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●"ロックを生き返らせる"を生き返らせる
4人組ロックバンド"マネスキン(Maneskin)"は、僕にとって久々に現在進行形の洋楽ロックで心に刺さったアーティストです。 The 1975にハマりたくてもハマれなかった、The 1975には懐疑的な自分がハマれるロックバンドであるマネスキン。The 1975のファンが自身のことをそう思うように、僕もマネスキンの音楽が好きでいられる自分で良かった。
The 1975は曲をまだ識別できるけど、現在隆盛している他の洋楽ロックバンドは曲の識別が難しい。演歌しか興味のない方がロックはどれも同じ雑音に聞こえるような感じだ。その点、マネスキンは一つ一つの曲に様々なメイクを施すがごとく、曲ごとに個性がある。
4人のメンバー皆の出身地がイタリアというのも面白い。僕個人的な話だが、イタリア出身のバンドは他には一つも思い浮かばない…。ドイツ(スコーピオンズ、カン、クラフトワークなど)やフランス(タヒチ80など)なら思いつくけど。
あと興味深いのは、メンバーの女性ベーシスト"ヴィクトリア・デ・アンジェリス"がバイセクシャルを自称しているし、彼らのMVはユニセックスや両性具有的な要素があることだ。
彼らの活動を追っていく上でジェンダーフリュイドという言葉を初めて知った。ウェブサイトhttps://ideasforgood.jp/glossary/gender-fluid/ によると、その意味は『ジェンダーが流動的、つまり「自分は男だ/女だ」とはっきりと自身のジェンダー定義をせず、その時々によってさまざまな性別を行き来する考え方のこと』とのこと。ジェンダーフリュイドのファッションを着こなすマネスキンの4人は多様性の時代の先頭を走るバンドなのだ。
("多様性"という言葉はいろいろな所で使い古されていて、あまのじゃくな自分的にはあまり好きではないが、マネスキンというバンドが体現して身と音楽にまとう多様性はすごく刺激的だし大好きだ。)
彼らが繰り出す曲は歌ものとしてもロックサウンドとしてもとにかく良く中毒性がある。一つ一つのラインが強烈だし、一曲通しての流れも極めて自然だ。また、少ししゃがれた声の男性ボーカル(ダミアーノ・ダヴィド)の声音はキャラクター性があり、歌声だけ聴いても誰なのか識別できる。ボーカルや楽器隊のリズムへの鋭い嗅覚はレッチリやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを彷彿させる。(#6「GOSSHIP(ゴシップ)」という曲では、レイジのギタリスト"トム・モレロ"をフィーチャリングしている。)
彼らの音楽を評してポップロックと表現するサイトを見かけた。筆者だけかもしれないが、ポップロックというと爽やかなイメージがついてしまう。ポップロックというよりもロックンロールだろう。
確かにポップだが、ポップロックという言葉では表せない、人間の根源に迫るようなドラスティック(≒抜本的な、根本的な)でロー(raw、 生<ナマ>)な感覚が彼らの音楽にはある。King Gnu(キングヌー)の音楽のように肉感的でありつつ、音楽の真実を突き止めたようなロックだ。正しさを狙いすぎて薄味な表現になってしまうインディーロックの罠に陥っていないのだ。
2021年公開の彼らのMV(「I Wanna Be Your Slave」)を観て、日本のバンドでいうなら女王蜂のような妖艶さと性的表現に驚いた。洗練されたスタイリッシュさを感じさせつつも、エログロといびつさが魅力的であり、グラム的なロックの必要条件のいかがわしさがある。
マネスキンはロックを蘇生させる。Yeah Yeah Yeahs(ヤー・ヤー・ヤーズ)的な美しい猥雑さに酔いしれ、レイジやアークティック・モンキーズ的なワルぶるギターがリスナーを魅了する(#15「MAMMAMIA」という曲に顕著)。ジャズやクラシックでは表現できないロックの猥雑さが心をとらえては離さない。猥雑さやワルさはロックのアイデンティティの一つだ。
#16「SUPERMODEL」において、ニルヴァーナ「Smells Like Teen Spirit」のギターリフをオマージュする姿勢に象徴されるように。過去のロックのエッセンスを吸収して昇華する姿に、中高年は昔を回顧するだろうし、若い世代は新しさを感じるだろう。#17「The LONELIEST」という寂しげなバラードにはオアシスの代表曲のような王道の歌ものの貫禄がある。老若男女よ、邪道も王道も極めた彼らの音楽の沼へ、ずぶずぶと落ちていこう……。
アルバムの始まり#1「OWN MY MIND」からフランツ・フェルディナントを連想させる華と力のあるボーカルとギターサウンドのオンパレード。#2「GOSSIP」はドラムの金物のシャリシャリ感がワクワクを運んでくる。#6「GASOLINE」のサブベース的超低音はドキドキを連れてくる。このワクワクとドキドキはまさしくロック!
ロックの象徴的存在であるジョン・レノンを殺害した人物である「MARK CHAPMAN(マーク・チャップマン)」を曲名に冠した曲も収録されているが、このエロスあふれる疾走感は一度死んだロックを生き返らせるだろう。
ロックを生き返らせるという形容をされたバンドはこれまでいくつも聴いてきたが、実際に聴いてみてガッカリすることも多かった。その"ロックを生き返らせる"という言葉を生き返らせるポテンシャルが彼らの音楽にはあると思う。
Score 9.0/10.0
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