予習禁止なのになぜパパ塾を続けるのか?(魔方陣の場合)」からの続きです。⇒

 

※ 本題に入る前に「言葉」の定義をさせてください。この記事では、以下の意味で用いています。
・ 先取り1 =低学年から中学受験塾に入って、中受特化カリキュラムのスパイラルを、早めに回し始めること。例として、四谷大塚だと小1の三学期で和差算、浜学園だと小2の一学期で鶴亀算とか出てきますね。うちの場合、浜学園の飛び級制度みたいな「学年単位の先取り」はしていません。
・ パパ塾(親塾)=家庭教師や個別指導の代わりに、塾授業に付いていけない部分を親でサポートすること。うちの場合、集団塾にはお世話になっています。でも、それ以上の教育費が捻出できません(泣。
・ 先取り2 =塾授業の前に、パパ塾で予習しておくこと。浜学園の場合は、塾からは予習厳禁と釘刺されていますが、うちの場合、予習抜きでは授業についていけません。

大手の中学受験塾でも、低学年からの先取りに対するスタンスは大きく異なります。関東最強のSAPIXでは明確に「低学年からの取り組みは、高学年の成績と相関性がない」と言い切っています。
トップ層と最下位層の顔ぶれはほば固定化されてしまい入れ替えが滅多に起きないことは、統計データからも明示されています(※)。SAPIXの主要顧客であるトップ層のお子様にとって、未熟なうちからの先取りは無意味です。未熟なうちに10日費やして先取りするより、高学年になるのを待って10分で理解した方が効率的だからです。
※ ボリュームゾーン(中位層)内では入れ替えがあることも、データは示してます。多数派のお子様にとっては、努力次第でトップ層にも最下位層にも近づく点にはご注意ください。

 

 

>「地頭の悪さ」を「長時間労働」でカバーするやり方は、5年生後半以降になったら、崩壊します。
> 幼児教育、先取り学習。詰め込み教育。なんだかんだやったって、結局は5年生後期から地頭の順に並び変えられる。

おそらくこれは真実です。実体験に基づく先輩の言葉は重みが違います。パパ塾先輩の経験に学ばせていただきながら、恩返しとしては後に続く皆さまにバトンを渡せるように、うちの体験談(失敗談)も何かのお役に立てればと本投稿は作成しています。俺の屍を越えてゆけ! ゆうくんやボクにとっては、やり直しが効かないですからね。これから中学受験塾への入塾タイミング(特に低学年からの入塾)を検討される皆さまにとって、同じ轍を踏まないよう1つの参考になれば幸いです。

結論の1つとしては、SAPIX・αを目指せるような「地頭の良い」お子様にとって、SAPIXが示す通り先取りするメリットは皆無です。ただ、そうしたお子様は勉強好きのケースも多いですからね。マイナス面もないので、先取り学習をパズル感覚で楽しんだら良いと思います。


では、お勉強大好きなトップ層以外は、どうしたら良いのでしょうか? 高学年になって授業中に理解できず、授業を受ける資格なしとして、ふるい落とされるのを座して待つべきでしょうか? 就活時の学歴フィルターで足切りになって、再浮上が極めて難しいポジションからの社会人スタートを、甘受すべきでしょうか?

ひと握りのトップ層以外が、人数的には大多数を占めます。そこにビジネスチャンスを見出したのが、早稲アカや関西最強の浜学園といった低学年先取り派です。SAPIXとは真逆の経営戦略を採っており、スパイラル方式(らせん方式)を低学年から回すことで、高学年からでは授業に付いていけない層の底上げを狙います。
塾からのポジショントークでは、「低学年のうちに貯金させておく」と表現されています。高学年になった途端(他のお友達が勉強を始めた途端)、半年も経たずに使い果たしてしまう「貯金」ではありますが、丸腰で挑むよりはマシと思われます。

低学年からスパイラルを回すため、後で学ぶ単元の先取りではありますが、学齢に応じたアレンジはされています。どこの塾でも共通しているのは、低学年のうちは公式っぽいものは一切教えないということ。還元算の要領で試行錯誤したり、表や図を描いたり、自ら考えて、自ら立式することが求められます。
「できる子」と「できない子」の違いは、先生の解説の意味まで深く理解できるか。上っ面だけ一時的に覚えるか。です。高学年の授業では時間的な制約もあり、公式の意味の深掘りはお子様本人に任されます。低学年で比較的時間に余裕のあるうちに、その辺りを補っていこうというコンセプトです。

