片頭痛は”体質の遺伝”??? | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

はじめに


 以前、ブログ「イミグラン錠副作用なしで偏頭痛を治しちゃえ」にコメントを入れさせて頂いた際に開設者の小橋雄太さんに、”多因子遺伝”に関して、「医療従事者でない僕にはよく分かりません。患者さんにもそんな専門用語を使っているのかと想像するとゾットします」とのお叱りのお言葉を頂戴したことがあります。
 先日も、記事にしましたが、片頭痛は遺伝的疾患、それも”多因子遺伝”すなわち体質の遺伝である、と専門家が述べたことに対するものでした。


       「片頭痛を引き起こす引き金」を知り、避ける???
         
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12578426919.html


 さらに、最近では、”多因子遺伝”という語句を頻繁に使っているため、改めて、説明しておく必要があるように思いました。このことは極めて重要な点だからです。


 私は、外来で片頭痛患者さんに”多因子遺伝”の説明を行う際に、常套句として用いている”例え”があります。
 まず、患者さんに尋ねることは、「兄弟姉妹の有無」です。そして、「あなた以外の兄弟姉妹の方々の全員が頭痛持ち(片頭痛でもよい)でしょうか」、ということです。
 そうお尋ねすれば、「いや、私だけです」とお答えになられれば「しめた」と思うことにしています。場合によっては、もう一人いるが、全員ではないとお答えになられる場合が多いように思っています。
 現在、片頭痛は”遺伝的疾患”とされていますが、この遺伝的疾患というのは、多くの場合、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝を指しており、こうした場合、子供さん全てに片頭痛を発症することになります。ところが、あなたの御兄弟姉妹全員が片頭痛を発症していなくて、あなただけ片頭痛を発症していることになります。
 こうしたような発症の仕方をするものを、私達は”多因子遺伝”と呼んでいます。
 これは、片頭痛を発症しやすい”遺伝的素因”をもとに、これに生まれてからの生活習慣・環境の変化が加わって初めて片頭痛を発症するものを意味しています。
 ですから、同じ家族でありながら、あなただけが片頭痛を発症したということは、片頭痛をお持ちでない他のご兄弟姉妹との”生活習慣・環境の相違がどこかにある”と考えなくてはなりません。
 この相違点をこれから、一緒に考えていきましょう、と説明することにしています。
 このような説明を行うことによって大半の患者さんは納得して頂けるように思っています。

 こうした説明を行うことによって、同時に「生活習慣・環境」の変化に注目して頂く切っ掛けにもなるものと思っております。以後の説明の”イントロ”にもなるはずです。


”多因子遺伝”とは


 多因子遺伝の概念(Frants RR,1999)は、以下のように考えられています。


1) 正常では,保護的遺伝子と有害遺伝子のバランスが保たれており疾病が発症しない.
2) 優性遺伝疾患では単一の有害遺伝子により疾患が発症する.
3-5)
多因子遺伝疾患では3 種類以上の遺伝子において異常があれば発症するが,ひとつの遺伝子異常では発症しない.二つの遺伝子異常があるときには軽症であるか,あるいは無症状である.環境要因がこの表現型を修飾するものと考えられています。


 片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。
 しかし、その遺伝の様式は、メンデル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。
 この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。
 ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。
 これにはミトコンドリアDNA(後述)が関与しています。


 片頭痛を生じる単一遺伝子性疾患としては、家族性片麻痺性片頭痛1型、家族性片麻痺性片頭痛2型、CADASIL、MELAS、Osler-Rendu-Weber症候群がこれまで確認されております。このようなタイプは極めて頻度的に少ないものです。例外的です。
 これに対して、大部分の片頭痛では多因子遺伝であろうと推測されています。
 その可能性のある遺伝子として、これまでセロトニン受容体及びドパミン受容体の遺伝子多型のほか,メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),アンギオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子多型などが検討されています。しかし、いまだ明確にされていません。
 現在、明確にされていないからといって、このような関連遺伝子の探索だけに研究費を無駄に浪費をしてはなりません。


