片頭痛の慢性化とは? その2  2013/06/10 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

片頭痛の慢性化とは?
難治性片頭痛患者をどのように診断・治療するか


 これは、Headache Clinical & Science Vol.4 No.1 2013/5 (メデイカルレビュ社)の特集の記事です。K大学の教授の司会のもとに3名の「頭痛専門医」の座談会形式で述べられていました。(今月の最新版です)
 相変わらず、「国際頭痛分類 第2版」の診断基準をもとに、慢性片頭痛と薬剤乱用頭痛の診断基準について話し合われていました。
 なぜ、このような「国際頭痛分類 第2版」の診断基準に厳格に従う必要があるのかという疑問です。実際に、このような患者さんを診ますと、この診断基準に合致するような方々は極めて少ないというのが、私の実感です。このため、こうした場合、厳密に区別する必要があるのかどうかということです。
 そして、治療面で、「予防薬の使用法」について言及されていました。
 問題は、予防薬の効果がどの程度なのかは、「頭痛専門医」であれば、よくご存じのはずです。なぜ、このような治療効果しか得られないのかという反省が全くない点がまず問題とすべきです。慢性片頭痛まで至らない、ただ単に「発作回数」が多い場合に使用しても、その効果自体は、たかが知れていることは、これまでも当ブログでも述べました。この程度の効果しか得られない「予防薬」が「慢性片頭痛」に有効であるとされます。信じられない思いがしました。果たして、本当なのでしょうか? こういった考えは患者を愚弄する論法でしかないことを全く自覚しておりません。 この点は、私が指摘するまでもなく「現実に、慢性頭痛で、ほとほと困り果てておられる」患者さんには信じられない点だと思われます。こういった、現実を全くご存じではないのでは・・と勘ぐりたくなります。何を考えておられるのかと、「広島弁」で表現すれば「頭をカチ割ってやろうか」といった表現しかできません。はしたなくて、済みません。
 結局のところ、慢性片頭痛に至らせないためには「開業医」の啓蒙が必要と主張され、あたかも、慢性片頭痛に至る原因は、開業医のせいにされます。

 私は、一般開業医として、この記事を読んで、何か”寂しい”思いをさせられました。
 何か、どこかが狂っているとしか思えません。まさに、責任転嫁そのものとしか思えません。
 私も、一般内科医として、医師になって以来、過去45年間頭痛患者さんを診せて頂いております。一般開業医のせいに、仮にされるとすれば、頭痛専門医は、この私が医師になって以後の過去45年間の間に、何を「研究」されておられたのかを、お聞きしたく思います。 私が医師になった当時と現在と比べ、全く進歩がないのは、どういった理由なのでしょうか? このような事実は、どなたも自覚されておられないようにしか思えてなりません。トリプタン製剤が、片頭痛治療に使われるようになったことを、片頭痛治療の進歩とでも申されるのでしょうか?いつまで、こういった考えを押し通されるのでしょうか? 時代錯誤も甚だしいと考えるべきです。10年前なら、いざしらず・・


