幼馴染みが逮捕された。大昔の話だ。すでに出所している。

 

 

昨夏、私が数年ぶりに実家へ帰省したところ、家族で入った食事処にたまたまその彼がいた。

 

先に気付いたのは私の父だった。

仕事柄面識があり、彼が私の幼馴染であることも知っている。


 

 

幼い頃、私たちは本当に仲が良かった。

しかし、だんだん荒れていく彼が徐々に恐ろしくなって、成長と共に避けるようになった。

あちらもあちらで、私などどうでも良いという感じだった。

 

 

当時の彼は、とても鋭い目つきをしていた。

分かりやすく大騒ぎするようなことはない代わりに、裏で誰と付き合い、何をしているのか、まったく読めない少年だった。

 

だから、逮捕されたと聞いても、驚きはしたが不思議ではなかった。

 

 

 

 

 

そんな彼の顔つきが、昨年会った時には一変していたのだ。

 

まだ私と仲が良かった大昔の、とっても柔らかい表情に戻っていた。

人相が変わっていて、まったく別の人みたいだった。

 

いや、元の人に戻ったのか。

 

 

これまでに何度か同窓会はあったが、私は彼を避け、喋らないようにしていた。

でもこの時は、何のためらいもなく名前を呼んだ。

 

「◯◯くんだよね!?」

 

懐かしい気持ちでいっぱいだった。きっと向こうも同じ気持ちだったと思う。

明るい笑顔で、久しぶり!と返してくれた。あと、近況とか、ちょっとした昔話とか。

 

 

あまりに様変わりしていたので、帰りの車の中で、思わず父に言った。

彼の顔つきが全然違う、幼い頃の優しい顔に戻っていてびっくりした、と。

 

そしたら父が言った。

 

「苦労した結果だろうね」

 

 

あんなに険しかった顔があんなに優しくなるなんて、彼はきっとこの何年も何年も、良い苦労をたくさんしたんだろう。

 

いつか同窓会があったら、もし彼が来たら、今度は普通に、また話をしようと思う。

 

 

 

 



工業デザイナーを目ざす私、昆虫に魅入られた写真家のロバ、不安神経症を乗り越え、医者を志す愛子、美容師として活躍する曜子。偶然一つのマンションで暮らすことになった四人はー。

 

 

 

 

 

 

 

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