片頭痛が多因子遺伝であるとの根拠として・・


 ”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。
 すなわち、一卵性双生児で、”遺伝的素因が全く同一である”はずのものが、必ずしも2人とも片頭痛を発症するわけではありません。
 これは、何を意味しているのでしょうか? その後の後天的な要素、環境因子等々が関係している証拠ではないでしょうか?
 一卵双生児の「片頭痛を発症」していない方に、もう片方の片頭痛を発症している人の「片頭痛の環境因子」を多数負荷すれば、恐らく、頭痛は誘発されるでしょう。
 ただ、このような「実験」は人道上、許されることではないため、されていないだけの話です。
 単純に言えば、一卵性双生児の子供の2人の学業成績が全く同じ成績かどうかをみれば理路整然としているはずです。2人とも優秀とは限りません・・・


 もう一つ興味ある事実があります。それは、東京女子医科大学の清水俊彦先生が「頭痛女子のトリセツ」(マガジンハウス)の中で、以下のような興味深い記述をされています。


 もともと母親が頭痛持ちだったのですが、本人は今まで全く頭痛というものを経験したことがなかったある女性がおられました。
 嫁いだ先では、旦那さんを含めて、おじいちゃん、おばあちゃん・・家族みんなひどい頭痛持ちの家系でした。ところが頭痛の経験のなかった彼女が、嫁いだ途端にひどい頭痛に悩まされるようになり、私のところへ来たのです。
 話を聞いてみると、嫁姑の争いもなく生活環境的にはストレスも全くなく、特に問題はありませんでした。もしかして「片頭痛は伝染する病気なの?」といった疑問も湧いてきます。
 が、じつはそうではありません。さらに話を聞いてみると、この嫁いだ先の食生活に問題があることがわかりました。ほぼ毎日、洋食の連続。彼女は、もともと母親と同じ片頭痛を起こすかもしれない”体質”を持っていました。そこへ、血管拡張物質を多く含んだ毎日の食事が刺激となり、ついに脳の血管が耐えきれず、片頭痛を発症してしまったというわけです。


 あなたの兄弟姉妹がすべて片頭痛を発症しているのでしょうか。もし、そうであれば極めて特殊なケースと考えるべきです。あなたの家族全体の食生活・食習慣・住環境に問題があるものと推測されます。ここを糸口に解決策を模索します。


 このことは、先日、以下の記事で明確に致しました。


      片頭痛は”多因子遺伝”、すなわち”体質の遺伝”???
       
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12580877885.html


”多因子遺伝”をする生活習慣病


 このような”多因子遺伝”をする病気としては、身近なものとして、生活習慣病であるⅡ型糖尿病があります。
 Ⅱ型糖尿病は、糖尿病になりやすい素質(遺伝素因)をもっている人に、”環境因子”として、食べ過ぎや運動不足による肥満、アルコール、精神的ストレス、年をとること、その他多種多様の要因が加わって発症します。
 こうしたことから、糖尿病の治療方針として、この環境因子の是正に努めるべく「食事療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されます。
 本態性高血圧の場合は、遺伝的体質的素因に加え、食塩摂取量、肥満、寒冷、ストレスなどの環境因子が加わり発症すると考えられています。
 このように生活習慣病すべては、”多因子遺伝”と考えられています。


 その他、”多因子”神経疾患として、特発性(真性)てんかん、孤発性パーキンソン病、多系統萎縮症、片頭痛、多発性硬化症が挙げられています。


 「片頭痛」と「てんかん」の相似性
     
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12580347834.html


 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、片頭痛の大半は、その遺伝素因である「ミトコンドリア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さらに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を形成することにより引き起こされる生活習慣病とされると述べておられます。
 さらに片頭痛の”環境因子”として「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがあります。これらの”環境因子”の関わり方は人それぞれです。


