樋口真嗣監督映画『シン・ウルトラマン』ネタバレなし感想&レビュー【一点だけ不満】 | とかげ日記

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●一点だけ不満

感想を一言で言えば、「面白かった」。二言で言えば、「面白かったけど、少し不満」となるだろう。

本作『シン・ウルトラマン』に企画・脚本などで携わった庵野秀明さんが監督した『シン・ゴジラ』(2016年発表)。『シン・ウルトラマン』に対する僕の感想は、『シン・ゴジラ』への僕の感想の延長線上にある。以前に書いた『シン・ゴジラ』への感想を以下に転載する。

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(以下、『シン・ゴジラ』への感想)
「遅ればせながら、2016年の話題作である本作を観た。現実を徹底して写実的に描く手法を用いた、政治的要素を多分に含む群像劇である。

登場人物への感情移入をさせずに現実を描くこの手法は新鮮に思えるし、お涙頂戴ものや御都合主義に走らない展開は評価できる。

ただ、死を直接的に描かなかった点は疑問だ。死んでいる人間がいるにも関わらず、死を描かないため、ゴジラに街を破壊される悲壮感が伝わってこない。現実を描いているにも関わらず、現実感がない映画だった。怪獣映画ってそういうものなのかな。

だとしても、もっと胸をえぐってくるようなセリフの一つや二つは欲しい。心に残るセリフは一つもなかった。人間ドラマが淡白であり、濃密な人間ドラマを映画に期待している僕のような人間にとっては不向きな映画だと思う。」
(以上、『シン・ゴジラ』への感想)
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本作『シン・ウルトラマン』においても政治や外交を描いているし、人の理を超越したものに対して人類の叡智を結集した専門性であらがうという構図は『シン・ゴジラ』と一致している。そして、両者共に"物語を進める単なるカードや情報の類"のように一つの命が扱われるのだが、違和感があった。

自己犠牲が本作のテーマの一つだと思うが、自らの命を賭して救うもののリアリティが無い。そのため、主人公がどうして結末のような感情に至れたのか理解できない。命の重みが描かれない映画であるから、自分の命と守るべき命の重さに関して淡白な人間ドラマしか供していないのだ。

しかし、超人(怪獣)と普通の人間のあわいに立って悩む主人公の姿はリアルだった。シン・ゴジラには無く、シン・ウルトラマンの人間ドラマで素晴らしいのはそこだろう。

また主役の斎藤工はワイルドで知性のあるイケメンだし、バディの長澤まさみは芯の強さと健全なお色気で魅せる魅力的な女性だし、有岡大貴(Hey!Say!JUMP)は難しい役どころを飄々とこなしているし、早見あかりはももクロを離れてからの活動は追っていなかったけどこんなに存在感のある役を演じられるようになったという驚きがあった。(もちろん、西島秀俊も山本耕史も良い演技をしているよ!)

役者の演技は良いし、アクションシーンのスペクタクルには本当に圧倒される(僕は不勉強で分からないのだが、特撮へのオマージュにあふれているらしい)。この二つを求めている方には間違いのなく良い映画だと思います。ヒーローの勇壮と孤独の両面を描けている米津玄師の主題歌「M八七」も素敵でした。

Score 8.0/10.0





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