ブレスの鶏とトリュフで、半喪服風を作りました | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

10年12月10日、11日
料理連続講座で、「ブレス鶏のドゥミ・ドゥイユ Volaille de Bresse demi-deuil」を作りました。
長い間「いつか作りたい!」と思い続けた料理です。せっかくなので、クリスマスも近い12月の授業にすることに。しかし2.3日前にヨーロッパをおそった大寒波のせいで飛行機が飛ばず、ブレス鶏の到着が危ぶまれましたが、何とかぎりぎり間に合いました。

ブレス産の鶏は、フランスが誇る食材の一つです。AOP(原産地保護名称)がつき、その高い品質が保証されています。この食材はフランス人の愛国心をいたくくすぐるものだと言われます。それは
「鶏冠の赤、羽の白、脚の青」
がフランス国旗トリコロールを体現しているから!(私には脚は黒に見えますが・・) ラベルにもしっかり赤と白と青が描かれています。
野原に放し飼い(一応柵はあり)にされ、のびのびと育てられた鶏は身がしっかりとしまり、かつ繊細な滋味に富んでいます。ブロイラーのような余分の脂肪がぶよぶよつくことはなく、脂肪も濃い黄色。身は赤身で、濃いめの味です。

丸ごと料理するときには、ゲストにそれがブレス鶏だと知らせるために、脚につけられた鑑札(写真)をそのままにしておきます。
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脚の指をカットしますが、本来は中央の1本だけはそのまま残しておくのがスタイルです。(残念ながらこれは納品の段階ですでにカットされています)

もう一つの食材はトリュフです。そろそろ旬の時期に入り始め、したがって値段も相当に、素敵・・・。「時価」のため、注文してからずっとどきどきです。しかしドゥミ・ドゥイユ(半喪服風)には、黒いトリュフが必要なのです。
それは白いソースと黒いトリュフが半喪服を表すとされるから。まったく料理になんてすごい名前を付けるのでしょうか。しかしブレスとトリュフだなんて、なんて贅沢な組み合わせでしょう、とも思います。
使ったトリュフはフランス産のフレッシュです。写真は油を回してあるのですでに見えませんが、よいトリュフの証拠である白い美しい筋が内部に走っています。しびれるような香りに、入っていたビニール袋さえもが愛おしいような・・(ただし、昔懐かしい岩のりの「磯自慢」の香りとの意見も! これは本当に言われてみればその通りなのです)。

鶏の皮と身の間に指を入れて皮をそっとはがし、その間にトリュフのスライスを忍び込ませます。
鶏のフォン(だし)の中で、70℃でゆっくり火を入れること3時間。


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こうすることで、柔らかくしっとりとしたままで火が通せます。いつもは断然もも肉が好きですが、これに限っては胸肉を選びたくなるかも。ようやく、ぷっくぷくのドゥミ・ドゥイユのできあがりです。みなさんのおかげでこんな料理を作ることができて幸せです。
かつてその名をはせたリヨンのレストラン「メール・ブラジエMere Brazier」のスペシャリテであり、今もMOFのシェフが守るそのお店でいただくことができるのだそう。いつか行ってみたいものです。