 片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、謂わば、あなたの”生き方(ざま)”すべてが関与して起きてくるものです。これらは、いずれも日常生活を送る上で、”何気なく無意識に”行ってきた「食事・姿勢・体の使い方」が原因となっていることを意味しています。このために、あたかも”遺伝的疾患”であると誤解された理由でもあります。とくに食習慣の関与が大きいのが特徴です。


これまでの研究から


 家系解析や双生児研究などの結果,一般の片頭痛は多遺伝子的疾患,すなわち高血圧や糖尿病などの疾患と同様に,複数の遺伝因子と複数の環境因子が関与している病態であることが示されています。.
 頭痛発作のトリガーになる要因としては、遺伝的因子(素因)と環境因子(誘因)があります。頭痛は複数の環境因子と遺伝因子が重なって発症します。遺伝子は、環境的トリガー、すなわち外的因子(天候の変化、運動、飲酒、光・音・臭い刺激など)や内的因子(ホルモン・睡眠習慣・心理的な変化など)に対する感受性に関与しています。分離解析の結果から、頭痛は複数の遺伝子の構成が関与して発症することが示唆されています。
 ちなみに高血圧や糖尿病などの生活習慣病も多因子疾患と考えられています。
 患者対照関連解析によって患者集団内で正常対照集団内より頻度の高いアリル(対立遺伝子)を見つけることができます。このアリルが存在する遺伝子が疾患感受性遺伝子であり、その同定により、疾患発症の機序や他の発症因子との関係の解明が期待されます。


 陣の内脳神経外科クリニックの陣内敬文先生は以下のように述べておられます。


 片頭痛を起こしやすい因子には遺伝子と環境の二つがあります。遺伝子は環境や内的な素因に対する様々の感受性に関与しており、多数の頭痛遺伝子が存在します。片頭痛の環境素因には外的なものと内的な因子の2つのタイプがあり、内的因子としてはホルモン、ストレス、睡眠習慣の変化があります。外的因子としては天候の変化、食物、飲酒、光の刺激などの関与があります。


 これまで”片頭痛の多因子遺伝”については、鳥取大学神経内科の古和久典先生がまず最初に提唱され、東京女子医科大学脳神経センター・神経内科の橋本しおり、岩田誠先生(日本内科学会雑誌 第90巻 第4号・平成13年4月10日)らが、”片頭痛の多因子遺伝”を支持されておられるようです。


 以下は、片頭痛が”多因子遺伝”であるかどうかについての含蓄ある考えのように思います。


”体質”という用語はしばしば”遺伝”と混同されています


 「私の太りすぎは肥満体質のせいですから、食事を減らしても仕方ありません」とか、「家はみんな高血圧の体質なんです」とよく聞かされます。
 この場合、多くのヒトは、体質=遺伝とみなしているようです。
 しかし“体質”とは、遺伝と、そのヒトが生まれてから曝されてきた環境因子((紫外線、感染、細菌、ウイルス)、いろいろの化学物質など)や生活習慣とが相互に影響を及ぼし合ってできあがった状態を意味しています。
 私たちの体を特徴づけている最も小さな単位は、人類の誕生以来先祖代々受け継いできた遺伝子ということができます。この遺伝子には生まれつきの異常もあれば、生後に起こる異常もあります。たった一つの遺伝子異常によって起こりうる病気(単因子遺伝性疾患,単一遺伝子病)は、アデノシン・デアミナーゼ欠損症をはじめ、筋ジストロフィー、ハンチントン病、ウエルナー病、嚢胞線維症などが知られています。
 一方、本態性高血圧症とか肥満、糖尿病、動脈硬化など、ありふれた病気(コモン・デイジーズ)の原因には、いくつか複数の遺伝子が関わりをもち(多因子遺伝性疾患,多因子病)、そこにいくつかの環境因子が影響を及ぼし発症してくると考えられています。

