PC作業の際、手放せなくなったブルーライトカットめがね。

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 2020.7.10日の日経新聞記事から。

 

 (引用開始)

 銀行「事業会社経営」へ りそな、廃業防止へファンド

 

 

 

 

 事業の引き受け手がいない中小企業が廃業するのを防ぐため、銀行自ら受け皿ファンドを創設し始めた。金融庁が事業承継なら事業会社への出資規制を解禁したため、買収も視野に入れる。銀行がホテルや町工場、スーパー、ガソリンスタンドなど事業を経営する時代がやってくるかもしれない。

 (引用終了)

 

 銀行には、5%ルールと呼ばれる株式保有制限がありました。これは銀行に株式を支配されると中小企業のガバナンスが大きく影響を受けるためです。貸付でカネを握られ、出資で株を握られれば、中小企業の経営の独自性は失われます。

 

 しかし、融資だけで中小企業の経営改善や成長を実現していくのは限界があります。この「5%ルール」緩和はかなり以前から議論されていました。

 

 このほど金融庁が「事業承継について」5%ルールを緩和したの受けてりそな銀行が事業承継ファンドを立ち上げた、という内容の記事になります。

 

 ファンドは100億円規模。1件10-25億円、年2-3件の案件を想定しています。ファンドから資金を入れることで旧債務を返済、一時対象企業をファンドの支配下に置き、経営改善を果たしてから第三者にM&Aで譲渡、という、産業再生機構=REVIC方式での再生を目指します。

 

 事業承継に限り、5%ルール撤廃、ということですが事業承継と事業再生は境目が非常にぼやけており、資金投下してまで事業承継を行わなければならないケースはほぼ事業再生案件ではないかという印象を受けます。銀行が直接リスクマネーを供給し始めるわけです。

 

 資金を投下しても再生に失敗すればまるまる損失となります。融資だけではない、企業とのかかわり方を考えた上でのファンド立ち上げです。

 

 これは金融庁が指導する事業性評価にもかないます。ゼロ成長、ゼロインフレ、ゼロ金利下での金利収入減にも対応するものです。

 

 目立たない記事ですが金融機関の新しい在り方を示すものではないでしょうか。

 

 今までもREVICと協働する形で地方銀行がファンドを立ち上げ、事業再生ファンドを設けるケースがありました。

 

 REVIC(地域経済活性化支援機構)は前身の企業再生支援機構が2009年に設立され、2013年、金融円滑化法が廃止になったのとほぼ同時にREVICに改称されています。設立直後はファンド立ち上げによる資金注入⇒事業再生を多く行いましたが最近は直接投資案件は少なくなってきている、とお聞きしています。

 

 ちなみに金融円滑化法の廃止で金融円滑化対応が宙に浮く(根拠法がなくなる)事態となるため廃止の2週間前に成立した地域経済活性化支援機構設置法の第64条に、「機構及び金融機関等は、事業者の事業の再生又は地域経済の活性化に資する事業活動を支援するに当たっては、地域における総合的な経済力の向上を通じた地域経済の活性化及び地域における金融の円滑化に資するよう、相互の連携に努めなければならない。」という条文を入れ、金融円滑化対応を温存した経緯があります。

 

 

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 事業性評価という言葉が浸透するきっかけとなったのは広島銀行の事例です。広島市内には自動車メーカーのマツダ系列の部品メーカーがひしめき、広島銀行の貸出先となっている会社が多数あります。当時存在した金融検査マニュアルをそのまま当てはめ、財務指標だけで判断すると、銀行としては債務者区分を落とすあるいは、取引打ち切りを検討しなければならない会社もでてきます。
 

 しかし財務的には傷んでいても高い技術力を持っている会社も多く、その技術力をてこに将来復活する可能性もあります。それを評価に加えるためには、という目線で評価の見直しをしたのです。広島銀行は斬新な対応を行いました。

 

