「体の歪み(ストレートネック)」の原因の大半は「前屈み(うつむき)姿勢」を強制される生活環境にありますが、もう一つ重要な原因があります。それは「ムチウチ」です。
東京脳神経センターの松井 孝嘉先生は以下のように述べています。
「体の歪み(ストレートネック)」の原因は、過去に「ムチウチなどの外傷」を負った経験があり、首の筋肉組織を痛めたことによってさまざまな不調が起こる場合です。
皆さんも、子供の頃から現在に至るまでの自分の過去を振り返ってみれば、頭を強く打ったり首を痛めたりした経験は何度かあるのではないでしょうか。
いちばん多いのは、車の追突事故をはじめとした交通事故で首を痛める場合です。
そのほかにも、子供の頃、鉄棒やジャングルジムなどから落ちたりしたことがあったかも知れませんし、自転車やオートバイで転んで頭部を打ったことがあったかもしれません。また、学生時代、ラグビーやサッカー、格闘技などの激しいスポーツをしていて、頭や首を痛める場合も多いのではないでしょうか。
実は、そういうふうに強い衝撃を受けた際に生じた「首の筋肉の損傷」は時間が経ってもなかなか治らないことが多いのです。なかには、子供の頃に首を痛めて以来、何十年も不調を引きずっているような場合もありますし、何年も前に首を痛めた影響が今頃になって出てくるような場合もあります。首の筋肉は常に働いて頭を支えていかなくてはなりませんから、他の筋肉と違って損傷が治りにくく、小さなトラブルが尾を引きやすいのです。また、頭部外傷でも首の筋肉を痛めて、ムチウチと同じ症状が現れることがあります。頭部に外傷を受けて脳神経外科を受診しますと、頭の検査だけをして「異常ありません」と帰されるケースがほとんどです。けれど、外傷を受けたあとしばらくして、ムチウチと同じ症状が出て困っている人は非常にたくさんいます。
ちなみに、このような患者さんの首のレントゲン撮影をしてみますと、たいていの場合、7個並んだ頸椎がまっすぐになってしまっています。本来は下のほうへ向かうにつれ、頸椎がゆるやかにカーブしているはずなのですが、そのカーブが失われてしまっているのです。これは「ストレートネック」といって、首の筋肉が本来の働きを果たせなくなることで起こる現象です。首の筋肉が硬くなり、伸びなくなっているために、そのしわ寄せが頸椎に及び、並びがだんだんまっすぐになっていってしまうのです。
これは、首疲労から不定愁訴を起こしている患者さんには、ほとんどの場合、このストレートネックが見られます。
過去に頭や首を痛めた経験のある人、また、整形外科などで、「ストレートネック」を指摘されている人は、首の筋肉のどこかに通常の働きができなくなっている部分がある可能性が大きいのです。その分、首疲労に陥る危険が高いことになりますので注意が必要です。 ムチウチに対する治療で、事故後、よく患部をカラーで固めたり、牽引治療を行ったりする人もいますが、私はこうした治療は逆効果だと考えております。カラー固めるのは首の筋肉のこりを固まらせて治癒を遅らせますし、牽引で無理に首を引っ張ると、傷ついた患部組織にさらに新しい外傷を加えることになり、いつまでも症状を長引かせる原因になります。これまで、このような治療が行われてきたため、ムチウチの方々を長年苦しませる結果となっていました。
頭痛専門医は、「国際頭痛分類第3β版」を絶対的な教義・教典とされます。
この基準での最大の問題点は、頭痛と「首」との関連についての考え方が極めて曖昧な点で、頭痛と「首」との関連をほとんど考慮されない考え方が生まれて、重大な論点を見失いました。
とくに、「ムチウチ」に関する”取り決め”です。
ここでは、「ムチウチ」受傷後7日以内に、頭痛その他の症状が出現した場合だけが、「ムチウチと関連」したものとされています。
しかし、皆さんの経験から、ムチウチを受けてから7日以内でなく、さらにもっと後になってから、頭痛をはじめとするいろいろな「体の不調」が出現してくることを思い出されると思います。
こういった、国際基準では、頭痛と「首(頸椎)」との取り決めが極めて曖昧模糊として いることを認識することなく、「頭痛と”体の歪み(ストレートネック)」を、エビデンス を確立させることなく、闇雲に頭からエビデンスなしと、拒否反応を示されます。
ムチウチによって引き起こされる頭痛のタイプは、緊張型頭痛が多いのですが、片頭痛であったり群発頭痛のようなタイプも当然存在します。
ということは、「慢性頭痛」のどのタイプの頭痛も起きる可能性があること意味しています。ここに、慢性頭痛、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛の発生機序を探る鍵が隠されているということです。
先述のように、東京脳神経センターの松井孝嘉先生が、永年「ムチウチ」の臨床研究を積み重ねられ、ムチウチ受傷後ストレートネックを形成してくることを明らかにされて来られました。
ムチウチの方々の最も苦痛とされることは、天気の変わり目、低気圧が近づくと、体の不調を著明に訴える点です。この点は、片頭痛の方々も全く同様です。そして片頭痛の方々・ムチウチの方々には、共通して、高率にストレートネックを認めるという事実です。
こうした事実が存在するにも関わらず、「国際頭痛分類第3β版」では、ムチウチ受傷 後7日以内のものしか、ムチウチとの関連性を認めないように定めています。