 がんを例に取り上げますと、確かにがんになりやすい家系は存在しますが、がんは完全に“親から子に遺伝する遺伝病”とはいえません。生まれてから環境の影響によって生じた遺伝子の突然変異ががんを起こしやすくする可能性もあります。
 糖尿病や高血圧症の中には、遺伝子の異常が突きとめられているいくつかのタイプがあることは事実ですが、それらはごく限られた稀な疾患です。大部分の患者さんはなんらかの遺伝要因を親からもらっているとはいえ、飽食、運動不足→肥満、あるいは塩分のとりすぎ、ストレス→高血圧症という、生活習慣が大きな関わりをもっている方が重要な意味をもっています。
 第3の留意点は、できるだけ規則的な食事時間を守ることです。肥満のヒトがしばしば陥る過失は、朝食抜き,昼食抜きか軽食,そして欠食を代償するかのように夜遅い時間に“ドカ食い”をする食習慣です。このような食事の摂り方は多くの勤務者にみられます。 夕遅く空腹状態で一擧に大量の食物を摂りいれると、膵のβ細胞からインスリンが多く分泌されて、摂り入れたエネルギーを効率よく体に脂肪として沈着させ、肥満症に傾かせるのです。
 一気の大食漢“gorger”より、少しずつ3回に食べる小食かじり“nibblerの方が健康を保つためにはよいと言われています。


 親からのメンデル型の遺伝と思われている”体質”の多くは、自分自身の生活習慣、とくに食習慣の中にひそむさまざまな要因に起因しているのです。
 それにもかかわらず、多くの生活習慣病や慢性疾患に対して生まれながらの”体質”ゆえんとあきらめている人たちが多いのではないでしょうか。


それでは、どのように考えるべきなのでしょうか?


 これまで、片頭痛は”遺伝的疾患”とされ、一生お付き合いしなくてはならない頭痛と頭痛専門医の先生方は申されます。
 ところが、富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、反復性の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
 Lyngbergらの報告では、成人片頭痛患者さんを12年間追跡し、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。


 このような事実をどのように考えるかが、ポイントになります。3割の方々が治っているということです。そして、4割の方々が、発作を繰り返しているということです。


 ここに、片頭痛が”多因子遺伝”であるかどうかの鍵があると考えるべきです。


 トリプタン製剤が導入される以前から、生活指導として、「規則正しい生活を行って、食事をバランスよく摂り、睡眠を十分にとり、リラックスするように」とされ、これで完璧に片頭痛発作が抑制されていたことを思い出すべきです。
 さらに、神経内科関係の専門医は、「片頭痛のセルフケアー自己管理」を完璧に行う限り、”9割”の方々はうまくコントロールされると豪語されていることも忘れてはなりません。
 こうした2つの事実は、取りも直さず、片頭痛の大半は”多因子遺伝”であることを如実に示しているはずです。
 現実に、専門家による指導でなく、患者さん自ら自分で工夫され片頭痛を克服されているという事実がこれを証明しているはずです。このような自分の体験をもとにして、多くの方々が「片頭痛改善マニュアル」を作成され、これらを実践された方々の喜びの声がネット上では多数掲載されています。
 そして、「ゲルソンの食事療法」が存在します。
 これらは、先日も述べたばかりです。


 そして、日本頭痛学会の理事長の坂井文彦先生は、自分で工夫して治す頭痛と言われ、さらに神経内科関係の専門医の方々は「セルフケア」の重要性を指摘され、この「セルフケア」を完璧に行いさえすれば、9割の方々は改善に導かれるとされています。


 こうしたことは、まさに片頭痛が”多因子遺伝”であることを示唆するものです。


”多因子遺伝”はなぜ容認されないのか??


