数カ月前のことだ。
休日の昼、娘と一緒に東京の街を歩いていた。
デパート前の小さな広場でマイクを持った男性が立っていた。
周辺には旭日旗(rising-sun flag)がはためき、黒い宣伝車もあった。
ひと目で右翼団体ということが分かった。
「約束を守らない国、
国際法をゴミと考えている国がすぐ隣の国韓国です。
韓国人は約束を守らない人たちです」。
気分が沈んだ。
のんびりとした休日の昼、
このような嫌悪的な発言を聞かなければいけないとは。
娘が聞き取るのではないかと思って逃げるように席を外した。
鳥肌が立つような不快感を,
日本で右翼の雄弁を一度でも聞いたことがある人なら分かる。
この日は近所の公園で韓国日本交流まつりがあった。
「韓日は共に進まなければいけない隣国」
として手を握った日、不意打ちsurprise attackを食らったような気持ちになった。
「韓国は国際法を違反している」。
昨年10月30日の韓国大法院(最高裁)の
「朝鮮半島出身応募労働者」補償判決以降、一日に一度は聞く言葉だ。
論理は簡単で「協定文の解釈の差」と反論してみると説明が長くなる。
ニュースはもちろん新聞、雑誌、ラジオ、インターネットを問わず
日本政府の主張ばかり出てくる。
日本の視聴者は当然、それが「真理」だと思っている。
韓国がおかしな国となるのは当然だ。
世論調査で
「譲歩するくらいなら日本韓国関係の改善を急ぐ必要はない」
という回答が69%にもなる状況が理解できないわけではない。
1年以上も続いた韓国に対する
「ラベリング(labeling)」作業の結果だ。
日本社会全般に韓国に対する否定的な空気が流れている。
誰かが何かを約束したというわけではないが、
誰もがそのように考える嫌韓国の空気(atmosphere)が日本社会を支配している。
日本人の友人は
「政治的な主張にあまりにも敏感に反応しているのでは」と言う。
じっくりと考えてみた。
政治的な主張と韓国に対する嫌悪が巧妙に混ざって
重い空気のようにのしかかる。
いくら心が強くても委縮するだろう。
食堂や店で不親切な対応を受ければ
「私が韓国人だからだろうか」と疑う。
幼稚園の学芸会の時、娘が最後列の一番端に立つのは
「背が一番高いからではなく韓国人だからだろうか」と考える。
電車でスマートフォンを使う時は
緑色のポータルサイトを開かなくなって久しい。
実際にある男性が「朝鮮語を読んでいるのか」
と因縁をつけるように近づいてきたこともあった。
年が変わると韓国日本関係は良くなるのだろうか。
「朝鮮半島出身応募労働者」
の解決策が出てくれば以前のような関係に戻るだろうか。
崩れるのは一瞬だが、また築いていくのには長い時間がかかる。
春が訪れても春でないようにだ。
冬があまりにも長い。
ユン・ソルヨン(윤설영)/東京特派員