五月雨に散り乱れたる皐月かな
( さみだれに ちりみだれたる さつきかな )
昨日は明方から雨が降っていて、満開だった近所の皐月(さつき)の花もかなり散っていた。いよいよ梅雨入りかなと思っていたら、気象庁が近畿地方の梅雨入りを宣言したことを後で知った。
本日の掲句は、それに合わせて急遽詠んだ句である。周知の通り、五月雨(さみだれ)は、旧暦五月頃に降る長雨で、梅雨のことを指す。本句では、それを皐月=五月にかけて詠んだ。「五月雨」「皐月」はともに夏の季語で本句は季重なり。
尚、今年の旧暦五月は6月16日から。従って暦よりは、投稿時期が少し早いようだがご容赦いただきたい。

因みに、皐月に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
赤々と燃ゆる皐月の晴れ晴れし
梅雨時の久しぶりに晴れ間が出たある朝、赤々と燃えるように咲いている皐月(さつき)を見て詠んだ。

皐月(さつき)は、ツツジ科ツツジ属の一種で、正式には皐月躑躅(さつきつつじ)という。
江戸中期にツツジのブームがあり、数多くの園芸品種が作出されたが、これらをおおまかに区別するために、4月から5月中旬に開花するものを「つつじ」、5月下旬から6月上旬に開花するものを「さつき」と呼ぶようになったそうだ。(ただし、夏咲くつつじもあれば、春咲くさつきもあるとのこと。)
通常、山奥の岩肌などに自生するが、最近は街路樹や公園樹、庭木としてよく植えられている。また、盆栽などでも広く親しまれ、品種改良により様々な花色のものが見られる。愛好家も多数おり、毎年各地で「さつき展」が開催されている。

皐月は、旧暦の五月のことについても言い、俳句では、誤解を避けるために花は「さつき」とかなで書くか、漢字で「杜鵑花」と書くことが多いようだ。これは、杜鵑(ほととぎす)が鳴く頃に咲くからだそうだが、何となく違和感を感じる。また、別花に「杜鵑草(ほととぎす)」もあり紛らわしい。
「皐月」で詠んだ句もないことはないが、花を詠んだものか月を詠んだものか分からないこともあり、参考句は「さつき」もしくは「杜鵑花」で詠まれたものに限りいくつか掲載した。
【さつき、杜鵑花の参考句】
満開のさつき水面に照るごとし (杉田久女)
襖とり杜鵑花あかりに圧されけり (阿波野青畝)
再会す杜鵑花の紅のいよよ濃く (鍵和田釉子)
さつき咲きわれうとまれて居るごとし (平田有菜居)
さつき散る咲きたるままの明るさに (金谷ヒロ子)
*京都府立植物園「さつき展」より