 単純に言えば、専門家は、日本の業績よりも欧米の論文を無条件で評価する考え方から、結局、このような”多因子遺伝”は容認されることはありません。 
 片頭痛が”多因子遺伝”である、との考え方は、鳥取大学神経内科の古和久典先生らの研究業績であることから、上記の理由と、「慢性頭痛診療のガイドライン」を作成された先生が慶応系中心であったため、鳥取大学神経内科という、受験の際の”第二期校”とされていた先生方に対して、”横綱と褌担ぎ”との関係とでも思われたのでしょうか? このような大学間のランク付けは暗黙のうちに構築されており、エビデンスとか、こうした理論が理解できなかったという理由抜きで、問答無用に排除された可能性も否定できないと考えるべきです。医局講座制そのもののエゴイズムでしかありません。


 こうした理由はどこからくるのでしょうか?


 先日も述べましたように、専門家が金科玉条のものとされるのが「国際頭痛分類第3版 β版」です。この「国際頭痛分類第3版 β版」は元を正せば、欧米のトリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。
 トリプタン製薬メーカーの真の目的とすることは、製薬市場拡大の基盤として片頭痛を存続させ続けることです。片頭痛を存続させるためには、片頭痛は片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく思い込ませることが必要になってきます。
 こういったことから、片頭痛は”多因子遺伝”では、あってはならないことになっています。(”多因子遺伝”とすれば、片頭痛は生活習慣病そのものとなり、予防可能となってしまいます)

 こういったことが、何時までも、片頭痛が”多因子遺伝”かどうかの検討を行わない理由と単純に考えた方が理解しやすいものと思われます。


 これまでの専門家は頭痛研究をトリプタン製薬メーカーと二人三脚で、お互い手を携えて行ってきた経緯を考えるなら、そう簡単には専門家自身がトリプタン製薬メーカーとの縁を絶ちきって研究ができる状況にないことを考えればまず困難と思われ、実際、片頭痛が”多因子遺伝”であるとの考え方は、2000年以前であり、2000年に片頭痛治療の世界にトリプタン製剤が導入されて以来、このように考える研究者が少ないことから、いまだに、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えています。
 「片頭痛は単一遺伝子によるものか、あるいは”多因子遺伝”か」の論争は、トリプタン製薬メーカーが絡んでいることでもあり、現在の専門家は”無関心”を装わざるを得ないと考えるべきのようです。現実に、全く無関心・我関せずです。これが専門家の姿です。
 客寄せパンダとしての”頭痛専門医”の称号さえ手にいれれば、それでよしとされます。
 どなたも、良識ある考え方をなさらないのが専門家のようです。
 こうしたことから、”ラジカルな専門家”の出現を待つしかないようです。


 治せるものなのか、治らないものなのかの判断が、専門家でなく、患者自身に委ねられていることそのものが、真っ先に問われるべきものと考えております。
 本来であれば、学会が率先して行うべきものであるはずです。これが期待できないということは、私達はどうすればよいのでしょうか???
 治る可能性のある疾患かもしれないものに対して、ただ単に「痛み止め」を処方し、看過することは、専門家でなくとも「医師」としての責務が問われていると考えるべきです。


 ただ、最近になって、学会の”偉い先生方”も片頭痛が”多因子遺伝”とされるようになったことは注目すべきことですが・・・


今後、行うべきことは・・


 こうしたことから、まず、行うべきことは、片頭痛が”多因子遺伝”であると仮定して、これまで、鳥取大学神経内科の時代に提唱された下村登規夫先生のMBT療法の考え方および分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の考え方を参考にすべきです。
 この上で、神経内科関係の専門医が示される、「片頭痛のセルフケアー自己管理」の具体的な指導内容に、片頭痛の”環境因子”が明確に示されています。
 これに、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛である、という基本概念をもとに理論的に構築してみることです。
(現在では”ミトコンドリア説”といった認識しかないのが実情です。)
 こうする過程で、何が欠落しているかが明らかになるはずです。
 しかし、これを抜きにしても、これまで「セルフケア」を完璧に行いさえすれば、9割の方々は改善に導かれると主張されて来られたわけです。そして、作成されたもので、実際の患者さんで治験されれば済むことです。これまで9割の方々は改善に導かれると主張されて来られたわけですから・・・。


 どこの医療の世界に、有効率9割の治療法が存在するというのでしょうか?
 ここに真実があるはずです。なぜ、このような単純なことをなさらないのでしょうか?


