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最寄り駅から自宅へ、足早に歩く夜道。
背後から迫り来るあの男の、甲高い靴音が響く。
男は身長175cmのわたしよりずっと長身で、腰の位置がやたら高い。足長おじさんならぬ「足長じじい」とひそかに名付けたのは、56歳のわたしより遥かに高齢そうな風貌だから。いつもキャップを目深に被っているのは、きっと目立つ白髪を隠すためだ。
わたしはそんな足長じじいに遭遇するのがイヤだった。
どれだけ急ぎ足で歩いていても、必ず抜き去られる歩幅の差。
なんだか、生きていく力の差を見せ付けられているみたいで。
近頃歩くのが遅くなった？のをすごく気にしてる身としては。
でも今まさにその男・足長じじいが後ろから猛然と？歩いてくる。わたしはその日、職場での苛立ちを引きずっていて。だから男の後ろ姿をおとなしく見送るのがイヤになったんだ。
わが家の玄関まで、あと数十秒。
わたしは思いきり全速力で駆け出した。
勝った！ざまあみやがれ！足長じじい！！
胸の中で（謎の）ガッツポーズをしたその瞬間、
胸ポケットのiPhoneがすぽ〜んと飛び出して。
男と顔を合わさぬよう慌てて大切なiPhoneを拾い、再び走るわたし…頬っぺた火を吹くとはこういうことか。
もしこんなことで画面にヒビでもはいったら、心もヒビ割れちゃうトコだったよ。iFaceのカバー素晴らしい、グッジョブ！
ユッコこと岡田有希子さんが、デビュー3年目を迎えようとした春。彼女の胸の中にあったのは、どんな思いだったのでしょうね…。
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