当医院での頭痛診療は、頭痛の診断を下すことは当然ですが、まず二次性頭痛を除外し、仮に原因として手術が必要であれば、南和歌山医療センターの脳神経外科に依頼します。
そして、慢性頭痛(一次性頭痛)と診断した場合に特徴があります。
頭痛診断には、頭部CTの画像診断と同時に頸椎X線検査を行うことにしています。
この理由は、慢性頭痛の場合「頭痛と首」は切っても切れない関係があるからです。
そして、緊張型頭痛の場合は、単に「薬物治療法」を行うだけでなく、必ず「体の歪み(ストレートネック)」を合併しておれば、このために生じた後頸部筋肉群の異常な筋緊張を改善させるために「低出力レーザー照射」を繰り返して行い、さらに「体の歪み(ストレートネック)」を改善させるための生活指導と「仙腸関節のストレッチ」「背骨伸ばし」のストレッチを指導します。
このように行うことによって、将来「鎮痛薬の乱用」による「薬剤乱用頭痛」の併発を予防し、片頭痛への移行を阻止するのが目的です。
すなわち、緊張型頭痛から片頭痛へと進展していくものと考え、緊張型頭痛の段階から「体の歪み(ストレートネック)」の是正・改善が必須のものと考えています。
また、当紀南地区は梅の産地であり、医院近辺の方々は梅の生産・加工に従事される方々が多く、このためうつむき・前屈みの姿勢で作業される方が多く、肩こり・頭痛を訴えて受診される方が多い関係から、平成15年以来、東京医研のスーパーライザー(低出力レーザー)を導入して、これまで慢性頭痛の患者さんの治療に当たってきました。
低出力レーザー
まず、低出力レーザー全般について、ご説明申し上げます。
低出力レーザー療法は、この20年間の壮絶な議論を経て、痛みの治療法としての確固たる地位を獲得し、少し大げさかもしれませんが、痛みの治療に革命を起こしたと言えす。
疼痛治療に用いられているレーザーは、熱作用がほとんど感じられない極めて低出力のもので、組織内に深く浸透する波長(可視光~赤外線の波長帯)のレーザー光を照射します。神経ブロックなどの注射は痛んでいる原因の神経に直接働きかけて麻酔や消炎作用により生理現象を遮断、抑制させるのに対して、レーザー治療は細胞を活性化させ筋肉の緊張がほぐれ血行の改善、発痛物質の除去などがなされます。しかも治療を繰り返すことにより自然治癒力を高め、免疫力の増進、神経の異常も回復します。なお副作用等はほとんどありませんし、薬物アレルギーや出血傾向の患者さんにも安心して行えます。また経皮的に行うため針の様に感染の心配は一切なく、小児から高齢者の方まで幅広く用いることができるのが特徴です。特に当院が積極的に行っている方法は、星状神経節という自律神経にやさしい光を当てる治療です。これは従来ですと注射でしか行えない方法でしたが、近年レーザーで代用できるようになりました。
レーザー治療はなぜ効くのでしょう?