 それとも、片頭痛は治ってもらっては困るとでも申されるのでしょうか???


 先日も、申し上げました。片頭痛を”多因子遺伝”とすれば、エビデンスの確立は極めて困難となります。


   ”エビデンス”とは何なのでしょうか? 
     
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12055010262.html

 

 しかし、学会を主導される方々は、何がなんでもエビデンス確立を最優先されます。
 エビデンスなき、頭痛学はあり得ないとされることから、エビデンス確立ができそうもない「片頭痛を”多因子遺伝”」は初めから論外ということになります。


 こういったことから、「片頭痛のセルフケア」を完璧に行いましょう、といってお茶を濁すしかできないようです。
 このように、EBM,EBMといってエビデンスを最優先されます。


 果たして、これでよいのでしょうか????


片頭痛は「後天性ミトコンドリア病」です 


 こうしたことを期待することも大切ですが、”多因子遺伝”を考えるには、まず「片頭痛とは何か」という原点に立ち返る必要があります。


「ミトコンドリア病」とは?・・片頭痛の”疾患モデル”

 
 ミトコンドリアは全身のひとつひとつの細胞の中にあってエネルギーを産生する働きを持っています。そのミトコンドリアの働きが低下すると、細胞の活動が低下します。
 例えば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。
 ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称して「ミトコンドリア病」と呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変化を持っている方が発症しますが、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働きが低下して起きる「後天性ミトコンドリア病」もあります。


この病気の原因は?


 ミトコンドリアの働きを低下させる原因として、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合があります。大部分は遺伝子の変化で起きるであろうと考えられていますが、ミトコンドリアの働きに関わるタンパク質は優に1000を超えると推定されており、それらの設計図である遺伝子の変化がすべてミトコンドリア病の原因となる可能性があります。すでに200種類程度の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することが分かっています。
 さらに、これら遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNAです)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリアDNAといいます)に乗っている遺伝子があります。新しいミトコンドリア病の原因が核DNA上の遺伝子から次々と明らかにされています。また核DNAに比べると短いミトコンドリアDNA上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者さんで見つかっています。
 ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中に存在していますが、実は1個のミトコンドリアの中に5~10個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1細胞でみるとミトコンドリアDNAは数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNAのほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。
 ミトコンドリアDNAの変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNAの割合が高いことが知られているのです。


ミトコンドリアDNAは傷つきやすい


 細胞は増える時に、自らの遺伝子をコピーします。このコピーですが、時々間違ってコピーされることがあります。この間違いを塩基置換といいます。 
 また、コピー時だけでなく、何らかの刺激などで、DNAの配列が変わってしまう塩基置換もあります。塩基置換は致命的なときもありますが、なにも影響がなかったり、少し影響したりする場合があります。
 塩基置換は生物が環境に適応するのに、とても大切なことです。もし遺伝子が完璧にコピーばかりされていたら、環境が変化した時、その生物はそれに適応できずに絶滅してしまいます。


 ミトコンドリアは酸素を使ってATPを産生します。この際、体内に取り込まれた酸素の数%反応性の高い活性酸素やフリーラジカルになります。すなわち、ミトコンドリアは生体内における主要な活性酸素の産生部位でもあります。
 正常な状態でも活性酸素は産生されていますが、電子伝達系や呼吸酵素系の活性が低下すると、電子伝達系から電子がもれて活性酸素が生じやすくなります。
 ミトコンドリアは活性酸素を多く産生するため、ミトコンドリアDNAに突然変異が起こりやすい環境を作り出しています。しかも、ミトコンドリアDNAは核DNAと比べて修復能力が低いため、ミトコンドリアDNAで突然変異が起こる割合は核DNAの約10倍と考えられています。


  このように、ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
  このようにして先述のように、傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。このようにして片頭痛は発症します。


母から娘へと片頭痛が遺伝する理由はミトコンドリアDNAにあった!?


