療育のIQ検査と、中学受験の適性」からの続きです。⇒

 

小学2年生から3年生に上がるため、ゆうくんの生活環境も色々と変わります。中学受験塾のボリュームだけではありません。ゆうくんにとってはもう1つ、大きな変化がありました。

小学2年生の終了と共に、療育を卒業しました。

皆さまの税金を源泉とした公的支援も頂戴しながら、保育園の頃から毎週欠かさず通っていましたからね。1週間のルーティン上では、大きな変化です。先生の移り変わりが激しかったこともあり、本人的には特に思い入れもなかったため、最終日はあっさりとしたものでした。
最後の最後ぐらい「ありがとうございました」と発話できると良かったのでしたが、最終日も挨拶代わりのタッチと、ぬいぐるみでの代弁でした。

それはそれとして。

現在、就学前のお子様がいらっしゃる親御さんで、「うちの子は、もしかしたら他の子とちょっと違うかも。でも、きっと成長が少しゆっくり目なだけ。そのうちみんなと同じになるはず」とお悩みの方はいらっしゃいませんか? もしそのような方がこのブログにたどり着いてくれたのなら、強く伝えたいことがあります。

療育の効果を得られる時期は、有限です。
タイムリミットがあり、成長するほどに効果は乏しくなっていきます。

子供の成長は早いものです。迷っている暇などありません。あっという間に、対策を打てる時期を失います。地域にもよりますが、公的支援の申請に何ヵ月も要することは珍しくありません。
悔んだところで時間は巻き戻せんが、うちは少々出遅れました。つまり、時間切れ、タイムオーバーを迎えたということです。

発達障害とひとくくりに言っても、その内容はお子様によって千差万別。なので、参考になるか否かの判断材料として、まずはゆうくんの特性を赤裸々にお伝えします。
あくまでゆうくんのケースは、ゆうくんにしか該当しません。「あ、ここは同じかも?」という箇所を抜き出して、我が子向けに解釈し直した上で、使えそうなところだけ参考にしてもらえればと思います。お子様のことは、貴方が最も良く知っているはずです。

ゆうくんのような児童は、一般的に発達障害グレーゾーンと呼ばれています。人口の8.8%が該当すると言われており、少数派ではありますが、珍しいほどではありません。クラスや職場にも必ず何人かは存在する確率です。診断は受けていませんが、おそらくゆうくんパパも、そのうちの1人です。
ところが、「発達障害グレーゾーン」というカテゴリは、行政手続き上には存在していません。ゆうくんに発行されているのは「障害児通所受給者証」。これが正式名です。ちなみに知的障害を伴う場合は「療育手帳」となり、支援制度が別になっています。当然、必要な対処も別なのでご注意ください。

障害の程度(軽度、中度、重度、最重度)以外にも、そのタイプも千差万別です。臨床発達心理士による診断では、凸凹を把握していくことになります。
そう、凹だけでなく、凸もあるのが発達障害の特性です。凸部分が運良く学業方面に一致すると「ギフテッド」です。時代のニーズに運良く一致すると、既存の枠組みに囚われない優れた創業者になるとも言われていますね。当然、社会で活躍できる才能を兼ねない方が、圧倒的多数です。

ゆうくんには「感覚過敏」「体幹が弱い」「学習障害(ディスレクシア)」「ワーキングメモリに乏しい」といった特性があります。学業やスポーツへの影響は一旦横に置いておくと、日常生活で最も困るのが「自己肯定感が低い」という特性です。

これは脳機能における「報酬系機能」の障害です。

「発達障害は治る!」とする説も色々あるみたいですね。しかし、療育では「持って生まれた特性は、一生、治らない」という大前提に基づき対症療法を試みます。残念ながら医学的には、原因となる事象の観察止まりで、健康保険が適用されるような治療法が確立されていないためです。
「我が子の特性をありのまま受け入れて、社会生活で困らないようにトレーニングしていこう」というのが、療育の基本的な考え方となります。

子育てしていれば「ほめて育てよう」「自己肯定感を育もう」というフレーズを必ず耳にしますよね? これが効かない(正確には、効きづらい)のが、発達障害です。
ほめられても、ほめられたと感じない。つまり、ほめない子育てと同じことが起こります。外部からの働き掛けに、価値を感じる機能が欠如しているのです。結果、自分自身の判断基準が全てです。放っておくと、内面向きのマイワールドな性格となり、協調性を欠くため社会生活に支障をきたします。

例えば、お手伝いすると100円もらえるとします。普通の子はしっかり100円分喜んで、また100円もらうためにお手伝いしようとします。実際には100円ではなく、「ほめられる体験」「他の人に喜んでもらえる体験」が100円相当の報酬となります。
発達障害の子は、10円分の喜びしか感じません。10円のためだけに、またお手伝いしようとは思いませんよね? 100円分の喜びを得るには、1000円もらう必要があります。本人的には1000円分のお手伝いをしたつもりなのに、100円しかもらえなかったと不満を募らせることになります。「プライドが高い」「承認欲求が強い」とも言い換えられます。

具体的な言動としては、「こだわりが強い」「外部からの指示やルールに従えない」「周りに言動を合わせられない」「変化に対応できない」「切り替えができない」「他者を気遣えない」「できない自分を認められない」「挑戦から逃げる」といった傾向が現れます。一言で示すなら、コミュ障ですね。友達になりたいと思いますか? 思いませんよね?
心の病ではありませんし、「わがまま」とも違います。脳機能の「障害」です。だから、発達「障害」であり、行政手続きの書類でも「障害児」と明記されるのです。

こうした特性を受け入れた上で、どうすれば良いのか。ここから先が療育の役割。そして療育の限界です。


⇒「時は待たない! 発達グレーの療育卒業物語(その2)」に続きます。

 

最初から読む◆ 「中学受験」に療育っ子がチャレンジ!
◆ 「家庭学習」で四谷大塚の授業に追いつきたい!
◆ 「療育」(発達グレー)のあれこれ!