小さきを競う野ぢしゃや胡瓜草
( ちいさきを きそうのぢしゃや きゅうりぐさ )


春の野や川辺には、昨日取り上げた「烏野豌豆(からすのえんどう)」よりもずっと小さな花を咲かせる野草が、たくさん自生している。

中には、花の色も形もすっきしたものもあり、もう少し大きかったら人からも愛でられたのにと思う野草もある。


*胡瓜草

 

今日は、その内の二つの野草を取り上げたい。その一つは「野ぢしゃ」、そしてもう一つは「胡瓜草(きゅうりぐさ)」。
*「野ぢしゃ」の「ぢしゃ」は漢字で「萵苣」と書くが、見慣れない文字なので、以下ではひらがなで表記する。

*野ぢしゃ

 

本日の掲句は、その二つが小ささを競っているようだと詠んだもの。植物界において、小さいことにどんなメリットがあるか分からないが、少なくとも今生き残っているということは、生存戦略としては正しかったのだろう。

尚、「胡瓜草」も「野ぢしゃ」も季語ではないが、今の時期に咲くので春もしくは夏の季語に準じるものとして詠んだ。


*胡瓜草

 

以下では、それぞれについてもう少し詳しくみていきたい。


【野萵苣(のぢしゃ)】
「野ぢしゃ」は、スイカズラ科ノヂシャ属の1年草〜2年草。原産地は欧州。日本には明治期導入されたが、国内ではあまり栽培されず、各地で野生化した。


*野ぢしゃ

 

草丈は10~50cm。茎が何度も二股に分れて細く伸びるのが特徴。分岐のすぐ下に長さ1cm~5cmの葉が対生する。

花期は4月~6月。花は径1.5mm程度の筒型で花冠は5裂。花色は淡青色もしくは白色で、 10~20花がかたまって咲く。


*野ぢしゃ

 

「萵苣(ぢしゃ)」とは「レタス」のことで、「野萵苣」は「野に生えるレタス」という意味。欧米では若葉を食用(サラダなど)としている。英語で、子羊が好むことからラムズレタス (lamb's lettuce)、また野生でもよく生えることからコーンサラダ (corn salad) ともよばれている。

*野ぢしゃ

 

======================================
 

【胡瓜草(きゅりぐさ)】
「胡瓜草」は、ムラサキ科キュウリグサ属の越年草。原産地は日本、中国など。ムギ類と一緒に入ってきた史前帰化植物と考えられている。草丈は20cm内外。


*胡瓜草

 

花期は3月~5月。花色は青ないしは紫の五弁花。写真でアップにすると「勿忘草(わすれなぐさ)」に似ているが、花の大きさは2mmほどとかなり小さい。

*勿忘草

 

名前は、茎や葉を揉むと胡瓜に似た匂いがすることから付けられたとのこと。花の方は全く似てない。別名に「胡瓜菜(きゅうりな)」がある。

*胡瓜草