 母と娘の間で片頭痛が遺伝しやすいのは、ミトコンドリアに関係があります。遺伝にDNAが関係することは誰もが知っていることですが、細胞内のDNAとは別に、ミトコンドリアは独自のDNAを持っており、それが片頭痛の遺伝に関係しているのです。
 ヒトの精子には16 個程度のミトコンドリアが存在します。一方の卵子は10 万個といわれています。そして、精子に含まれるミトコンドリアは受精後にすべて死滅してしまいます。父性よりも母性のほうが強いというわけです。
 ということは、ミトコンドリアのDNAに関していえば、卵子に含まれるものだけが子どもへと受け継がれる。つまり100%の母性遺伝です。もし母親のミトコンドリアの代謝活性(元気さ)が低ければその影響を当然受けやすくなります。
 さらに、男性に比べて女性のほうが脳内セロトニンの合成量がもともと少ないわけですから、片頭痛の症状が発生しやすいのです。母から娘へと片頭痛が遺伝してしまうのには、こういう理由があつたのです。
 このように、私達の体を構成する細胞のDNAは両親の遺伝子を受け継ぐのですが、その細胞内に存在するミトコンドリアのDNAは母親の遺伝子だけが引き継がれていくことになります(100%の母性遺伝)。
 そのため、母親のミトコンドリアの数が少なく活性が低くければ、その子にはその性質が引き継がれ易くなります。また、男性に比べ女性の脳内セロトニン合成能力はもともと少ないことなどの理由から、母娘や姉妹に片頭痛持ちであることが多くなります。男性のミトコンドリア活性がその子に引き継がれていくことはありません。
 ミトコンドリアの活性が低くなると、細胞が活動するために必要なエネルギー発生量も少なくなります。その結果、器官や組織を構成する個々の細胞のエネルギーの不足が直接的に器官の機能低下を引き起こすことになります。


 分子化学療法研究所の後藤日出夫先生によれば、片頭痛の遺伝的因子としては、核遺伝子(DNA)のミトコンドリアへの影響も否定できませんが、ミトコンドリア活性が主と考えられます。
 ミトコンドリアの遺伝子は母親の遺伝子だけが引き継がれ、女性は男性に比べセロトニンの合成能力が低いため、母と娘の間で遺伝しやすい、これが「単一遺伝子異常」を除く、唯一の遺伝的な要因だと考えられます。
 それも、ミトコンドリアのどの部分のDNAがどうだから、どうなるといった類のものではなく、人にも背が高い人、低い人、肥えた人、痩せた人があるように、ミトコンドリアにも元気なもの、元気の無いものがいて、元気のいい母ミトコンドリアからは元気のいいミトコンドリアが生まれやすく、元気の無い母ミトコンドリアからは元気の無いミトコンドリアが生まれやすい程度のことです。ミトコンドリアは今の環境に満足してしまえば数を増やすことも元気に働くこともしない怠け者ですので、何らかの刺激で慌てさせるとその数や活性を増す生き物と考えられます。
 ということは、少々元気の無いミトコンドリアであっても鍛えればそこそこ強くなるし、殺してしまえば(アスピリンなど)どうしようもなくなってしまうということです。
 片頭痛の方はもともと活性の低いミトコンドリアを引き継いでいるわけですので、直ぐに活性を高めるということは困難だと思いますが、少なくとも殺すことを止め、元気を取り戻す刺激を与えれば、片頭痛の原因とならない程度には回復できるものと考えています。
 先述の可能性のある遺伝子としての、ドーパミン受容体、セロトニン受容体の遺伝子多型、メチレンテトラヒドロ葉酸酵素、アンギオテンシン変換酵素遺伝子多型などについては、代謝異常であろうと思われます。
 ドーパミン受容体やセロトニン受容体についても、さまざまなホルモンのバランスで受容体の活性は異なりますし、そこに活性酸素(電磁波、化学物質などの刺激による)が加わることや、さまざまな生理活性物質の影響を受けて、受容体の活性は異なると考えています。
 当然、代謝の一種と考えると酵素、補酵素、ビタミン類、ミネラル類などの因子も考えねばなりません。
 結論として、「片頭痛は決して遺伝だけにより起きる病気ではなく、生活習慣の乱れによって惹起される病気であり、生活習慣を正すことにより治る病気である」と述べておられます。