 まず、”開業医の無知のために、慢性片頭痛が作られる”という点です。


 私は、決して、このような見解は全く、納得しかねる点です。
 私は、「頭痛専門医」が金科玉条のものとして遵守される「国際頭痛分類 第2版」に、この根源があると考えております。
 と言いますのは、前兆のある片頭痛であれば最初の1回目でも、片頭痛の診断は可能ですが、問題は、前兆のない片頭痛の診断を下す場合です。この場合、「国際頭痛分類 第2版」では、5回同様の頭痛発作を繰り返して初めて「片頭痛」の診断が下されるように決められております。ということは、最初に頭痛が起きた場合、中には、余りにも頭痛の激しさのあまり、救急で医療機関を受診される場合もあります。ところがCTなどの画像診断で異常所見はないはずですから、当然、対症的に鎮痛薬を処方され追い返されます。ところが、いずれまた再度、頭痛発作が起きてきます。そして、また酷い頭痛であれば、また救急で受診され、また画像検査を繰り返され、異常がないわけですから、また追い返されます。このように、2度目も起きれば、当然「片頭痛の疑い」とでも一言本人に言えばすむことですが、何も言わずれずにまた追い返されるのが殆どです。
 このようなことを繰り返すうちに、本人は「2,3日もすれば治まる」ということを”学習”します。この「2,3日間」が耐えられなければ鎮痛薬を服用されます。
 このような方々は、それ以降、頭痛発作に見舞われても「医療機関を受診しても、高い画像検査をされるだけで、恐らく異常なし」と言われ追い返されるに違いないと判断し、毎回、鎮痛薬で我慢することになります。このような方々には、周囲に同じように頭痛を訴えておられる方も多く、このような方々は、殆ど鎮痛薬で我慢されるのを観察されておられるわけで、これを見習って鎮痛薬を服用しつつ、痛みを耐えることになり、鎮痛薬の服用回数などは気にされることはまず、ありません。このようにして、市販の鎮痛薬が効かなくなって初めて医療機関を受診するといった構図になっています。
 また、別の場合は、頭痛の初発した段階で医療機関を受診され、画像検査をされ「異常なし」とただそれだけで追い返されます。再度、発作が起きても、また検査をされ、また追い返されます。このようなことが繰り返された場合、患者さんはどのように考えるでしょうか? 受診しても医者からは、何の説明もなく「ただ、異常なし」と突き放された場合、医師は「自分の痛み(苦しみ)」を理解してくれず、このため周囲からも冷たい目で見られることになり、本人は絶望感しかありません。このため、5回目の片頭痛と診断されるべき時点では、もう医療機関は信用されず、自分で「ただ、ひたすらに、痛み」を耐えるか、市販の鎮痛薬しか頼らなくなってしまい、挙げ句の果ては「薬物乱用頭痛」に追い込んでいくことになってしまいます。少なくとも、最初の発作時に、片頭痛の疑いとして、頸椎レントゲン検査でストレートネックの確認を行い、「セロトニン生活の励行」と「ストレートネックの改善」に努めさせれば、片頭痛はなくなってしまい、薬物乱用頭痛までには至らず、当然慢性片頭痛となることはないはずです。
 しかし、このような配慮がなされず、大半は、このような経過を辿って「薬物乱用頭痛」へと移行してしまっております。最大の問題点は、このような視点が、現在の「頭痛専門医」にはないということです。このような「自覚」が全くない方々が「一般開業医」を責める資格があるのでしょうか。これは、どなたの責任なのでしょうか? 本当に、開業医の責任なのでしょうか?
 こういった点は、「頭痛専門医」が、救急を担当される医師に啓蒙すべき事項ではないでしょうか? 向ける矛先が違うように思われますが・・・。啓蒙すべき対象が的外れとしか言えません。この点は過去を振り返って、厳粛に反省すべきと考えます。


 話をもとに戻します。上記の3名の頭痛専門医の方々には、片頭痛をどのように考え、どのようにして慢性片頭痛、もしくは薬物乱用頭痛に至るのかという”ストーリー”に全く欠けている点です。
少なくとも「頭痛専門医」と称されるからには、自分独自の「片頭痛に対する考え」があって然るべきと考えます。ただ、症候論に終始するとすれば、ただの”素人”と全く変わらないと考えますが、このあたりはどうなのでしようか?ここが最大の疑問です。この点は、「国際頭痛分類」に拘っておられる点が、全てを物語っております。
 私は、これまで当ブログで申し上げている通りに、片頭痛は「セロトニン神経の働きの悪さ」が基本的に存在すると述べて参りました。
 このセロトニン不足のため「体の歪み」を引き起こし、これがストレートネックを形成させる原因となってきます。このストレートネックが長期間持続することによって、以下のような病態が引き起こされてきます。


ストレートネック→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓                 ↓
↓       脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓                 ↓
↓       中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓                 ↓
↓       脳の過敏性、頭痛の慢性化

自律神経失調症状 → 交感神経機能低下→頚性神経筋症候群
                              (慢性頭痛)


