょっと上等のみりんのよう)が感じられますが、フォワ・グラと合わせるとかなり甘く感じます。今回はテリーヌから砂糖は抜いてみました。甘美な味わい。
瓶にはシャンパンを準備段階で55%、砂糖は45%で糖度60度に煮上げ、寒天Agar agarを添加してとろみをつけてある旨書かれています。
「今度シャンパンが残ったらやってみようかしら」なんて声が聞こえましたが、私は残ったためしがないので道は遠そうです。


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さて前菜はまず豚肉を使ったリエットRilletteです。これは豚肉をペースト状になるまで、脂肪で煮込んだもの。フランスで有名なのはトゥールToursやアンジェAngers、ル・マンLe Mansです。それぞれ特徴があり、パリでも瓶詰めを買うことができます。
今回は黒豚のバラ肉と肩ロースを用意しました。これを水、白ワイン、スパイス類とともに3時間ほど煮込んだら、肉を取り出し繊維状になるまでほぐします。これを煮汁とともに混ぜ合わせラムカンに詰め、一晩寝かせたらできあがり。甘みがなくてぱきんと辛く、お肉は繊維がほろほろと残っているのが好みです。じつはこれは冷製のオードヴルで、これ1品で前菜というわけにいかないので、もう1品。

根セロリのレムラードRemoulade de Celeriを作ります。定番のフランスお総菜です。
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根セロリとは、読んで字のごとく、セロリの根っこです。ただし私たちがセロリといって思い浮かべるセロリは枝を食べるための品種で、根セロリは根っこを食べるための品種ですから、べつのもの。セロリよりもあくもクセも強いとされます。しかしセロリは食べられないが、これは食べられるという珍しい方もたまにおいでになります。
千切りにして、マヨネーズをからめます。レムラードソースという、マヨネーズ+香草+ピクルス+ケッパーのおいしいソースがありますが、実際のところフランス中どこに行っても、なぜかマヨネーズをからめます。でも名前はセロリのレムラードなのです。
お総菜屋さん、スーパーやデパートの総菜コーナー、シャルキュトリー(豚肉加工総菜店)などどこでも売られています。この独特のクセが私は、大、大、大好きで、フランスに行ったら必ず食べたくなるものの一つです。

さて主菜の準備です。
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すずきのパイ包み焼きBar en feuillete
まるごとのスズキを3枚におろし、フィレにウイキョウfenouilのいためたものを詰めます。促成フィユタージュfeuilletage rapideを作り、全部を包み、もとの魚の形に戻します。オーブンで30分ほど焼いたらできあがり。豪華なパーティ料理です。
すずきはフランス料理の中では高級魚の扱いです。夏が旬の魚ではありますが、じつは冬の今の時期、天然ものがわりと簡単に手に入ります。黒門市場で1.5kgの注文をだしましたが、来たのは1.9kg! ちょっと大きめの料理になりました。
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$塚本有紀のおいしいもの大好き!-モンドール
チーズはモンドール。とろとろをすくっていただきます。
「こんなにとろとろなのは、初めて!」
の声に驚きました。なぜなら、溶ろけていないモンドールなどというものがあるなんて知らなかったからです。その方はフランスで2箱も買って来たそうですが、固かったのだそう。よっぽど運が悪いのか、とろけたモンドールしか食べたことのない私がよっぽど運がよいのか。


さてデザートは「燃えるアラスカbaked Alaska」です。フランス語では「ノルウエー風オムレットOmlette Norvegienne」といいます。日本の結婚式で燃えているデザートです。
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まずジェノワーズ(共立てのスポンジ)を焼き、間にヴァニラアイスクリームとフランボワーズのソルベをはさみました。周囲をすっぽりイタリアンメレンゲで覆い、高温のオーブンに入れます。
うっすら焼き色が付いたら、オー・ド・ヴィを熱して火をつけ、液体をケーキに回しかけて全体を炎で包みます。
これは物理学者の「泡立てた卵白の熱の非伝導性の原理」というものに基づくのだそう。メレンゲが絶縁体となり、中のアイスがとけることはありません。アイスクリームの天ぷらと同じ原理です。
ヨーロッパでは製氷機が発明されるまで、昔はノルウェイから氷を運んできていたのだそうです。アイスクリームが氷をイメージさせ、ノルウェイ風という名前がつきました。周囲につけるメレンゲが、オムレツを表します。
これをアメリカでは「ベークト・アラスカ」と呼びますが、そもそもは「アラスカ・フロリダ」と呼んでいたようです。冷たいアイスがアラスカを、熱いケーキがフロリダをイメージさせたからです。
これがベークトアラスカに名前を変えたのは1867年に、アメリカがロシアからアラスカを買収したことから。新しい領土を祝して「ベークトアラスカ」になったのだそうです。