第17章 これでよいのか現代の頭痛医療
頭痛の専門家の考えていること
日本を代表する頭痛の専門家による「片頭痛からの卒業」(講談社 現代新書)の最終章では以下のように述べられています。
片頭痛は遺伝的な病気の1つですが、多因子遺伝、すなわち体質の遺伝です。受け継いだ遺伝子だけでは発症しない、生活習慣、環境の変化などが引き金となって片頭痛が引き起こされています・・
同じ多因子遺伝である高血圧症や糖尿病と同様に、生活習慣の管理が重要になるのです。 片頭痛も発症を予防し、痛みが起こらなければ治ったことになります。
片頭痛予防の第一歩は、何が自分の片頭痛の引き金になっているかを知ることです。
生活習慣で言えば、睡眠不足、あるいは不規則な睡眠時間、食事、ストレスなどが誘因です。さらに、ホルモンバランス、環境因子である天候(気圧、温度、湿度)、光、音などが密接に関係するのです。
こういったことから、自分の片頭痛を引き起こす誘因を知り、こういった誘因を極力避けることが原則とされ、このことが片頭痛の予防に繋がり、このことで「片頭痛が治った・・片頭痛から卒業できた」とされています。
これが日本の頭痛学会を主導される先生方の考えていることです。
「片頭痛の引き金を避ける」ことで、果たして片頭痛が治ったと言えるのでしょうか?
私には甚だ疑問にしか思えません。
片頭痛が、高血圧症や糖尿病と同様に「多因子遺伝」であると認めながら、何故に、このような「片頭痛の引き金を避ける」ことで、片頭痛を誘発させないことが、「片頭痛が治った」と申されるのでしょうか?
糖尿病や高血圧を予防するためにそれぞれの学会で予防法を提示されているはずです。
にもかかわらず、頭痛学会だけが、こうした姑息的な「片頭痛の引き金を避けること」などと申されるのでしょうか。開いた口が塞がらない程、呆れかえってしまいます。
まさに生活習慣病をどのように考えるのかといった基本的なことすら分かっていないことがまざまざと示されており、これが内科学を修得した医師の言うことかと落胆させられ、これだけの知識しかないようです。
なぜ、頭痛の専門家達は、片頭痛を「多因子遺伝」としながら、糖尿病学会のように考えて、「糖尿病治療のてびき」や「食品交換表」などの治療指針を作成されないのでしょうか?
片頭痛の治療指針である「慢性頭痛診療のガイドライン(市民版)」を、このような「糖尿病治療のてびき」や「食品交換表」のように作り替え、指導を徹底すれば、1年半前後で、片頭痛は根治してしまい、慢性片頭痛に陥って、一生頭痛地獄の憂き目に会うことはないはずです。
しかし、なぜ、頭痛の専門家達が旧来の「慢性頭痛診療のガイドライン(市民版)」を死守されるのかを考えれば、背筋に冷たいものが走る思いです。
なぜ、このようになっているのかは、これまでも以下の記事で明確にしてきました。
製薬会社はどのように私達を騙しているのでしょうか
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12441716774.html
専門家が考えていること、欠落していること
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12365182029.html
結局のところ、日本の頭痛の専門家は「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および頭痛研究の絶対的な基準(教義・教典)とされます。
「国際頭痛分類 第3版β版」では、”片頭痛と明確に定義された”「国際頭痛分類 第3版β版」の基準に合致しないものが緊張型頭痛とされ、いわば緊張型頭痛は”ゴミダメ”的な性格の強い頭痛とされ、専門家の間では、極めて”取るに足らない頭痛”とされています。このように全く無視されています。
このように片頭痛と緊張型頭痛が全く別の範疇の頭痛と考えさせるようにしています。
本来、”未病”の段階にある、片頭痛と緊張型頭痛の慢性頭痛とは「健康的な生活」を送ることを阻害する”生活習慣”に根本的な原因があります。
このように、緊張型頭痛も片頭痛も一連の”未病”の領域にあるものです。
健康的な生活を送るためにはミトコンドリアが重要な鍵を握っています。
このように片頭痛は、ミトコンドリアの機能の低下によって起きる頭痛です。
「国際頭痛分類 第3版β版」は、その生い立ちを考えれば、トリプタン製薬メーカーおよびトリプタン御用学者が作成したものです。
これを専門家は、国際頭痛学会が作成した世界で最も権威あるものとされ、これを頭痛診療および頭痛研究の絶対的な基準(教義・教典)としています。
このようにして製薬メーカーは、専門家を支配下におくことになっています。