 行外からエンジニアをスカウトし、貸出先の技術力の評価を行ったのです。まさに事業性評価です。この取り組みが注目を集め広島銀行の融資部長が金融庁に引き抜かれるという驚くべき人事も行われました。(「捨てられる銀行」2016、橋本卓典著)


 考えてみれば昭和の頃まで銀行はすべて事業性評価を組み込んで融資に応じてきたのです。たとえばまだ町工場だった松下電器(現パナソニック)に、当時の住友銀行が取引実績がないにもかかわらず踏み込んだ融資を行っています。昭和2年、金融恐慌の最中のことでそれまで松下電器のメインバンクだった銀行が破たんした直後のことでした。

 

 それをバネにパナソニックは大企業にステップアップし、松下幸之助氏が引退したとき「メインバンクは住友から変えるな」という申し渡しがあったそうです。よく考えてみればこの融資はパナソニックの将来性に着目して行われた融資です。財務内容だけで評価し「保証協会がつけば」などとやっている現在の融資手法なら、支店長の暴走と言われかねないものです。


 保証協会付融資ではない、自行がリスクを取る貸し方をプロパー融資といいますがその審議書を書ける人が今、現場にいないといいいます。
 

 プロパー融資の審議書は、
 

 「この会社は、今このような理由で融資が必要である。成長性・安定性がある。」

 と分析し、最後に、

 

 「融資金の返済には懸念がないので支援いたしたい」という結び方になります。


 どのような資金使途でいくら、いつ必要になるのかの資金繰り表、キャッシュフロー計算。そしてそれが将来的にきちんと返済されることについて、担当者がきちんと分析ができないとプロパー融資の審議書は書けません。その分析ができることは、すなわち事業の目利きがきく、ということでこれが「事業性評価」だと思います。


 事業性評価といっても最後の最後は、銀行としてこの会社を信頼しておカネを出す、あるいは貸したカネの返済を求めずしばらく猶予するというリスクテイクが待っています。銀行が事業性評価になかなか足を踏み入れられない気持ちは理解できますが、銀行の将来は事業性評価にかかっている、というのも事実です。


 いままで事業性評価をもとにした融資に取り組んでこなかった金融機関。貸付係事務員は銀行窓口係とともに「AIやロボットによる代替可能性が高い」とされる「将来なくなる職業」の一つにあげられています。(野村総研推計、2015年12月2日)。
 

 同じ推計の中では逆になくならない職業も列挙されていて「中小企業診断士」「エコノミスト」「経営コンサルタント」などがリストアップされました。いずれも分析力がカギとなる職種です。事業性評価などできない!と言い切るのも良いのです。しかし分析力を基礎として事業性評価を身に着けていく先に、金融機関本体もそこで働く個人にも将来が拓けると思うのですが…

 

 

 

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 事業再生に向かう動機は「おカネがしんどくなってきたから」。

 

 毎月資金不足が続く恐怖は経営者しかわからないものです。

 

 このブログの対象は、中小企業経営者、個人事業主、を想定しています。

 

 事業再生の基本は同じですのでこのブログに書いてあるものは中規模以上の会社にも応用できると思いますが、なぜ「中小企業経営者」「個人事業主」としているか、というとこれらの人たちはなかなかコンサルティングを受ける機会がないからです。

 

 私は札幌で中小企業再生を10年以上やってきました。

 

 その間、中小企業再生は大きく変わりました。新手法の紹介などはその時々に書いてきた、「帽子かぶったコンサルタント - 札幌で中小企業再生/ワイズコンサルティングのブログ」をご参照ください。

 

 このブログでは項目別にそれらを並べ替え、最新情報に入替え、どこからでも、ご自分の必要な項目を読めるようにしました。

 

 ブログを10年書いてきて、アメブロも進歩しました。タグ付け機能も増えましたので読みやすい、検索しやすいブログにしたいと思います。

 

 事業再生は基本、ひとりで黙々と取り組む仕事です。しかし、たいていの方は初めて経験すること。その経営者の不安にすこしでも手がかりを提供できれば、と思います。