レーザー光の鎮痛作用は強力でありながらも、副作用がないことで知られています。
組織を切るレーザーのメスの出力の1万分の1以下の低出力レーザー光を痛み部位に照射した場合、その部位の血流障害を取り除き、白血球から分泌される痛み物質や炎症を増大させる物質の産生を抑制し、痛み物質が伝わるのをブロックします。皮膚の創傷(きず)部位に照射した場合は、創傷が早く治るように蛋白合成を促進したり、酵素活性を高め、新しい血管を作り出すことで、傷を治し、その痛みもとります。さらに痛みを伝える神経や自律神経にも直接作用し、照射直後に痛みをとる効果も確認されています。しかも、痛みの部位が身体の深い部分にあってもレーザー光の特性で、皮下の組織を突き抜けて届くため、治りにくい痛みに効くのです。
各種肩こりのレーザー治療
肩こりも十人十色です。様々なタイプがあります。とにかく日本女性の80%、男性の60%が肩こりに悩まされているというデータもあります。日本人の生活習慣に加え、IT革命とやらがさらに拍車をかけているのではと考えられます。一般に肩こりを訴える人にどこがこっているかを尋ねれば、まず間違いなく指す部位が1点あり、その他に各人により選ばれる部位が4点ほどです。そこにレーザー照射をするのです。ただ私たちが治療する機会があるのはこういう単純な肩こりでも重症タイプばかりなので数回は治療を必要とします。また、首の後側のこりや頭部全体の頭痛や頭重感、眼痛、まぶしさ、眼精疲労など、専門的には大後頭神経-三叉神経症候群と呼ばれるつらい症状で悩んでいる患者さんに朗報です。照射部位がレーザー光の不得手な毛髪の生え際なので一工夫必要ですが。
後頭部の持続的慢性頭痛のレーザー治療
首、肩、後頭部あるいは頭全体が締めつけられるような頭痛を経験した方は大変多いのではないかと思います。その多くは緊張型頭痛と呼ばれるもので、頭頚部の筋肉の一種、コリによるものです。
同じ姿勢を長時間保たなければいけない労働、眼を酷使するような仕事など、精神的緊張を強いられる現代人の日常そのものが問題なのです。
ズキンズキンと血管の拍動を感じる片頭痛とは治療法も異なります。ただ、緊張型頭痛も重症になると片頭痛を合併してきます。レーザ-治療の対象となるのは、緊張型頭痛と、この混合型頭痛です。
レーザ-光の筋弛緩作用は今では、脳出血後遺症の痙性麻痺や脳性麻痺などの治療にも応用されていますが、そのモデルとなったのは緊張型頭痛のレーザ-治療なのです。
とくに、誰でも腰痛や肩こりなどで一度は経験したことがあるのではないかと思いますが、指で押すと「痛いけれど気持ちがいい痛み」。このような痛みには速効性があります。
寝ちがいからくる肩・首の痛み、日常の無理からく起こりがちな腰、背中の中心部分の痛みなど、生命にかかわらないため、治療に通うのを一日延ばしにしなから毎日苦痛に耐えている、といった方にレーザー治療は思いがけない効力を発揮するのです。
月に10回以上鎮痛剤を服用する事は避けるべきです。まさに頭痛から逃れようとして頭痛地獄に入ってしまいます。
こうした方々に低出力レーザーおよび光線療法を併用する方法があります。片頭痛による生体リズムの変化、睡眠障害や日内、週内、月内変動の異常を元に戻す力があります。(第11回国際ペインクリニック学会(2004年))この治療による頭痛の頓挫は劇的なもので、今まで経験した事のない幸せな世界と表現されます。
低出力レーザー光の思いがけない効果
微弱なレーザー光線に鎮痛作用があることが発見されたのが1970年代初頭です。その後約15年間、低出力レーザー治療は各種疼痛性疾患に応用され、癌性疼痛への有効性までも証明されてきました。しかし、最近の15年間は、非疼痛性疾患へ応用が広がってきました。 特にレーザー光を頚部にある星状神経節へ照射する試みが始まり、その自律神経調節作用が注目されるに至り、精神科領域、婦人科領域(特に更年期障害)、アレルギー疾患への有効性など、次々に学会発表されるに至っています。これは治療装置の進歩によるところも大ですが、特にアトピー性皮膚炎、円形脱毛症への応用はこれまで以上に広範囲の病巣に照射可能になってきており、今後の成果に期待が持たれています。80%以上の有効率を誇る鎮痛作用を越える効果はまだ見つかっていませんが、まだまだ適応疾患が見つかる気配があります。
スーパーライザー
