■ 家居して卯の花腐しに紛れけり 
                                              ( いえいして うのはなくたしに まぎれけり )
 
 
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「卯の花」という花の名は、唱歌「夏は来ぬ」の冒頭、「卯の花の匂う垣根に~」にも出てくるので大概の人は知っていると思う。

しかし、その花がどんな花なのか知らない人も多いのではないだろうか。というのも、最近その花の垣根がほとんど見られなくなったからである。

調べてみると、卯の花の垣根を詠んだ和歌は万葉集などにも掲載されており、古くから存在したようだが、近年ブロック塀などの普及により、ほとんどなくなってきているようだ。

ところで、この「卯の花」という名は卯月(陰暦四月)に咲くことからつけられたが、植物分類上では「空木(うつぎ)」と言われている。

最近は、その空木の仲間で樹高が低く、花のサイズが小さい「姫空木(ひめうつぎ)」をよく見かけるようになった。

写真に掲載したものは、近辺の疏水べりに植えられた姫空木だが、密集した花が涼し気であり、グランドカバーなどにもよく利用される。
 
 
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前書きが長くなったが、本日の掲句は、その姫空木に関する句を考えていた時に詠んだ句である。

ここ数日雨が続いていたが、インターネットを閲覧している時に、たまたま「卯の花腐し(うのはなくたし)」という言葉に出会った。*「うのはなくだし」ともいう。
 
 
 
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意味は、「卯の花が咲くころに、その花を腐らせるほど降り続く長雨」。ここ数日の雨が、これに当たるのかどうか定かではないが、時期的にはあっているので掲句のように詠んでみた。「卯の花腐し」は夏の季語。
 
 
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尚、今回詠んだ句は、「姫空木」と直接的に関連する句ではないが、過去には同じ場面を見て以下の句を詠んでいる。

    川べりは泡だつように姫空木
 
 
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姫空木は、ユキノシタ科ウツギ属の低木落葉樹で日本原産。山地や岩の上に生えるが、花は空木よりも小さいので、「姫」がついてこの名になった。花期は5月~6月。
 
 
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「卯の花腐し」を詠んだ句は少ないが、以下には、ネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。
 
    【卯の花腐しの参考句】
     不器量の猫を愛して卯の花腐し   (長谷川かな女)
     再会や卯の花腐し暗けれど     (山田弘子)
     卯の花腐し白帆ちらばる三河湾  (伊藤敬子)
     くさいろの卯の花腐し魚の影    (中田剛)
      ほとほとの卯の花腐し海の寺    (田中裕明)
 
 
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