独眼竜”臨床頭痛学” その10 慢性頭痛の生涯経過 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 2013年2月の日経メデイカルの「片頭痛の新攻略法」のなかでは以下のように示され、
 富永病院・頭痛センターの竹島多賀夫先生によれば、反復性の片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して増悪するとされます。
 その引用文献は(Bigal ME & Lipton RB, Headache. 2008:48:7-15)でした。
 Lyngbergらの報告では、成人片頭痛患者さんを12年間追跡し、完全・部分寛解:42 %、不変:38 %でした。一方、20 %は変容性片頭痛つまり片頭痛が慢性化しました。


 片頭痛が緊張型頭痛と連続したものであり、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)と考えるなら、片頭痛は東洋医学でいう”未病”に相当し、”慢性片頭痛”に至って、初めて「病気としての頭痛」となるということです。


 このことは即ち、自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するための「環境に対する適応力」により治癒したものと思われます。
 恒常性(ホメオスターシス)には自律神経、内分泌系、免疫系の3つの働きが深くかかわっており、それはストレスなどに大きく影響されます。
 自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な位置を占めております。
 こうした、3つの相関関係は「ホメオスターシスの三角形」と呼ばれます。
 そして、この3つがバランスをとりながら相互に作用しています。
 このなかの、”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わらない状態が持続することになります。東洋医学でいう”未病”ということです。
 そして、ミトコンドリアの問題、脳内セロトニンの低下、さらに体の歪み(ストレートネック)の慢性化の要因が加わることによって「ホメオスターシスの三角形」が”崩れる”ことによって、2~3割の方々が慢性化に至るということを意味しています。ここでやっと”病気”になります。このような段階に至れば、もはや改善は至難の業となってくることになります。
 このように段階を踏まえて”慢性頭痛”には対処しなくてはならないということです。


  慢性頭痛の周辺 その33 慢性化
  http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11996717211.html


 こうした背景を考える際に、忘れてはならないことは、遺伝に関する考え方です。
 片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えているのが、現在の日本頭痛学会の考え方です。
 片頭痛は、あたかも「遺伝」しているような「印象」はあります。しかし、その遺伝の様式は、メンデル型の遺伝様式でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から受け継がれます。この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、これに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。この環境因子として挙げられるものは、先程のミトコンドリアの問題、脳内セロトニンの低下、さらに体の歪み(ストレートネック)の3つが最低限度あります。


 そして、竹島先生は、片頭痛の慢性化には、薬物乱用や加齢を挙げられますが、このなかでもトリプタン製剤の乱用が最も重要視されるべきものです。加齢は、活性酸素によるミトコンドリア機能の低下によるものと考えるべきものです。
 現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬並の絶大な効果を発揮するため、つい飲み過ぎにつながってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤”とされていますので注意が必要です。
 片頭痛診療の重鎮とされる名古屋の寺本純先生は、このような薬剤乱用頭痛の治療の難しさをこれまで訴えてこられ、特にトリプタン製剤による薬剤乱用頭痛を改善させる難しさを強調され、従来の予防薬では全く効かないとされ、最近ではボトックス治療による方法を提唱されます。そして、先生は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛からの脱却にはボトックス療法しか現状ではないとされます。そして、その有効率は、1年以内で80%であり、残りの20%は脱却できないとされています。このように、一旦、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛に陥れば、運が悪ければ、一生、頭痛で苦しむことを余儀なくされてしまうことを意味します。まさに、頭痛地獄の絵図そのものということです。
 参考までに、寺本先生の提唱される「ボトックス治療」は現在、保険適応はなく、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛から脱却する唯一の方法でありながら、簡単に・身近な医療機関では受けることは出来ないのが現在の日本の状況です。
 ですから、一旦、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に至れば、治すことは至難の業です。
 こうしたことから、安易にトリプタン製剤を服用すべきでないということです。

 こうした薬剤を処方する以前に、行うべきことがあるはずです。
 それは、頭痛を最初に自覚した段階で「生活習慣の改善」であるはずです。
 緊張型頭痛の段階で、まず対策を講じて予防すべきということです。
 ここが、学会を主導される方々との根本的な考え方の相違です。


 話が前後しますが、片頭痛の大半は、先程述べましたように”多因子遺伝”によって継承されます。このような遺伝形式をするものに糖尿病があります。
 糖尿病も片頭痛も同じ”多因子遺伝”でありながら、糖尿病学会と日本頭痛学会の場合では、まったく対応が異っています。それは、糖尿病学会は、関連遺伝子が何であるかは、ひとまず置いておいて、環境因子が何かを追求され、現在の「糖尿病の治療体系」が構築され、さらに厚生労働省は特定健診という制度を設けて、糖尿病撲滅へと”攻めの対処”のされ方をしています。
 ところが、日本頭痛学会は、逆に、関連遺伝子の探索だけを最優先され、”環境因子”が何かということは全く探求・追求されることはありません。まさに正反対の対応です。


 遺伝要因とされる「関連遺伝子」は果たして、確認できるものなのでしょうか?


