可愛げに咲いて蔓延る烏野豌豆
( かわいげに さいて はびこる からすのえんどう )


昨日は、野に咲く異様な名前の花「地獄の釜の蓋」を取り上げたが、実のところ他にも沢山の野草が花を咲かせている。今日取り上げる「烏野豌豆(からすのえんどう)」もその一つで、マメ科の「豌豆(えんどう)」に似た、小さな紅紫色の花を咲かせている。



その形と色合いが何とも可愛いのだが、道端、川辺、野原、公園、空地などところ構わず繁殖するので、いささかうざったい感じもする。本日の掲句は、そんな様子を見ながら詠んだ句である。



蔓延る(はびこる)には、「茂って広がる。いっぱいに広がる。転じて、勢いが強くなって幅をきかす。横行する。」などの意味がある。「烏野豌豆」は歴とした春の季語。



余談だが、「うざい」は「うざったい」の省略形で、「不快だ」「鬱陶しい」という意味の八王子を中心とする東京多摩地区の方言だそうだ。それが、昭和40年代後半から東京の若者言葉になり、その後全国に広がったとのこと。(東京出身でないので、最初聞いた時は意味が分からなかった。)



ところで、「烏野豌豆」の名前については、「烏の」+「豌豆(えんどう)」と覚えている人が多いのではないだろうか。しかし、正しくは「烏」+「野豌豆(のえんどう)」。「野豌豆」は中国名からきており、種子が黒いことから「烏」が冠せられたと言われている。(異説あり)

*烏野豌豆の果実


因みに、「烏野豌豆」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 沿道の烏野豌豆から雀
② どこ行けど烏と烏野豌豆 
③ 我ままに蔓延る烏野豌豆




①の句意は、「沿道の烏野豌豆が咲いている草むらから、雀がとび出てきた」というものだが、もっぱら語呂合わせを考えて詠んだ句。
②は、烏(鴉)はどこにでもいる鳥だが、烏野豌豆もどこに行っても咲いていると詠んだたわいもない句。
③は、京都苑内の原っぱの一角で我が物顔に群生しているのを見て詠んだ句。掲句とは上五が違うだけ。



「烏野豌豆」は、マメ科ソラマメ属の越年草。原産地はオリエントから地中海。日本では、古代の麦作農耕の開始期に、豌豆などと同様に栽培されていた。

花期は3月~6月。エンドウに似た小型の紅紫色の蝶形花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。



 

植物学では「ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)」が標準的な和名。矢筈とは、弓矢の矢の一番根元を弦にはさむ所で、葉っぱの先が凹んでいるところから名が付いたとのこと。

ついでに言えば、近縁種に「雀野豌豆(すずめのえんどう)」がある。これは、「烏野豌豆」よりも小さいということで、その名がつけられた。


*雀野豌豆

 

「烏野豌豆」の詠んだ句は、ネットで検索してもほとんど見つからなかったので参考句は割愛する。