 このようなストレートネックの存在すら全く念頭になくこのために片頭痛を慢性化させる原因となっています。
 そして、市販の鎮痛薬やトリプタン製剤を服用しすぎますと、これが「化学的ストレス」となって、さらにこれが「脳内セロトニン不足」を助長することとなり、このために「痛みを感じやすくなり」結果として「薬物乱用頭痛」から「慢性片頭痛」を作ってくると考えております。
 このため、原因薬剤の中止は必要ですが、予防薬の投与だけで、慢性片頭痛が改善される訳はありません。これらの3方の患者さんは、恐らくドロップアウトしているのを「改善」されたものと思い込んでおられると思われます。
 実際に、これらの3方に受診されておられる読者の方々からメール相談を受けており、まず間違いのないところです。このような「予防薬」だけで軽快するのであれば、どなたも苦労しないと考えます。
 また、片頭痛の慢性化の要因として、頭部外傷・頸部外傷が挙げられています。これらは、すべてストレートネックを引き起こす原因になっています。
 頭痛専門医は、概して「頭痛とストレートネックはエビデンスなし」と全く無視され、ストレートネックを改善させることは全く念頭になく、このために頭部外傷・頸部外傷が慢性化の要因として挙げられますが、ストレートネックさえ改善すれば、決して困難なものではありません。このように、ムチウチとストレートネックの関連についての知識が欠如している上に、ストレートネックを治す”術”を持っていないための結果に過ぎません。


 また、食品中の「有害物質」が体内に長く蓄積することによって、これが、また「化学的ストレス」となって、脳内セロトニン不足を引き起こして、これも慢性化の要因ともなります。頭痛専門医には、このような有害物質を排除する方法としての「デトックス」という考え方が全く存在せず、このために、慢性片頭痛の治療上難渋しているものと考えています。

 このように考えれば、今回の座談会に出席された3名の「頭痛専門医」は、専門医として何を考えているのでしょうか? 自分の無知を公開しているとしか思えません。これを、開業医の無知と非難されておられます。私は、いくらでも「慢性片頭痛」へ移行させない手段はいくらでもあると考えております。
 啓蒙すべきなのは「開業医」なのでしょうか?
 全く、信じられない思いがします。恥を知れということの、ただの一言です。


 今回、参入された分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、この片頭痛の慢性化について、どのようにお考えなのでしょうか? 是非とも、お伺いしたいところです。

 このように見ますと、果たして片頭痛を慢性化させている張本人はどなたなのでしょうか? 疑問だらけです。以上が、「馬鹿な一開業医」が思ったことです。お粗末さまでした。


 皆さんは、どのようにお考えなのでしょうか。以上私が述べたようなことは全く念頭になく、あなた方が受診されている”先生様”は、”やみくも”に診ておられるということを忘れてはなりません。こういった”無節操な考え方”で診ている限り治るものも治らず、挙げ句の果ては、開業医に責任を転嫁されており、全く無責任としか思えません。

 私の主張に疑問を持たれる方は「Headache Clinical & Science Vol.4 No.1 2013/5 (メデイカルレビュ社)の特集をご覧頂きたいと考えております。これが、現実の「頭痛専門医」の考え方であり、これが「全て」のようです。この根底には、片頭痛は「神秘的で、不思議な病気」であるという「神懸かりの思想」からくる考え方、そのものであり、およそ「科学者」の考え方ではないということを認識しない限り、何時までも「このような方々」に翻弄され、苦しむのは「自分自身」なのです。こういった意味で、今回の分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の著書”お医者さんにも読ませたい「片頭痛の治し方」は、現在、「片頭痛でお悩みの方々」は、是非とも、ご覧になられ、これまでの「頭痛専門医」の治療のあり方を反省・反芻すべきと考えます。

 私は、このような「頭痛専門医」が未だ「頭痛専門医」が愛読される雑誌に、このような記事を”臆面もなく”出されている事実を憂えているからです。冒頭に「片頭痛の”初期”診断」の問題点を述べました。「頭痛専門医」の治療方針が、どこまで「一般の片頭痛患者」さんのコンセンサスが得られるのか、ここを私は問うているのです。いつまでも「トリプタン製剤」に頼り切った時代は終結しており、今後は、再度改めて「片頭痛患者さん」から、”冷ややか”にかつ”冷静に、見つめ直される時代が、到来したことを、「頭痛診療」を行う立場の方々は認識しなくてはならないと考えます。そうでもしなければ、「頭脳明晰な、片頭痛」の方々から、見放されていく運命にあることを・・・


分子化学療法研究所の後藤日出夫先生のコメント


片頭痛の慢性化について先生より質問がありましたので、先生への返事というより私の考えのまとめとして説明致します。体の歪(ストレートネックなど)など体に生じている物理的ストレスの重要性については承知していますが、ここでは服薬による片頭痛慢性化について分子化学的な側面からだけの説明にさせていただきます。

