夫が靴下をゴミ箱の前に置いていました。これはつまり、「穴が開いてもう履かないから雑巾に使ってください」ということです。
 
私は布という布を最後、雑巾にしてから捨てています。その様子を知る息子も主人も、捨てる布類をそのままゴミ箱に入れず、一旦ゴミ箱の前に置いておいてくれます。その最終目的地を決めるのは私です。
 
穴の開いた靴下もそうです。もう履かないにも関わらず、その後雑巾となるのを見越して、履いて汚れたそのままではく、一旦洗濯機に放り込んでからゴミ箱の前に置く、というひと手間を夫もかけてくれています。
 
そうして打ち捨てられた靴下を、私もさっさと雑巾にすればいいのですが、足先に穴だけ開いて他が綺麗な状態を保っている場合、とてもとても、すぐに雑巾になんてできません。どうしても一旦穴を塞いでみたくなってしまいます。
 
 
 
 
厚手でかなりしっかりしたこの靴下。しかし足先にはしっかり穴が開いています。
頼まれてもいないのに私は、こっそり穴を縫って塞いでみました。足先に違和感が残らないように細心の注意を払って針を通した結果、それはもう素晴らしい仕上がりで、まるで新品の靴下のようです。
 
私はその靴下を、また夫の靴下ボックスに戻してみることにしました。勿論黙って戻します。「靴下縫っておいたよ」なんて言ったら最後、誰もそんなもの履いてくれないからです。縫ったとバラさなければ気付かず平気で履くのに、縫ったとバラした途端に【気持ち悪い】という思い込みにより履かなくなるのが「縫われた靴下」です。
 
黙って戻しておけば夫も履いてくれるはずだと期待した、その翌日。
 
他の靴下と違い目立つ柄をしていたこの靴下、捨てたはずのものが何故ここに、と夫も思ったことでしょう。一度も履かれた形跡の無いまま、その靴下はまたゴミ箱の前に置かれていました。
「あ!履いてない!ねえねえちょっとこれ一回で良いから履いてみて!穴塞いでみたの!」
 
私は思わず「縫ったこと」を口にしてしまいました。こんなに上手に縫えたのだから一度履き心地を味わってほしいな…そんな乙女心で声をかけただけのつもりでしたが、それを聞いた夫には違う様子で聞こえたようです。
 
「折角縫ってやったのに!履かずに捨てるとは何事か!一回くらい履きやがれ!」
どうもこのような印象のセリフに夫には聞こえたようで、私のことをさげすむような目で見やって言いました。
 
「何で履かなくちゃいけないの?」
 
私の夫は無口な男です。そんな夫が「次へ続く疑問形」で会話を終わらせることなんて、余程腹を立てているに違いありません。~自分の靴下くらい自分の好きにさせてくれよ~夫のそんな心の声が聞こえた気がして私は焦りました。
 
「ちゃうねん、縫ったからまだ履けるやろ言うてるんちゃうねん、めっちゃうまく縫えたから、見てほしかっただけやねん・・・・」
 
夫の靴下を勝手に縫ったことがまさか争いの火種になりかけるとは思っても見ませんでした。
一回くらい履いてくれてもいいじゃんか、というセリフを私はグッと飲み込みました。

人が捨てるというものを勝手に元へ戻したり、逆に人が大事にしているものを勝手に捨てたりしてはいけません。縫ったがやはり履かないようだと、二度目に打ち捨てられた時点で私は察し、それ以上人の持ち物に口出しすべきでは無かったのです。
 
それを履くよう強いることは、加工が剥がれて焦げ付くようになったフライパンに、「油を塗りこんでみたからもう一回これで卵焼き焼いてみて」と夫に指図されることと恐らく似ています。ありがた迷惑の極みのような嫌悪感だろうと思い、私はそれ以上何も言いませんでした。
 
 
 
 

 

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