●地に足のついた救いの歌
よーよーイチ推しバンド四天王の一角を占めるバンドである"夜に駆ける"。(ちなみに他の3つのバンドは"神聖かまってちゃん"、"うみのて"、"ダニーバグ"です。)
"夜に駆ける"は10年に1度の逸材バンドです。大げさではありません。聴けば分かります。そして、この新作epを聴き、さらにその思いを強くしました。
ジャンルとしてはシューゲイザーになるだろう。シューゲイザーは難しいジャンルだとして敬遠する人も多そうだが、この作品に収録されているのは魂から魂に伝わる名曲ばかりだ。そこにジャンルは関係ない。
あなたも迫真のポエトリーリーディング曲である#7「やめるときも、すこやかなるときも」をぜひ聴いてくださいね。
理屈では語れないものを聴きたくてこの曲を聴いている。素晴らしすぎて涙。
魂から魂に伝わる音楽を奇跡と呼ぶなら、この曲は一つの奇跡だ。やめるときも、すこやかなる時もリスナーに寄り添う、刹那の歌だ。"夜に駆ける"は音楽と結婚したのかもしれない。彼女たちの一番近くには音楽があり、音楽に献身する姿は聖母のように神々しく見えさえする。リピートが止まらないです…
「生きているだけで傷つける
全員が加害者のこの世界で
悲劇のヒロインになることも許されず
無理をした笑顔で 誰かが泣いていた」
この歌詞が素敵。泣いていた誰かに、この曲が届いてほしい。
「やめるときも〜」だけではなく、どの曲も素晴らしい。
#1「白昼夢」。「水のなかのよう」という歌詞のとおり、リスナーは泡ぶくのようなSEに包まれる。この泡ぶくと心臓の鼓動のようなバスドラが表現するのは、アルバムのタイトルである『生は苦しくて、美しい』というフィーリングだろう。
#2 「陽射しに照らされて」。昨年リリースされた『Total Feedback 2020』というシューゲイザー系アーティストのコンピレーションアルバムの最後を飾る曲でもある(こちらのコンピ盤では、short ver.ではありますが)。冒頭のシンセ(?)の長音がまさに陽射しのようだし、中盤から聴こえるうねるベースは暗がりの中で高揚する感情のようで魅力的だ。
#3「救えない」。夜の包容力と残酷さにも似た、繊細で懐の深い音楽が鳴っています。轟音ギターの質感が優しくて熱くて、それだけで感激してしまう。ドラムがドラマチック。
#4「ロックンロールが嘘になっても」。こういう序盤はスローテンポで後半にハイテンポになる構成は"夜に駆ける"の十八番だと思う。神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴り止まないっ」がアンセムである身としては、古びたロックンロールの欺瞞よりも、今を生きるロックンロールの魔法を信じていたい。
#5「18時」と#6「6/4」。前作の「3番線」「54秒」と同様に本作のこれらの曲は数字をタイトルにしており、それぞれの数字が意味深であり、想像をかき立てる。#5「18時」は"夜に駆ける"というバンド名の意味を豊かで雄弁に語るし、#6「6/4」はキレイで切実なインスト曲であり、次のラスト曲#7「やめるときも、すこやかなるときも」に続いていく。
メンヘラや厨二病というキャラクターとは程遠い、もっと地に足のついた救いの歌を鳴らす"夜に駆ける"。生の美しさと残酷さを真正面から捉えてストレートに鳴らすその姿勢は、他のバンドとは一線を画すのではないか。
はしもとさんと笹口騒音さんが約束している"うみのて"との対バンライブ、楽しみにしていますよー😉💥
Score 9.5/10.0
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