独眼竜”臨床頭痛学” その9 「国際頭痛分類」 | 頭痛 あれこれ

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 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 「国際頭痛分類」は、「アドホック委員会による分類」に始まって、1988年の『国際頭痛分類初版』さらに2004年の『国際頭痛分類 第2版』そして、2013年の「国際頭痛分類 第3版β版」へと改訂され、現在に至っております。
 このように、世の中の流れは学問として疾患を分離し、細分化する方向に進むのが合理的とされ、「頭痛そのものを”科学”」するという立場から改訂が繰り返されてきました。
 こうした理由から『国際頭痛分類』は、”頭痛患者の分類”ではなく、”頭痛発作”の分類をしようとするものです。
 その結果、多くの頭痛患者が”複数の頭痛”をもつことになりました。ということは、臨床には直結したものでないということです。
 そして「国際頭痛分類第3版 β版」はあくまでも「”頭痛”の分類」にすぎないはずでありながら、これが”すべて(絶対)”と考えることに問題があります。


 これを象徴するものは、頭痛専門医の間での論議に示されます。頭痛専門医の専門雑誌とされる「Headache Clinical & Science」で、いつも「あるテーマ」で特集が組まれ、専門医同士で議論されます。ここでは、必ずといってよい位に「そのテーマ」についての”定義”が「国際頭痛分類」という基準をもとに議論されています。改訂の都度その”定義”が変化しています。結局、「国際頭痛分類」の”定義”の解釈のしかたに振り回されて、論議はどのように解釈するかだけであり、自分独自の考え方が存在しません。
 まさに患者そっちのけで、”定義”だけの不毛な・無駄な議論を繰り返されます。
 挙げ句の果ては、結論の出ないままに堂々巡りをされ、現実の患者がどうであるかといった議論がなされることは全くありません。すべて”定義””定義”で終始されます。

 このような点はこれまでも、以下の記事で述べたことです。


  片頭痛の慢性化とは? その2 
   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11945191734.html


  片頭痛と緊張型頭痛は同じ疾患か
   http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11945159008.html


 このため、「国際頭痛分類」に”明確に定義されない”ものは論外ということになります。

 この「国際頭痛分類」で最も象徴され、問題とされるものは2004年の『国際頭痛分類 第2版』にあります。
 2004年の『国際頭痛分類 第2版』では、この頭痛と頸椎病変の定義が不明確となり、”ムチウチの定義”すら「おかしな定義」となって以来、改訂前には、寺本純先生、竹島多賀夫先生、作田学先生らは、頭痛と頸椎の関与をあれ程重要視されておられたにも関わらず、改訂後には、皆さん頭痛専門医は右習えですべて、頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」はエビデンスなし、とされるに至っています。これほど絶対的のもののようです。
 ここでは、自ら手を汚して検証されることは全くありません。

 こうしたことから、緊張型頭痛と頸椎の関与は省みられることはなくなりました。


 1978年に東京脳神経センターの松井孝嘉先生は、首こりからさまざまな自律神経失調症状が引き起こされ、この病態を「頚性神経筋症候群」と名付け、その後、試行錯誤の上で2005年に「頚筋症候群の治療法」を確立されました。(東京大学脳神経外科の時代の研究です)
 そして、第38回日本頭痛学会総会において、「頭半棘筋の異常がTension Type Headache を起こす」と題して発表されましたが、全く無視される現状にあります。


 この改訂によって、頭痛と「体の歪み(ストレートネック)」はまったくエビデンスなし、とされることによって、慢性頭痛を説明する”3本の柱”のなかの1つを失うことになり、その結果慢性頭痛の起点が見失われてしまい、すべてが闇に葬られることになりました。
 これほど、大切なものであった訳です。


 このように頭痛専門医の考え方すべては、”国際頭痛分類を絶対的基準”とされます。
まさに、問答無用です。


 2013 年3 月、国際頭痛学会主催でHeadache Master School 2013 in Asia が東京で行われ、これが日本の頭痛診療・教育のあるべき姿を示すものとの確信のもとに、学会独自のHeadache Master School Japan(HMSJ)が日本の頭痛教育プログラムの中心として,昨年7月に、まずは竹島多賀夫先生をリーダーとして大阪で開催されました(HMSJ-Osaka)。さらに同年9月には東京で寺山靖夫先生を会長のもとに行われました。