このため、片頭痛と緊張型頭痛はまったく別の範疇の頭痛とされることによって、緊張型頭痛と片頭痛は、一切、連続した頭痛と考えることはなくなり、予防などは論外とされ、日常的に感じる極く軽度の頭痛・緊張型頭痛から片頭痛へと容易に醸成・熟成されることになっています。
このようにして、片頭痛患者さんはいくらでも量産できる時代にあり、根治療法も指導することなく、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬と新聞、マスコミを通じて、誇大宣伝を繰り返し、トリプタン製剤を日本に導入した段階から、製薬メーカーに踊らされた専門家は、まさにピエロでしかありませんでした。
日本にトリプタン製剤が導入される以前から・・
Welch KMA, Ramadan NM らによって、片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると報告されていました。
1990年代に鳥取大学医学部・神経内科の下村登規夫先生はMBT療法(DASCH diet) を提唱されておられました。そして、これが片頭痛の食事療法の基本とされていました。
片頭痛患者においてミトコンドリア機能の低下,脳内マグネシウムの低下とマグネシウムの発作抑制作用,脳内セロトニン減少の可能性,血小板内ラジカルスカベンジャー(SOD)の低下などの臨床的根拠(エビデンス)があることから、頭痛に関してはdietary approach to stop chronic headache (DASCH )と呼ぶ,食生活を中心とする生活習慣を見直すことで片頭痛治療を提唱されました.
そして、これを確実におこなった場合の片頭痛の改善率は9割とされていました。
MBT療法(DASCH diet)
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11952953287.html
今から50年以上前に米国の生化学者フリードビッヒ博士によって活性酸素が解明され、その後世界各国で研究が行われてきました。
現在では人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、活性酸素が原因と考えられています。
ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。ということは、ミトコンドリアが関与しているということです。
現在では、ミトコンドリアを治すものが”病気を制する!”とされています。
この事実は、医学界では何十年もタブーとされてきました。
オットー・ウォーバーグが”ワールブルグ効果”を発表した時には、この事実がわかったのですが、製薬会社や医者の利益を守る為に封印されてきました。
このように、現在では片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリア働きの悪さ」に、”環境因子”として、生活習慣(とくに食生活)が原因で”さらにミトコンドリアの働きが悪くなって”、「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、生活習慣病の一種とされています。これが既に、常識とまでされています。
にも関わらず、日本の頭痛の専門家達は、永い間に渡って、片頭痛を不思議で・神秘的な遺伝的疾患とされてきましたが、最近になってやっと、「片頭痛からの卒業」で示されるように「多因子遺伝」と考えられるとされながら、片頭痛発作を引き起こす誘因としての生活習慣の問題を是正するといった程度のお粗末な認識しかされず、片頭痛が生活習慣病そのものとは一切考えることはありません。ここが最も問題視されなくてはならない部分です。片頭痛を”多因子遺伝”と考える以上は、片頭痛を生活習慣病と捉え、さらに掘り下げて片頭痛研究が進められて然るべきはずでありながら、このようなことは一切行われることはありません。まさに馬鹿げた話でしかありません。
治療指針の必要性
これまで述べてきたことから、片頭痛が生活習慣病そのものであることが理解されたはずです。ですから、片頭痛は予防できる頭痛であることが理解されたはずです。
このような考え方で、紀南地区では頭痛診療を行ってきたことにより、これが実感として感じられるようになってきたということです。
しかし、「多因子遺伝」と考えられるとされながら、片頭痛発作を引き起こす誘因としての生活習慣の問題を是正するといった程度のお粗末な認識しかされないのは、どこに理由があるのかを私達は、冷静に見つめ直すことが必要です。
そうなれば、専門家とは、一体、どなたの味方なのでしょうか?