しかし、現実には、ムチウチの症状は、ムチウチ受傷後7日以降のかなり時間が経過して出現してくることは日常茶飯事のことであるはずです。しかし、こうした方々はムチウチと関係ないとされるために、このような事実そのものが覆い隠されてしまっています。
これまで、片頭痛の慢性化のリスク要因には医療介入できない因子として、女性、社会的経済的階層(低い教育歴と低収入)、婚姻状態(未婚)、頸部または頭部外傷の既往などが挙げられておりました。
ということは、頭痛専門医は、頸部または頭部外傷の既往に関しては、片頭痛とストレートネックの関与が全く念頭になかった結果と考えられます。
このことは、専門家は「体の歪み(ストレートネック)」に対する対処の仕方がまったくなされない、対処法そのものがないことになります。このためでしかありません。
こうしたことから、ムチウチによって片頭痛が増悪された方々は、巷を彷徨った挙げ句、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の施術を求めざるを得ないことになります。
また、相撲解説者の舞の海秀平さんは「片頭痛もち」で有名ですが、舞の海さんは、現役時代の「ぶつかり稽古」で首の筋肉に損傷を受けていたのでしょうか、引退して3~4年後に片頭痛を発症されたようです。東京の超有名な頭痛専門医を受診され、「元来の片頭痛と頸椎の椎間板ヘルニアが引き起こす頭痛が複合したもの」と診断されたようです。
ここでも、首の筋肉疲労という視点が全くないための診断と思われます。
最近では、このような定型的な、日常生活に感じる極く軽度の頭痛を時々感じていた段階から、一足飛びに、ムチウチや首の外傷(打撲程度のものを含めて)を契機に、それもこれらを受傷後、かなり経過して、このような外傷を受けたことすら忘れた時点で、片頭痛を発症したり、さらに片頭痛まで移行した段階でも、発作頻度もほとんど年に数回しかなかた方々が、このような外傷の後になって急激に、発作の頻度が増え、さらに発作そのものの程度が以前とは比べものにならない程、増強してくる場合が多くみられることに驚かされます。
このような例は、ムチウチの場合は、すでに常識的なことになっていますが、ムチウチでなく、偶然、頭をぶつけたり、スキーをして転倒して、頭は打たなくても、首をひねったりするとか、野球でスライデイングをした拍子に首をひねったりすることも含まれています。
本人は、こうしたことを殆ど問題にされないため、既往歴を聞く際に、具体的な例を挙げながら確認しませんと聞き出すことが困難な場合も多いようです。
そして、このような外傷を契機に片頭痛が出現したり、増悪する方々には、片頭痛の遺伝素因のある方は当然のこととしてありますが、このような片頭痛の遺伝素因が見られない場合が多いのも特徴のような印象を持っています。
このような方々は、男性に多いのですが(スポーツ外傷が、男性に多いのは当然のことですが)こうした片頭痛が出現したり、増悪する時期が30歳を超えているのも特徴のように思われます。
男性では、一般的な片頭痛の発症年齢は20歳前後とされていることからすれば、遅い時期に発症してきていると思わなくてはなりません。
こうした頸部外傷さらにムチウチ受傷後に片頭痛が出現したり、増悪する方々に共通していることは、全員に「体の歪み(ストレートネック)」を認めることです。
そして、閃輝暗点を前兆として伴っている方が多いようです。
私は、ムチウチに伴う頭痛こそ、「慢性頭痛、とくに片頭痛」の”実験モデル”と思っています。
このように、ムチウチは慢性頭痛発症の引き金になったり、増悪因子にもなり、その根底には「体の歪み(ストレートネック)」があるということです。
こういったことから、慢性頭痛診療上、頸椎X線検査は極めて重要な位置を占めています。
これまで、ムチウチに関連して以下の記事を掲載してきました。
最近の症例から・・体の歪み(ストレートネック)の関与は???
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12267590747.html
笑うに、笑えない話・・
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12260427550.html
「体の歪み(ストレートネック)と頭痛」はエビデンスなし???
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12245441016.html
慢性頭痛とムチウチ
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-12187193039.html
慢性頭痛の周辺 その5 ムチウチ
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11985440256.html
「ムチウチ」と頭痛
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11944478270.html
頭痛とムチウチ ダウンロード版
http://taku1902.jp/sub498.pdf