 ここでは、学会専門医とは、これまでの「国際頭痛分類」の改訂の変遷を把握した上で、現在の「国際頭痛分類」がどうなっているのかを、的確に認識される先生方ということでした。ということは、「国際頭痛分類」という世界的な基準は絶対的なものであり、これから逸脱するものはすべてエビデンスなし、ということになります。頭痛診療・研究を行う際に「国際頭痛分類 第3版 β版」を世界の”共通言語”とすべきとされます。そして一昨年にはこれまでの「国際頭痛分類」が改訂され、「国際頭痛分類 第3版 β版」となって、「HMSJ-Osaka」では、この改訂内容を徹底させることが目的でした。
 結局、「国際頭痛分類」が絶対的な基準であることが徹底して教え込まれました。
 
 竹島多賀夫先生の「頭痛診療の極意」(丸善出版)では、「国際頭痛分類第3版 β版」に基づいて頭痛を分類され、それぞれの頭痛を詳述されます。しかし、それぞれの頭痛の根底にある病態がどのようなものなのかは明らかにされることはありません。
 そして、機能性頭痛一元論を心のなかでは支持されるものの、緊張型頭痛と片頭痛が病態の上で、どのように関連性があるのかといったメカニズムに関しては、なんら説明もなく、納得させるものは何ひとつとしてありません。全く別物のようです。


 このような「国際頭痛分類 第3版β版」は、一次性頭痛と二次性頭痛とに分類することには”唯一”意義があります。すなわち、脳のなかに異常のない「一次性頭痛」と脳のなかに異常のある「二次性頭痛」は厳然と区別しなくてはなりません。ここが重要なことです。
 問題は、症状の上で「一次性頭痛」と思われても、なかには「二次性頭痛」のことがあるため、話がややこしくなります。
 こうしたことから、頭痛診療の場面では、まずCTもしくはMRIといった画像検査で、”二次性頭痛をまず除外する”ことが最も大切になってきます。
 このようにして、「一次性頭痛」と厳然と診断を下してからが問題です。


 実地の慢性頭痛診療においては、あくまでも”頭痛の分類”から診断を下すのではなく治療に直結した考え方で行われるべきです。


 一次性頭痛には、「国際頭痛分類 第3版β版」という国際頭痛学会が作成した診断分類では、この「一次性頭痛」は4つに分類されています。
 それが、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、その他の一次性頭痛です。
 一次性頭痛のなかには、インドメタシンという鎮痛薬が極めて有効な頭痛があります。
 絶対的に有効な頭痛としては、発作性片側頭痛と持続性片側頭痛です。
 絶対的ではないのですが有効とされる頭痛としては、一次性穿刺様頭痛、一次性咳嗽性頭痛、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一次性頭痛、睡眠時頭痛、貨幣状頭痛があります。
 これらは、「その他の一次性頭痛」のなかに分類されるものです。
 そして、発作性片側頭痛、持続性片側頭痛、一次性穿刺様頭痛、貨幣状頭痛の4つの病態は、いまのところ詳細には分かっておらず、全く不明とされ、これらはひとまず別格のものとして、よけておくことにします。頻度的にも極めて少なく、このようなものがあるとして、あくまでも症状の上から診断し、インドメタシンを投与することにします。


 残りの一次性頭痛の大半(9割、97%前後)は緊張型頭痛と片頭痛と群発頭痛で占められています。そして、頭痛の専門家は、これら3つを厳密に区別しなくてはならないとされます。このなかで特に、緊張型頭痛と片頭痛とで大半が占められています。
 しかし、「国際頭痛分類 第3版β版」でもはっきり示されますように、緊張型頭痛と片頭痛の境界領域にあるものが存在し、この3つが明確に区別できません。