 まず、結論から先に申し上げますと、「片頭痛の慢性化」は鎮痛剤や発作予防薬などの服薬によって引き起こされると考えています。そして、奇異なことに「片頭痛の慢性化」を誘導しているのが、本来それを治すべき役割であるはずの一部の「頭痛専門医」ということです。

市販の鎮痛剤や風邪薬:鎮痛剤にはさまざまなタイプのものがありますが、ここでは市販薬として汎用性の高いアスピリンについて説明します。この度の私の著書119ページ以降に記述していますが、アスピリンは服薬後、代謝されサルチル酸という傷害性の強い酸に分解され、ミトコンドリアの代謝物取り込み口(PTP)を破壊します。ミトコンドリアの活性が低下すれば、セロトニンの合成や神経細胞の電気的性質に障害が起きます。言い換えますと、脳内セロトニンの不足と神経細胞のイオンチャネル障害(脳過敏)が生じます。
アスピリンは服薬すればするほどミトコンドリアの活性を低下させ片頭痛体質を悪化・慢性化が進行するということです。

 トリプタン製剤:トリプタン製剤は5-HT1B、1Dに作用するホルモン(セロトニン)と考えると、服薬により(セロトニン+トリプタン)血中濃度が上昇します。一般にホルモンの血中濃度が高くなるとそのホルモンに対する抵抗性が生じるか、ホメオスタシスが働きセロトニンの合成量が低下すると考えられます。結果、いずれの場合であっても慢性化は進行すると考えられます。しかし、私の調べた範囲ではこれらに関する報告は見っけられませんでした(これらの報文があれば、一件落着なのですが)。
 また、そうでないにしても、トリプタンの服薬頻度が高くなれば、トリプタンの半減期が比較的短いとは言え、平常時のトリプタンの血中濃度は上がることになりますので、(セロトニン+トリプタン)濃度変化は起きやすくなると考えられます。
一般的に閉経とともにセロトニンの濃度変化が小さくなり片頭痛が改善されるのとは逆に、トリプタンを連続的に服薬すればするほど、平常時の(セロトニン+トリプタン)濃度は高く、セロトニン濃度変化を大きくしたと同様な作用を引き起こすとも考えられます。
結局、安易にトリプタンを服薬すればするほど血中の(セロトニン+トリプトファン)濃度は上がっていき、片頭痛を起こしやすくなる。そのため、さらにトリプタンが必要になるという悪循環に陥っている「薬物乱用頭痛」の方が多いのではないかと考えています。

抗てんかん薬:片頭痛の少年の母親に、「脳過敏症候群」と称して抗てんかん薬(デパケン)の投薬を強要している一部の「狂った-頭痛専門医」におめにかかり、医師にあるまじき行為と憤りを感じたこがあります。
抗てんかん薬は慢性化以前の問題として、一旦常用し始めると離脱症状の危惧のため生涯抗てんかん薬を飲み続けないといけないということも起こりえます。ある程度の年を重ねたてんかんの方への処方はやむえぬことだと思いますが、てんかんでない少年にまで抗てんかん薬を強要するのは狂っているとしか言いようがありません(他に全く方法がないというのでしたら、馬鹿げてはいるが一つの方法といえると思いますが)。
デパケンの薬理作用はGABAの合成酵素を失活させGABA濃度を高めること、およびカルシウム&ナトリウムチャネルに作用し神経細胞内のイオンバランスを整えることですが、イオンバランスの整え方は「マグネシウムの重要性」ということで著書にも記述したとおりでし、ミトコンドリアの活性を高めることで解決可能と考えます。

これら以外にも、抗うつ薬を飲まれている場合は、片頭痛の慢性化に影響してくると思います。
また、有害物質の中でも食品中に含まれる有機リン系残留農薬やメチル水銀はアセチルコリンの分解や合成に深く関わり、片頭痛の慢性化の一因子として考えられます。しかし、アスピリンやトリプタン製剤の服薬による有害性比べればその悪影響は非常に限定的なように思えます。
片頭痛の慢性化の多くは、「片頭痛は遺伝によるものであり、服薬により凌いでいくしかない」という考え方そのものに原因があると、いえるのではないでしょうか。