すなわち、片頭痛発症まもなくであれば、片頭痛がどのような頭痛であり、どのようにして引き起こされるかを理解さえすれば、片頭痛を起こした原因が、これまでの生活習慣の”どういった”問題点から生じてきたことから起きているのかに気がつけば、これに適切に対処しさえすれば、1年以内には、殆ど起きなくなってきます。
私は、片頭痛が生活習慣病である以上は、生活習慣病の代表格である糖尿病のように、日本糖尿病学会が作成されていますような「糖尿病治療のてびき」「食品交換表」といった治療指針が、片頭痛の場合に必要であると、ブログ開設以来提言してきました。
今回、作成したものをご覧頂ければ、診察時間内では到底説明できない内容であることがお解り頂けたことと思います。ですから、片頭痛治療を進めながら、座右の書として、常にいつでもみれるようなものでなくてはなりません。疑問はその場で解くために・・
しかし、日本頭痛学会は、旧態依然と「慢性頭痛診療のガイドライン」を出していますが、ここでは片頭痛が生活習慣病との観点からは記載されず、トリプタン製剤が片頭痛の特効薬であり、これさえ服用しておれば、私が言う「治療指針」は必要なし、とされます。
こうした学会の考えで片頭痛治療が行われてきたことによって、慢性片頭痛の患者さんを蔓延させてきました。そして、これに対する学会の方策は何も見られることもなく、学会でも”緊急課題”として取り上げられることすらありません。
このように、片頭痛患者さんは、これまで医師の”ドル箱”とされ、”金を生む木”としか見られていませんでしたが、今回も、このような難治性の慢性片頭痛患者が増加しようとも我関せずの態度を示され、寺本純先生の提唱される「ボトックス治療」を保険適応にする方向にすら、考える動きはありません。
こうした現状に、私は堪忍袋のを緒がきれてしまい、ブログ上に「慢性頭痛治療指針」を公開することによって、これをご覧になられて方々のなかから、ひとりでも慢性片頭痛に陥らないように願って、敢えて公開させて頂くことにしました。
このようなことは、私のような頭痛専門医でもない、一介の神経内科医が公開するなど、常識はずれなことですが、現在の頭痛専門医は、考えていることが全く異なっており、患者さんを”治す”ような治療指針そのものは期待することはできないようです。
いつまでも、片頭痛は不思議で・神秘的な頭痛であり、俗物が近寄ることは許されないといったまさに「カルト宗教」なみの考え方をされるようですので・・
最後に、どの領域においても、その領域の専門家とは、ありとあらゆる可能性を知っていて、これに対して一般の素人の私達に、こうした知識を的確に教えるのが専門家のはずです。ところが、頭痛領域の専門家に至っては、信じるのは国際頭痛学会の作成した「国際頭痛分類 第3版β版」であり、ここに記載されないものは一切排除されます。
ですから、片頭痛が”多因子遺伝”であり、ミトコンドリアが関与するとか、「体の歪み(ストレートネック)」等々は、まったく関係なしとされます。
そして、未だにトリプタン製剤が片頭痛の特効薬であることだけ、が正しいと主張されます。まさに、いろいろな考え方があるにも関わらず、これしか信じないようです。
このような片手落ちの考え方をされるのが、頭痛領域の専門家の特徴のようです。
例えて言えば、頭痛の専門家集団とは、「国際頭痛分類 第3版β版」を教義・教典とするカルト教団を彷彿とさせます。