 そして、現実に、”同一の”一次性頭痛(慢性頭痛)の患者さんを詳しくみてみますと、緊張型頭痛の要素、片頭痛の要素、群発頭痛の要素を混在しています。このように考えれば、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛も一連の連続したものと考えるのが妥当と思われ、こうしたことから、機能性頭痛一元論という考え方をされる頭痛の専門家もおられるほどです。竹島多賀夫先生は、このような”機能性頭痛一元論”を支持されておられます。
 私も、竹島先生と全く同じように、緊張型頭痛と片頭痛は連続したものと思っています。 そうであれば、「国際頭痛分類第3版 β版」に従って、同一の慢性頭痛の患者が4つも5つも複数の頭痛を持っているといった診断は、現実にそぐわないことになります。
 ということは、「国際頭痛分類第3版 β版」に従う限りは、現実の生身の患者さんを表現するには極めて煩雑となり、現実的ではないということになってきます。
 こう考えれば、実際の慢性頭痛の患者さんの”病態”を明らかにするには、「国際頭痛分類第3版 β版」では、不適切としか言えないはずです。結局、単に”頭痛そのものの診断基準”にすぎません。

 頭痛を”サイエンス”として、細かく分類することは、学問的には興味あることです。
 このようなことは実地臨床に携わる人間がすることではありません。こうしたことは、臨床を離れた”雲上人”がすることであり、こうした方々に任せておけばよいことです。

 現実の患者さんの病態を考え、これを治療に直結させることが重要であるはずです。
 しかし、専門医の方々は、現実にはこのような「国際頭痛分類第3版 β版」が、頭痛診療および研究の絶対的な基準とされます。これが、頭痛研究を阻害しているとしか思えないところです。このような「国際頭痛分類第3版 β版」という人為的な診断基準そのもので、現実の慢性頭痛の方々に4つも5つも診断名をくっ付けても何ら意味をなさないと考えるべきです。
 頭痛専門医が、どうしてこのような理不尽なことをされるのかが私には理解できません。
 「国際頭痛分類第3版 β版」という基準では、慢性頭痛患者の病態を考える上では、何か基本的に欠けているものがあるとしか言えないように思っております。


 以上のように考えれば、二次性頭痛は、すべて脳神経外科医に任すことです。


 脳のなかに異常のない一次性頭痛は、あくまでも「頭痛の細分類」ですることなく、実地臨床に即した、治療に直結した考え方で行うべきです。
 インドメタシンの有効な一次性頭痛と無効な一次性頭痛に大別すべきです。
 インドメタシンの無効な一次性頭痛として、緊張型頭痛・片頭痛・群発頭痛がありますが、群発頭痛の頻度は少なく、また片頭痛との間を行ったり来たりするものもあるところから、現段階では、一応、横にどけておくことにします。

 そうすれば、一次性頭痛の98%前後は緊張型頭痛と片頭痛で占められることになります。
 当面、大半を占める”この2つ”を念頭において治療指針を考えていくことです。
 このためには、以下の点を”大前提とする”のが基本と考えております。


 まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものである。
 そして、片頭痛の大半は、"多因子遺伝”である。そうなれば、片頭痛を発症させる”環境因子”が何かということになります。
 最後に、片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛である。


 以上の3つのことを基本理念として、臨床頭痛学は構築されるべきです。


 このような基本的なことを蔑ろにして、あれこれ論じることは無駄なことです。

脳のなかに異常のない頭痛とされる一次性頭痛は、その根底ではすべて繋がっているものと考えるのが妥当なはずです。
 これまで、私は、このブログでも「二次性頭痛(その他)」「その他の一次性頭痛」 について述べましたように、これらもその根底には”共通した病態”が存在することを明らかにさせてきました。そして、これらの”基本的な病態”は以下の5つが考えられます。


 1.ミトコンドリアの関与
 2.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
 3.体の歪み(ストレートネック)の関与
 4.ホメオスターシスの関与・・免疫(腸内環境)の関与
 5.脂肪摂取の問題・・生理活性物質との関与


 このような5つの「基本的な病態」が”環境因子”となっていると考えるべきです。
 このような5つの観点から慢性頭痛は論じられるべきものです。
一次性頭痛と診断・確定すれば、上記5つの病態から、その頭痛を評価すべきです。
 
 このような観点から、これまで論じられてきたことがあるのでしょうか?
 このような多様な病態をもとに発症する、”相対的な”「機能性頭痛」である片頭痛を、ただ単に「国際頭痛分類 第3版β版」といった”絶対的な”人為的な分類をもとに診断することには、当然のこととして無理があるはずです。この点が理解されていないようです。


 こういった一次性頭痛の病態を論ずる場面において、メスを捨てた脳神経外科医が狭い手術経験から、あたかも知ったかぶりをして脳外科の立場から、極めていい加減な論説を振り回すことが慢性頭痛の理解を妨げてきた根源と考えるべきです。
 脳神経外科医は、二次性頭痛の手術適応を厳格に決めるべく治療方針を確立すべきです。
 そして、手術手技の腕を磨くことに専念すべきです。手術してナンボのものです。
 こうしたことに眼を瞑って、脳のなかに異常のない「一次性頭痛」に口を挟むこと自体が論外とされるべきです。まさに”お門違いで、専門外”のはずです。
 このようなことが、臨床頭痛学の進展を阻んできた根源と考えるべきです。


 いつまで「国際頭痛分類第3版 β版」だけに拘っておれば気が済むのでしょうか?

