TM NETWORK『DEVOTION』感想&レビュー【良作!地球から宇宙へ駆ける想像力】 | とかげ日記

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●【良作】地球から宇宙へ駆ける想像力

今まで、TM NETWORKは自分より世代が上のために触れてこなかったし、メガヒットした「Get Wild」のイメージしかなかった。しかし、この三人組ユニットが新譜を出すと知り、80年代に一世を風靡した彼らの音楽はどのような感じなのだろうと興味がわき、旧譜も聴いてみた。


👆「Get Wild」

すると、KAN「愛は勝つ」や久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」みたいに他にも良い曲があるのに名曲すぎる「Get Wild」一強状態であることが分かった。プログレ的なコンセプトアルバム(『CAROL』)をリリースするなど、音楽表現的に挑戦的な活動もしていることもうかがい知れた。

音的には、80年代のメインストリームだったTOTO、マイケル・ジャクソン、ティナ・ターナーのような、リスナーによってはチープでジャンクに感じる打ち込みの質感に満ちた音。しかし、その質感に恋したリスナーもいるはずだ。一見チープに思えるメロドラマにハマる人もいるように。

なぜ、この質感が支持されたかを考えると、打ち込みに歌謡曲みたいな個性的な匂いがあり、曲全体でも歌ものとしての温度があるからだと思う。つまり、TM NETWORKの音には実存があり、演奏者自身の魂が刻まれているのだ。少なくとも無機質に感じる音ではない。今作と同時に新譜が発売されたART-SCHOOLがむき出しのギターロックだとすると、TM NETWORKはむき出しのデジタルロックなのだ。同じく80年代に活躍した日本のロックバンド「BOØWY(ボウイ)」と同じく時代と寝た音だといえるが、TM NETWORKもボウイも志があったのである。


そして、今作『DEVOTION』を聴いてみた。良曲ぞろいで、ソングライターの小室哲哉さんの健筆ぶりに嬉しくなる。そして、過度なモダナイズを拒否してマイナーチェンジだけしたかのような打ち込みの質感は現在の耳で聴くと新鮮だ。アタック音の鋭さに志を感じる。


👆全曲試聴

曲単位では、#8「Please Heal The World」が好きだな。奥行きのある鉄壁のデジタルサウンドを背景にしてシンプルで短い歌メロ(歌詞は曲名そのまま)を連呼して歌う曲だが、そこに人智では計り知れないシャーマニックな要素を感じる。(ちなみに「Get Wild」も反復するサビのメロディにシャーマニックな志を感じる。)あと、ボーナストラックの「TIMEMACHINE」も僕好みだ。アコースティック主体なのだけど、リスナーの心をしんみりと満たしていく美メロの曲。

音も歌詞もリアルの描写というよりは概念的だ。だからこそ、曲を聴きながらTM NETWORKの世界を夢想できるし、その想像力は恋から宇宙まで駆けていく。過去には『劇場版 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌である「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」という曲を彼らはリリースしている(1988年)が、映画のスケールに見合う宇宙と星のロマンティシズムがTMにはある。

即効性の権化みたいな扱いをされることがありそうなTM NETWORKだけど、一周目よりも二周目の方が楽しめたし、二周目よりも三周目の方が楽しめた。即効性もありつつ、実は何度聴いても楽しめるスルメな深さもあるのだ。

本作のタイトルである「Devotion」は「献身」という意味だが、音楽という文化芸術へのこの3人の献身ぶりは特筆すべきだ。そして、リスナーである「あなた」へ献身的に音楽を届けようとする意思は地球を超え、惑星系まで届くような誠実さがあるだろう。

そういえば、僕が中学生の時にスピッツで音楽にハマる前、安室奈美恵の曲を録音したカセットテープばかり聴いていた記憶がある。安室奈美恵のプロデュースを含め、小室哲哉サウンドは自分のリスナー歴においてミュージックツリーの原初にあるものだ。これからも小室さんとTM NETWORKには頑張ってほしい。

Score 7.7/10.0

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