 生まれつき存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在するところに、いろいろな状況が加わってくることによって「活性酸素」が過剰に産生され、さらにミトコンドリアを傷つけることによって、ミトコンドリアの状態は変化してきます。こうしたことは時々刻々と変化しています。さらに母親から受け継がれた”生まれつき存在する「ミトコンドリアの働きの悪さ」”は各人各様であり、さまざまなはずです。
 こうしたものを「遺伝子異常」として、捉えようとしていることを意味しています。
 単純に考えても、このようにミトコンドリアの状態は各人各様であり、さらに状況によって、ミトコンドリアの状態は時々刻々変化しています。

 こうしたものを遺伝子異常として捉えることには無理があります。

 こうした”無益な研究”を延々と継続されます。

 このように、両学会には、このような決定的な差異がみられるのは、どうしてなのでしょうか? ここがまさに”深淵なる謎”としかいえないようです。


 片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因となり、いわば”あなたの生きざますべて”が関与して起きてくるものです。これらは、いずれも日常生活を送る上で、何気なく無意識に行ってきたことが原因となっています。
 このため、先ほど述べた「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがどのように環境因子として係わっているかを知る必要があります。


 以上からご理解頂けたと思われますが、学会を主導される方々は、片頭痛が、単一遺伝子から生じるものがあることから、すべて単一遺伝子による”遺伝的疾患”であるかのごとく考えているのに対して、私は「片頭痛は”多因子遺伝”」と考えていることに根本的な考え方の差異が存在します。


 こうしたことから、頭痛専門医は、片頭痛は”遺伝的疾患”とされ、不思議で・神秘的な頭痛とされ、「一生、トリプタン製剤のお世話になりましょう」と勧められます。


 このため、現実に片頭痛でお悩みの方々は、自分独自で工夫され、専門医に頼ることなく片頭痛を自らの手で改善・克服されておられる訳です。
 また、ネット上では、多数の「片頭痛改善マニュアル」が販売されます。
 さらに、カイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々からは、「片頭痛は医療機関では治らない」と”唾棄”される現状が存在することになっています。


 こうしてみる限り、片頭痛医療界では、頭痛専門医集団とは「国際頭痛分類第3版 β版」と「慢性頭痛診療ガイドライン」を教典とする”カルト教団”のようにしか思えてならず、これらの教典に従って専ら「薬物療法」に終始される方々ということのようです。


 本来、片頭痛は東洋医学でいう”未病”の段階にあるものであり、緊張型頭痛は専門医の方々が申されるように”取るに足らない”ごくありふれた日常茶飯事に存在する頭痛とされていることから、謂わば”健康”の段階にあるものと考えるべきかも知れません。
 そして、終着駅に相当する慢性片頭痛に至って、初めて”病気”としての頭痛に変貌すると考えるべきです。こうした”慢性化”に至る要因として、ミトコンドリア・脳内セロトニン・体の歪み(ストレートネック)が関与しているということです。
 具体的には、竹島先生が指摘されますように、薬剤乱用頭痛と加齢です。これらは、根底には活性酸素の関与からミトコンドリアの機能低下によるものと考えるべきです。
 特に、薬剤乱用頭痛は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛が最も重要視されるべきです。先述のように、一旦トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛に陥れば、その離脱には極めて困難を極める事態に至り、まさに頭痛地獄に嵌ってしまいます。

 このように慢性頭痛は、段階を踏まえて考えるべきものです。
 ということは、緊張型頭痛の段階から早期に対策を講ずるべきです。
 このような観点から、慢性頭痛診療は改めるべきです。すなわち、根本的な見直しが求められていることを意味しています。
 「頭痛はサイエンスである」といって、頭痛の細分類を延々と繰り返し、ただ単に「国際頭痛分類 第3版β版」をもとに頭痛診断を下し、錯綜とした”頭痛患者”には「頭痛ダイアリー」を記録させて”謎解き”する、といったことを何時までされるのでしょうか。 


 もっと慢性頭痛を根源的に”思索”する方々が出現されることが切に望まれます。