 

 以上のように片頭痛には、遺伝的要因の極めて濃厚な方から、極めて薄く問診上「家族歴」の明確でないものまで含まれております。すなわち片頭痛における遺伝的関与の形式は、単一遺伝子性疾患のものも少数ありますが、大部分の片頭痛では多因子遺伝であろうと推測されています。
 これらを一括して、同一の「片頭痛」として扱ってよいかどうかという問題があります。

 これまでは、この2つを混同して考え、全てが曖昧な形になり、片頭痛が治らないという考え方が従来されて参りました。
 そして、このような大部分を占める多因子遺伝の場合、これに様々な「環境因子」が加わって、初めて片頭痛が発症して来ることが知られております。

 ここに、治癒の可能性のある片頭痛が存在すると考えております。
 従来、このような、環境因子を特定することが困難であるが故に、その環境因子を特定することなく、一括して「片頭痛」として扱われてきました。そして、後藤先生は「ミトコンドリア」の観点から、片頭痛そのものの「発症機転」に関わる部分(頭痛体質)を改善させることによって、片頭痛は根治可能とされます。
 いずれにしても、片頭痛は遺伝病ではなく、あくまでも「環境因子」が加わって発症してくることは、ほぼ間違いないようです。


 竹島多賀夫先生によれば、片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされています。
 成人片頭痛患者さんを12 年間追跡したLyngbergらの報告では、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。


 こうした報告が、片頭痛の大半が”多因子遺伝”であることを裏付けています。


 最近、専門家は以下のように申されるようになっています。


 片頭痛は遺伝的な病気の1つですが、多因子遺伝、すなわち体質の遺伝です。
 受け継いだ遺伝子だけでは発症しない、生活習慣、環境の変化などが引き金となって片頭痛が引き起こされています・・
 同じ多因子遺伝である高血圧症や糖尿病と同様に、生活習慣の管理が重要になるのです。 片頭痛も発症を予防し、痛みが起こらなければ治ったことになります。
 片頭痛予防の第一歩は、何が自分の片頭痛の引き金になっているかを知ることです。
 生活習慣で言えば、睡眠不足、あるいは不規則な睡眠時間、食事、ストレスなどが誘因です。さらに、ホルモンバランス、環境因子である天候(気圧、温度、湿度)、光、音などが密接に関係するのです。
 こういったことから、自分の片頭痛を引き起こす誘因を知り、こういった誘因を極力避けることが原則とされ、このことが片頭痛の予防に繋がり、このことで「片頭痛が治った・・片頭痛から卒業できた」とされています。


 このような馬鹿げたことを申され、片頭痛をいつまでも存続させ続けようとされます。
 まさに欺瞞に満ち溢れた説明をされています。


 治る可能性のある疾患かもしれないものに対して、ただ単に「痛み止め」を処方し、看過することは、専門家でなくとも「医師」としての責務が問われていると考えるべきです。
 このようにして、治るべきものを治らなくさせることは決して許されることではありません。何時まで、弱者を金儲けの餌食にすれば気が済むのでしょうか??
 人道的に、許されることではありません。


 本年度には「慢性頭痛診療のガイドライン」の改訂が予定されています。
 最近、学会の”偉い先生方”も片頭痛が”多因子遺伝”とされるようになったことから、この部分がどのように改訂され、片頭痛をどのように予防していくべきかについて言及されるのか、ここが最も注目される点です。皆さん、ご期待を・・・