「スティーブン・スピルバーグ、全人類に警告。」
というキャッチフレーズと、なんだか訳がわからないまま
何やら大変な状況に追い込まれた男女の戸惑いが感じられるCMで、
どんな映画なんだろうって気になった映画『イーグル・アイ』

ゆかいなおっちゃんの映画日記-イーグル・アイ
Amazonより


種を明かせば単なるSFサスペンス・アクション映画でした。

良くも悪くもとても分かり易い話で、スピルバーグ監督の“警告”
と言うものも意味不明。
だって荒唐無稽なSFですから、そんな警告は現実にはあり得ない。

多分配給会社の勝手なキャッチフレーズでしょうが、
大画面で見るにはピッタリの娯楽大作なのに、この宣伝のせいで、
観客にサスペンス要素が強いと勘違いをさせ、見た後にガッカリしてしまう。

スピルバーグは10年前にこの映画を構想したのだそうですが、
着想自体は20年前の水準。それを映像技術の進歩と現実環境の進歩で
リアリティを持たせて、“警告”の意味を持たせたかったのなら、
10年前に映像化しておくべきでした。

それを今、映像化したもんだから、キーとなる爆薬くらいしか
新しさはなく、全て手垢のついた設定ばかりです。

じゃあ、つまらない映画なのかというとそんな事はありません。
2時間、キッチリと飽きる事なく見せるのはさすがです。

トランスフォーマーでマイケル・ベイをまともな映画が撮れる
監督に仕立て上げたように、今作もD.J.カルーソさんという
若い監督をしっかりと育て上げたって感じですね。

スピルバーグって昔からカーアクションが意外と得意なんですけど、
この映画でもその伝統を受け継いでますね。



もちろんカーアクションだけでなく、次々と変わる場面、
先が読めない(設定自体手垢がついているので、大筋はわかるけど
細かな部分で「これはなに?」って部分が多々ある。)展開で、
たっぷり楽しめますよ。
会員権の持っているシネコンでは上映が終わっていたので、もうロードショー落ちをしていると思っていましたが、早く仕事が終わったので、何かないかなと会社の帰りによる映画館の上映スケジュールを見ていたら、見たかった『K-20』が、ちょうどレイトショーで1日1回だけ上映していました。
ゆかいなおっちゃんの映画日記-k-20
『K-20』Amazonより


ロードショー落ち寸前、しかもレイトショーということもあり、完全に私一人の貸し切り状態の贅沢。大満足でした。

映画の方も、エンターテイメントとしは非の打ち所のない映画と言えば言い過ぎでしょうか。

とにかく第二次世界大戦のなかったもう一つの世界という別次元に話を持って行く事で、一気に映画の世界観を作ってしまいます。

あの奇才ティム・バートンのバットマンに匹敵する世界観。
リアリティを残しつつ、けれん身の効いた独特の世界ですね。

それは1949年にして、テレビ放送や、東京タワー、高層ビルに小型のヘリなど、時代考証は無視した、子供の空想力と冒険心をくすぐる独自の世界です。

そこにあるドラマもギュッと中身の詰まったものです。

固定化された階級社会、富の偏在、といった大きなものから、普段たよりない浪越警部の囚人に対する高圧的且つ、外部に対する狡猾さを併せ持つ二重性だったり、何不自由なく育ったお嬢様の自分の人生への疑問だったりという、個々の登場人物の掘り下げといった小さなものまで、しっかりと描かれていて、それぞれがポイントポイントでキッチリ絡み合って退屈させません。

アクションにしてもALWAYSのスタッフという日本最高水準のCGスタッフを擁しながら、肉体のみにたよる骨太のもの。CGはCGで徹頭徹尾リアルな帝都を描くのに使われている贅沢さ。

貴族の子女と怪人二十面相に騙されたサーカスの団員の禁断の恋(しかも貴族の子女は明智小五郎のフィアンセ!)もエピソードに織り込みながらクライマックスへ一気です。

演じる俳優陣も素晴しいの一言。

まずは金城武。
彼の場合、ハーフ(だっけ?)のせいか、多少オーバーぎみな演技が鼻につくときがあるんだけど、この映画ではシャイでぶっきら棒な平吉役だけあって、鼻につくような場面は逆に笑いを取る演出に転じてハマり役でした。

次に貴族の子女の松たか子と明智小五郎@仲間徹。松たか子さん演じる羽柴葉子は、育ちの良さととぼけた感じとと芯の強さとを併せ持つ活動的な女性で、他に演じられそうなのは若手では綾瀬はるかさんくらいでしょう。けど綾瀬さんは松さんと比べるとちょっとあか抜けない。明智小五郎役に至っては若手では思いつく人がいない。確かに、松たか子さん、仲間徹さんはちょっと薹が立っていますが、あのキャラクターは他に演じられる人はいないでしょうね。

そしてこの映画を締めるのはこの映画を支えていると言っても良い國村隼さん。主人公金城武を相方に、絶妙の間と風格で金城をもり立てます。忘れてはいけない小林少年@本郷奏多くん。彼の不適な笑みは本当に小憎らしい。他にも上げればきりがないほど俳優陣が楽しんで映画を作っている感じでした。

是非とも、続編を期待したいとても楽しい映画でした。


最後まで読んでくださったあなたに、全ての良き事が雪崩のごとく起きます。
奥菜恵ハリウッドデビュー作『シャッター』ですが、
監督も日本人、撮影場所も日本人で、プロデューサーも日本人。
奥菜恵も主役とは言えませんね。

結局、主演とヒロインとその取り巻きにアメリカ人を連れて来て
英語劇になっているだけのジャパニーズホラーでした。

グロいところもないし、ハリウッドホラーにありがちなウザイ演出もないし、
ストーリーも奇麗にまとまっているし、映画館の暗さを利用した映画ならではの
演出もあるし、なかなか濃い内容の90分です。

が、全然怖くない。

なんだろう。ホラー映画独特の重苦しさも感じないし、淡々と話が進んでいる感じ。

最初の事故のシーンは良かったのよ。
グッと掴まれたんだけど、その後、力が緩んで監督の手から落ちた感じ。

だってね、ああいう事が起こったあと、普通に戻りすぎるでしょ?
異変が出だしてからも謎や追い詰められている圧迫感が弱いんですよ。

設定が違ってた(というよりあんまりにもテイストが違う)んで
気づかなかったんだけど、これってタイの映画のリメイクなのね。
原作は見たけど、この映画の100倍くらい怖かった。

原作の場合、もっと主人公の男性が追いつめられて行くんだよね。
女性も必死で謎解きをする(だったと思う)。

この映画にはそういう緊張感が皆無なんだよね。
人が死ぬときも唐突だしね。

あと、奥菜恵さんは良かったんじゃないかな。
とてもバツイチには思えない清純な雰囲気と、
ストーカー的な狂気を感じさせる演技とうまく出していました。

そして、見っけものだったのが主人公ベンのアシスタント、
セイコ役のマヤ・ヘイゼン。彼女めっちゃ可愛い。
エビちゃんや萌さんと同じモデル事務所のパールに所属していて、
主にアメリカのテレビドラマとか日本のCMで活躍してます。

ゆかいなおっちゃんの映画日記-マヤゆかいなおっちゃんの映画日記-マヤ


パール プロフィールページより

彼女には日米どちらの作品でも活躍していただきたいですね。

『シャッター』はマヤ・ヘイゼンを見れただけでも良かったかな。


シャッター