父は現在71歳である。
生命保険はかけていたが、医療保険についてはずっと、無保険を貫いてきた。
その父が昨年、医療保険に加入しようか迷っている、と私へ相談してきた。
70を超えると保険料が高かったり、入れなかったり、入れても一部保障範囲外になるものがあるらしい。
69歳のうちに入っておけば安心かなあと呟く父を見て、あれだけ保険なんていらんと言っていた父も寄る年波には勝てへんかったかと思った。
それで不安が消えるなら加入しなさいなと私も勧め、毎月３千円台だったかの保険を父は昨年契約した。
満を持して加入したその医療保険。
父は71歳の今年、なんと加入からわずか1年で解約してしまったのである。
毎月払う数千円がアホらしくなったと。
保険に使うより、何か自分の好きなことに使いたいなあと思ったらしい。
先日父はNISAを始めたところだ。
医療保険はやめたのに、NISAはやるんかとちょっとびっくりしてしまった。
「寄る年波には勝てなかったから父は医療保険に入った」と思っていたが、たしかに勝てはしないけれど、負けてもおらんらしい。
70歳を迎える直前、69歳の一瞬を不安に感じたというだけ。
70歳を超えてしまえばもう元通り、いつもの父に戻ってしまった。
私なんて喘息持ちなので、今加入している保険を失えばもうあとは無い。
だからとっても不安だ。今の保険は実家の自営業に絡んで加入したため、実家が店仕舞いしたら私まで加入権利を失ってしまう。
今のうちに何かしらの手を打たねばと焦っているけれど、父に言わせれば「まあそんときは無保険でもええんちゃうのんか、」と。
何かが起きたその時に考えたらええやんか、と口では適当なことを言いながらも手堅く人生を設計してきた父であるから、話半分に聞いている。
父は父なりの、緩急付けた家計管理で私たちを養ってきた。
私も、私なりの緩急で行くべし。
医療保険は要るな。でもスタバは要らんな。
と、そういう緩急を付けながら私も自分の人生を取捨選択していくわけだが、何を選ぶか何を捨てるかについては、父の底はかとない精神的な強さも見習いたいと最近思うようになった。
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