SHISHAMO『SHISHAMO 7』感想&レビュー●唯一無二の3ピースバンド | とかげ日記

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●唯一無二の3ピースバンド

ガールズバンド"SHISHAMO"の一年半ぶりのフルアルバム。

まだ彼女たちの音楽をじっくり聴いたことのない僕の先入観では、売れ線を狙った面白みのないポップロックバンドなのだろうと思っていた。ところが、聴いてみたらロックのルーツを感じる良い意味で無骨で野趣あふれたロックサウンドに僕は完敗した。J-POPの多数派とは違い、外向けにパッケージされていない感があり、優れたインディーロックでも見かけるような洗練されて粗野なサウンドプロダクション。3人体制だった時のチャットモンチーよりも無骨に感じる。

適度に歪んだギター(最近の音楽シーンでは減ってきたソロもある!)も、音程がワイルドに動くベースも、サステインが鋭いドラムも魅力的だ。スリーピースのロックミュージックとしての隆々とした骨格があらわになったサウンドに、等身大のラブソングや洞察が深いライフソングの歌詞を歌ったポップでキャッチーな歌メロが乗る。

生活感も切実なリアリズムもあるこのアルバムはガールズバンドならではの新しい"熱さ"の表現を提案しているのではないかと思う。#4「明日はない」の「死にたくなるような恋がしたい」という歌詞に象徴される熱量の高さが演奏にもあるのだ。

ボーカル宮崎朝子の表現力や技術も素晴らしい。声量もあるし、些細なニュアンスにも富んでいるこのボーカルは王道と正統派を極めたものだ。#10「壊したんだ」で聴こえてくるヴァイオリンの音色に負けないくらい美しい声質のボーカルに惚れる。

共感しやすく気づきのある様々なシチュエーションを描き分ける歌詞も良い。人間の内面とその裏側をえぐり出す#2「人間」から、振り切れたラブソングの#5「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」(よーよーオススメ曲)まで、曲想は幅広い。

また、歌詞だけではなく、演奏全体でシチュエーションを描き分けている。#8「ドライブ」のベース演奏にはドライブ時のワクワク感を覚えるし、#9「はなればなれ」も遠距離の恋を表現するホーンが寂しさと安心感を与えてくれる。#10「壊したんだ」は愛する人との別れの悲しみをピアノが演出する。過去に親友を失った僕に響く音楽だった。#11「夢で逢えても」では、ボーカルにエコーがかかる箇所があり、夢と現実の狭間が表現されているように感じた。

あいみょんのように、人間の陰や闇の部分も曲で表現できるのがSHISHAMOの強みだろう。そして、そんな曲想でも必要以上に湿っぽくもならないカラっとしてソリッドな演奏も魅力的だ。誰かにやらされている訳ではない、自分たちでやるDIY精神だからこそ、こういった表現もできる。

彼女たちの行く末が気になる。「明日も」「君と夏フェス」を超える訴求力を持った曲をこれからも生み出してほしい。あるいは、曲の軽快さが彼女たちの良さなのだが、重みがあってその重みゆえに気持ちいい曲もいつかは生み出してほしい。陰ながら見守っています。

Score 7.9/10.0









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【平成ベスト】
平成のベストアルバム 30位~21位(邦楽)
平成のベストアルバム 20位~11位(邦楽)
平成のベストアルバム 10位~1位(邦楽)

【2010年代ベスト】
2010年代ベストアルバム(邦楽)30位→21位
2010年代ベストアルバム(邦楽)20位→11位
2010年代ベストアルバム(邦楽)10位→1位

【年間ベスト】
2020年間ベストアルバム(邦楽・洋楽混合)
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