低出力レーザー治療器開発の中で誕生した『スーパーライザー』は、光の中で最も深達性の高い波長帯の近赤外線(0.6μm~1.6μm)を高出力でスポット状に照射することを可能にした初めての光線治療器です。直線偏光近赤外線を全身の痛むところに照射することで血流を増加させ、暖かみを感じさせながら痛みを和らげる・皮膚などの組織の活性を助けるなど効果は多くあります。
低出力レベルレーザーとの違いは、スーパーライザーの方が多波長で、出力が高く、しかも生体深達度の高い波長帯で中等度の線量になるため、表皮・真皮を透過して皮下脂肪に達します。
医科領域では国内外合わせて1万を越える施設で利用され、全国の大学病院を中心に麻酔科 (ペインクリニック)、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科などで幅広く利用され、いま医療現場で大きな注目を集めています。
当院での照射方法は、以下のような考え方で行っております。
不定愁訴を伴う症状には「頭と首の境目」がレーザー照射の治療がカギ
ここでポイントになるのは、首の後ろ側の上部です。後頭骨と第1頸椎の間です。 この部分をゆるめておくことが、首の健康をキープするうえで、大変重要になってきます。後頭骨は、頭蓋骨の一番下の骨であり、第1頸椎は、7個ある頸椎の一番上の骨です。つまり、「頭」と「首」の境目にあたるところ、この部分をレーザーなどを当てて温めたりすると、非常に治療がうまくいくことが多いのです。首、肩のこりや痛みばかりではありません。この部分への治療が威力を発揮するのは、首や肩の不調に加えてさまざまな不定愁訴を訴えている場合です。首にトラブルが起こると、同時多発的に頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、イライラといった症状が起こることが少なくありません。首を痛めた後、体のあちこちに不調が現れ、自律神経失調症のような症状(バレリュウ症候群)が出ることもあります。そういった数多くの不定愁訴が現れるタイプの不調にもこの部分をゆるめることが大変有効です。
実は、なぜ、この「頭と首の境目」を緩めると、こうした好成績の治療ができるのか、そのメカニズムについては、よくわかっていません。ただ、この部分は脳と首の接点であり、大脳と体をつなぐたくさんの神経や血管が集中しているところです。この重要な部分の隙間が狭くなると、自律神経系や血流などにさまざまな影響が出るのではないかと推測されています。神経や血管が圧迫されると、大脳から体の各器官への指令がうまく伝わらなくなってなってくる可能性があります。それで、肩や首の不調とともにさまざまな不定愁訴が現れてくるのではないかと思われます。
私は、この「頭と首の境目」の部分が、首や肩の状態を左右する非常に大きなカギなのではないかと思っています。
このカギが閉まってしまっているか、開いているかは、首・肩の健康に大きな違いが出てきます。カギを開けてちょっとゆるめてあげるだけで、それまで堰き止められていたいろいろな”流れ”が回復するような気がします。恐らく、ここを緩めることで、脳から体へ向かう血液の流れや、脳脊髄液の流れ、神経伝達の流れなどが一斉に回復するのではないでしょうか。
当医院には、首・肩こりや痛みはもちろんのこと、さまざまな不定愁訴に悩まされ続けた方がたくさん来院されています。そういう大多数の患者さんが、「頭と首の境目」にレーザーを当てることによって実際に治っているのです。
ですから、いろいろな不定愁訴を伴う首こりや肩こりも、決してあきらめることはありません。「頭と首の境目」のポイントに狙いを定め、脳と体の連絡をよくする治療を行えば、すっきり治すことが可能なのです。
「頭と首の境目」に照射した上でさらに、頭痛治療に用いられるツボである、完骨・天容と、天柱、風池に照準を合わせ重点的に照射します。さらに、これと同時に、肩から後頸部筋肉群にまんべんなく照射します。3秒間隔で次々に移動させて、まんべんなく照射します。
これまでのレーザー治療を振り返って・・
以上のように平成15年以来、スーパーライザーを導入し、当初は肩こり・頭痛(緊張型頭痛)の方々を中心に治療を行って参りました。
こうしたことから、比較的若い年代から肩こり・頭痛を訴えて多くの方々に受診して頂きました。開始当初は冒頭のような考え方をもつことなく(生活指導ぬきで)、ただ単に”レーザー照射だけを繰り返していました。