 頭痛専門医が、日本内科学会(認定内科医),日本小児科学会,日本産科婦人科学会,日本眼科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本脳神経外科学会,日本麻酔科学会,日本救急医学会,日本リハビリテーション医学会および日本精神神経学会.といった専門医から構成されることにも問題があります。前時代的な組織という他ないようです。このような”雑多な集合体”からは統一した発想が生まれることを期待することは土台無理のようです。
 このように多くの分野から専門医を組織するには何か別の意図でもあるのでしょうか。
 まさに転々バラバラの錯綜した世界としかいえないのではないでしょうか。このような専門医で構成されるために、慢性頭痛は混迷を深めるだけのことです。
 もっと慢性頭痛そのものを俯瞰できるような指導者が求められているはずです。

 単に「国際頭痛分類 第3版β版」に準拠して頭痛診断を行っていくだけでは、素人と全く変わることなく、”慢性頭痛の真相解明”には至ることはないように思っております。
 現実の慢性頭痛患者さんと照らし合わせて、「国際頭痛分類 第3版β版」の問題点を明確にできなければ、慢性頭痛の真相解明には程遠いということです。
 こうした問題点すら認識できない方々が存在していることを考えなくてはいけません。


 いつまで「国際頭痛分類第3版 β版」だけに拘っておれば気が済むのでしょうか?


 さらに忘れてはならないことは、名古屋の寺本純先生が指摘されますように、1988年に発表された「国際頭痛分類」は、1980年代はじめにイギリスで合成されたトリプタンを意識的に評価する目的で作成されたものであり、とりもなおさず、欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していたものです。このような欧米のトリプタン製薬会社とトリプタン御用学者が作成していた「国際頭痛分類 第2版」を無条件に踏襲した形で「慢性頭痛診療ガイドライン」が作成された事実です。このようなことから、ガイドラインでは、片頭痛治療上、トリプタン製剤が”第一選択薬”となり、これに付随した予防薬を中心とした「薬物療法」が全てとなりました。そして、これ以外のものは、すべてエビデンスなしとされてしまいました。こういったことから、頭痛専門医であれば、”片頭痛にはトリプタン製剤を処方する”といったことを前提に先程のような”雑多な集合体”で専門医を養成したとも考えられなくもありません。


 学会を主導される方々が、「国際頭痛分類 第3版β版」を頭痛診療および研究の絶対的な基準とされることによって、”国際頭痛学会が作成したものである”と宣われ”謂わば水戸黄門の印籠”のように、「この紋所が目に入らないか」と提示され、ガイドラインにそぐわない、国際基準に一致しない考え方は、「頭(ず)が高い」と全て排除され、これらに従わなければ、学会から”村八分”にされることを恐れ、頭痛研究をされる方々は盲従される現実があります。こういったことから、「国際頭痛分類 第3版β版」に如何に問題点があろうとも、頭痛専門医といった称号を手に入れるためには、反論できないということです。「国際頭痛分類 第3版β版」の問題点にすら気がつかれない専門医も多いようです。

 このように考えれば、実際の患者さんを度外視した「国際頭痛分類 第3版β版」としかいえず、まさに患者不在の「頭痛学」としか言えないようです。
 換言すれば、実際の患者さんをもとに、治療(頭痛を根絶させる)を全く考えることなく、”頭痛そのものをサイエンスする”といった考え方が罷り通っているということです。
 こうしたことから片頭痛にはトリプタン製剤という”すばらしい薬剤”があるのだから、これで痛み(頭痛)が改善できれば、それで”よし”とされておられるのかもしれません。
 こうした事実は、同じ穴のムジナ同士では、認識し得ないというべきかもしれません。


 ここが、最大の問題点とされなくてはなりません。