荒川祐二で～す
スサノオで～す
小春「（ご主人様にスリスリ…）」
影狼「……」
今日も今日とて、
海沿いの道を運転、運転。
ス「それにしても、何とかならんもんかね」
あ「何がっすか」
ス「何で沼島（淡路島）から、
黄泉平坂（島根）に行って、
んで、また淡路島やねん」
あ「そんなん僕に言われても（笑）
古事記ゆかりのルートがそうなってるんだから、
仕方ないじゃないっすか」
ス「ちょっとはごまかせ」
あ「神がそういうこと言わない（笑）
まぁ大阪に実家があるから、
淡路島は近いからまだ良いですよ（笑）」
そんなこんなの会話を繰り広げながら、
僕らが着いたのは、
淡路島北部に位置する、
淡路国一宮、『伊弉諾神宮』。
あ「ここのご祭神は…、
もちろんイザナギさんですね…。
アマテラスさん、月読さん、あなたを産んだ後に、
隠居して鎮まったといわれている地…」
ス「そうやな」
昨日のイザナミさんとの会話があったからか、
スサノオはどこか答えることも素っ気なく、
それともこの場所に来ることに何かあるのか、
少し考え込んでいるような顔をしていた。
あ「それにしても、
ここも凄い神秘的な場所らしいですね。
全国有数の神社とも言われている、
諏訪大社、出雲大社、伊勢神宮、
長崎の海神神社、熊野那智大社、高千穂神社を線で結ぶと、
その中心がこの伊弉諾神宮なんですってね」
ス「そうらしいな…」
あ「…どうしたんですか…？」
ス「いや、別に」
あ「……」
少し気にはなりながらも、
鳥居を潜り、
美しい参道を歩いて、
広い境内の中心にそびえる、
本殿の前に向かう。
ペコリ、ペコリ、パンパン、ペコリ
（二礼二拍手一礼）
参拝を済ませた、
その時だった。
？「スサノオ…か…？」
本殿の奥からゆっくり姿を見せた、
一柱の男神。
※イメージイラスト by AYUMI
『イザナギ』だった…。
ス「親父…」
僕が見る、
初めての親子の対面。
確か古事記では、
黄泉の国から帰ったイザナギが、
その穢れを『禊』で祓ったその時に、
アマテラス、月読、スサノオ（三貴神）が生まれた。
三貴神それぞれに、
高天原、夜の世界、大海原を収めるという役割を与えたが、
スサノオだけは『お母さんに会いたい』と泣き叫び続け、その役目を放棄。
それに激怒したイザナギが、
スサノオに『出て行け』と叱責。
そして、自身もこの地（伊弉諾神宮）に隠居した。
だからこその、
このスサノオの複雑な態度なのだろうか。
スサノオとイザナギ。
向かい合った二神が、
言葉を交わす。
イザナギ「久しぶり…だな…」
ス「あぁ…」
…。
……。
………。
…………。
その二言だけで、会話は止まり…。
沈黙の時間が流れる。
ス「……悪い。
俺、ちょっと離れるわ」
あ「えっ！？ちょっ！！」
結局スサノオは、
振り向きもせずに、どこかに行ってしまった。
初対面のイザナギと残された僕。
イザナギ「お名前は…？」
あ「あ！荒川祐二と…申します…。
今、日本の神さまの話を書かせてもらっていて…」
イザナギ「そうですか…。
せっかくですし、少しお話ししましょうか」
あ「あっ…、はい…ぜひっ…」
そして僕らは場所を移し、
小河が流れる木陰に場所を移した。
少し大きめの石に腰掛けると、
イザナギが言う。
イザナギ「先程は、親子のことで変な所を見せてすみません」
あ「い、いえっ…！！そんなっ…」
イザナギ「………」
あ「………」
結局またスサノオの時と同じように、
沈黙の時間が続きそうになった。
それにしても、
イザナギから感じる、この少しの影は何だろうか…？
その原因が読み取れない。
あ「あの…少し聞いてもいいですか…？」
イザナギ「…何でしょう…？」
あ「仲…良くないんですか…？
あの……何て言うか…、スサノオさんと…。
大海原の統治を放棄したことを、まだ怒ってるとか…」
イザナギ「………」
あ「あっ！いや、変なことを聞いてしまってすみません…。
答えて頂かなくても大丈夫…です…」
イザナギ「イザナミには…もう会われましたか…？」
あ「あっ…はいっ…。
昨日黄泉平坂でスサノオさんと……」
イザナギ「……そうですか……。
いえ…決して私たちの関係は、
大海原の統治云々で、
私が怒っているという話ではございません…。
むしろ私が彼を叱責したその時に、
彼が私に返した言葉…がその理由なのです…」
あ「その…言葉って…？」
イザナギ「………」
あ「もし…言いにくければ…大丈夫…です…」
イザナギ「時期が来れば…、
きっとあなたも…スサノオの本当の姿が分かるでしょう。
その時に彼から聞いてもらえれば、
それが良いと思います」
あ「…そうですか…。
…分かりました…」
『スサノオの本当の姿』…。
かつて月読さんとお会いした時にも言われた、
『スサノオの本当の姿、本当の存在の意味』、
その言葉が甦る。
イザナギ「私はずっと自分が正しいと思っていました…。
スサノオを叱責するその時まで、
ただの一度も、自分自身を疑ったことがなかった…。
その過ちに、
私自身の『穢れ』に、
気付かせてくれたのは、
彼…スサノオだった」
あ「………」
イザナギ「取り返しのつかない無限の後悔とは、
辛く、苦しいものです。
私は、それをかつて愛した妻にしてしまった。
どうか皆さま一人一人それぞれに、
傷つけられた者の苦しみも、
傷付けた者の後悔も、
無きことを私はいつも祈っております。
自戒の意味も込めて…ですが」
あ「………」
イザナギから感じる影の正体。
それは妻イザナミに対して、
自分自身がしてしまったことに対する行いへの、
今も終わることのない、
無限の後悔なのだろうか。
そして、
それをイザナギに気付かせることになったという、
スサノオの言葉とは…？
その真実の姿とは…？
わからない。
わからないことが多くて、
今の僕では、まだ少し頭が混乱しそうだった。
この旅の終わりに、
僕は、その答えを知ることが出来るのだろうか。
ス「よっしゃ～！帰ろか～！！
ラーメン食うて帰るで～！ラーメンや～！！」
戻ってきて、
車に乗り込んだスサノオは、
いつも通りの上機嫌に戻っていた。
次に、僕らはどこに行くのか。
どの神さまに出会い、
何を知ることが出来るのか。
楽しい日々も、
笑い合える日々も、
女神の悲しみの涙に触れる日々も、
伝説の神の後悔を知る日々も。
まだ見ぬ神との出会いを待つ日々も、
『日本の神々を巡る旅』は続いていく。
自由な形でどうぞガンガンやっちゃって下さいませ
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※『笑って、泣いて、神話を学ぶ』、日本の国の始まりと神々のルーツを知る史上最古の連載ファンタジー『アウトロー古事記』、第１話目はこちら☆
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