ところが、こうした患者さんの中から、後になって片頭痛を発症されて受診されることに気がつきました。こうした片頭痛になって受診された方々を改めて、家族歴を執拗に問い糾す中から、やはり多くの方々が家族・親戚に片頭痛をお持ちの方々がおられました。
さらに、東京脳神経センターの松井孝嘉先生には、先生の提唱される”頸性神経筋症候群”の頭痛という病態を呈するのは緊張型頭痛がすべてであるが、なかに片頭痛があり、同様に”頸性神経筋症候群”を改善させるための理学療法で完治するものがあるということを教えられました。
このような当初は緊張型頭痛でありながら、後に片頭痛へと移行する方々を目の当たりにするにつけ、緊張型頭痛から片頭痛へと移行するのではないかといった考え方に変わってきました。
ということは、緊張型頭痛も片頭痛も連続したものであるという考え方に変わってきました。
そして、平成25年には、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生には、片頭痛が”ミトコンドリアの機能障害による頭痛である”ということを教えられました。こうしたことから、ミトコンドリアの働きを悪くさせる生活習慣(とくに、食生活)の問題から、さらに「セロトニン神経系の働きが悪くなり」その結果として「脳内セロトニンの低下」がもたらされることになり、この2つに「遺伝的素因」をもとに、片頭痛へと移行するのではないか、という考え方へと進展してきました。
(これまでも再三申し上げてきましたように、ミトコンドリアの働きの悪さに、「脳内セロトニンの低下」が加われば、当然のこととして「体の歪み(ストレートネック)」を併発してくることにもなります)
こういったことから、冒頭でも述べましたように、緊張型頭痛で受診されようとも、家族・親戚に片頭痛をお持ちの方々がいらっしゃれば、当然、将来片頭痛へと移行する可能性のある”片頭痛予備軍”であるとの考えから、この緊張型頭痛の段階から、ミトコンドリアの働きを悪くさせない、脳内セロトニンの低下を引き起こさせない「生活習慣の改善」を行うと同時に、緊張型頭痛の段階であっても「体の歪み(ストレートネック)」が存在すれば、徹底して「体の歪み(ストレートネック)」を改善させ、後頸部筋肉群の異常な筋緊張の緩和に努めるべきとの結論に至りました。
こういった「後頸部筋肉群の異常な筋緊張の緩和」の手段として、低出力レーザー(スーパーライザー)が重要な位置を占めているものと思っております。
ただ、これを実際に行う場面では、患者さん1人に対して、1名のレーザーを照射する術者が必要とされ、1名10分前後照射しなくてはなりません。このようにマンツウマンで行う必要があることです。これに「星状神経節への照射」を加えれば、20分間は、1台のスーパーライザーの治療機器が占有されることになりますので、1日に照射可能な患者数には限界があるということです。
こうしたことから、当医院では、現在2台のスーパーライザーの治療機器を設置しておりますが、人件費その他の諸経費からみても、決してペイできる治療法とはいえないようです。こうしたことから、このような治療を導入される医療機関は現在少ないのではないでしょうか? 少なくとも、現在の頭痛専門医が行われる「頭痛外来」では、頭痛とストレートネックがエビデンスなし、とされる以上、こうした治療法は思いも浮かばない方法と思われます。
しかし、緊張型頭痛の段階から将来”片頭痛予備軍”と思われる方々に対して、早期から徹底して低出力レーザー(スーパーライザー)により「後頸部筋肉群の異常な筋緊張の緩和」を行うと同時に「体の歪み(ストレートネック)」改善と「生活習慣の正しいあり方」を遵守して頂くことによって、片頭痛の発生件数の減少が感じられることも事実です。
そして、我が紀南地区が、片頭痛撲滅のためのモデル地区となるべく、今後とも、経済性の面で問題はあるとしても、医院が存続できる限り継続させる予定です。
ここにも、全国の「頭痛外来」で示される方針とは、まったく観点か異なることが理解されたことと思っております。
このような治療方針で過去平成15年以来行ってきたことによって、当医院への片頭痛患者さんの受診患者数は年々減少傾向を示しており、片頭痛撲滅のためのモデル地区となるべく、この考え方を継続して行っていくことが大切と思っております。
これを行っていくためには「レーザー照射医療機器」は頭痛診療を行う上で必須の医療機器と考えております。