それでは中学受験特有の代表選手である特殊算、その中でも最初に習う「和差算」を例に、実際の塾授業(低学年)ではどのように先取り学習が進むのか、見ていきましょう。
和差算は全統小(小1春=卒園から2ヵ月)に、しれっと出題されていました。飛び級するようなトップ層のお子様であれば、小学校入学前にマスターしている単元となります。通常の塾授業なら、小1秋ぐらいに習います。


<例題>
きつねのゴンちゃんと、ふくろうのホウちゃんは、2匹で合計7個のドングリを持っています。
ゴンちゃんの持っているドングリの数は、ホウちゃんよりも3個多いです。
さて、ゴンちゃんとホウちゃんが持っているドングリの数は、それぞれ何個でしょうか?


① どんぐり倶楽部
中学受験塾ではありませんが、中学受験塾とは真逆のアプローチ手法の1つに「どんぐり倶楽部」があります。お絵描き算数というやつで、たっぷり無制限に時間を費やして、子供が自ら想像をふくらませることを重視します。
四谷大塚や浜学園では「図工の授業じゃないからね!」と、解くための作図はシンプルに描くよう指導されます。逆に「どんぐり倶楽部」は、どれだけ余計なラクガキをしてもOKです。お絵描きさえできれば解けるように作問されているため、解き方やヒントを示すことはNGとされています。


お絵描き算数なので、まずは7個のドングリを描きます。次に、違いの3個を、ゴンちゃんに渡します。残った4個を2匹で分けます。自由にお絵描きした後は、その内容を数式で表現します。
7-3=4
4÷2=2
ホウちゃん:2個
ゴンちゃん:2+3=5個

 

 

「どんぐり倶楽部」は、書店で買えるスパエリの付録にもついてきますよ。低学年から先取りする1手段として、中学受験塾に比べると出費は桁違いに安く試せます。



② 四谷大塚
どんぐり倶楽部や浜学園・山本塾とは、かなり異なったアプローチから入り込みます。還元算の要領で、記号(マーク)で示された箇所の数字を埋めるやり方です。どうやって埋めたら良いのか。逆算などの公式を教えてもらう前に和差算は習うので、総当たりで試行錯誤していきます。単月ではなく、複数月で繰り返し練習させる力の入れようです。


ゴ+ホ=7
ゴ-ホ=3

足して7になる組み合わせは、(ゴ,ホ)=(6,1)(5,2)(4,3)の3通り。そのうち違いが3になるのは、(5,2)のみ。
ゴンちゃん:5個
ホウちゃん:2個



③ 山本塾(浜学園)
浜学園では線分図をベースに教えていきます。考え方のベースはどんぐり倶楽部と変わりませんが、線分図が出てくると、いかにも中学受験塾ってカンジですね。数字が大きくなると、こっちで考えないと解けなくなります。浜学園で「できない子」が困るのは、授業中に考え込む時間を与えてもらえないってことです。授業時間は決まっていますからね。そこで山本塾では、中学受験塾(特に関西圏)の授業に挑むための土台作りに特化した親向け講義を公開してくれています。
山本塾では「線を真っすぐ引く」ところから最初のスパイラルを回し始めます。そして必ず「複数の解き方」を試すことが徹底されます。


和差算で学ぶべきことは、「どちらかにそろえる」発想です。まずは小さい方にそろえます。
ホウちゃんの数にそろえるため、ゴンちゃんのドングリを3個減らします。当然、全部の数も3個減ります。
減らした後の合計:7-3=4個
ホウちゃん:4÷2=2個
ゴンちゃん:2+3=5個



次に大きい方にそろえる解き方も試します。
ゴンちゃんの数にそろえるため、ホウちゃんのドングリを3個増やします。当然、全部の数も3個増えます。
減らした後の合計:7+3=10個
ゴンちゃん:10÷2=5個
ホウちゃん:5-3=2個


山本塾での解説はYoutubeで無料公開されているので、実際の講義内容はそちらを見てもらった方が早いです。

 

 


④ 参考:全ての塾共通(高学年)
効率良く学習を進めるため、ついに公式が紹介されます。初見でも「できる子」なら、公式の意味を授業中に理解することができます。「できない子」は理解できないまま放置されるため、問題を解くためには公式を丸暗記するしかなくなります。
というか、授業中に理解「できない子」は、授業を受ける資格なしとして、ふるい落とされていきます。

小さい方=(和-差)÷2
大きい方=(和+差)÷2

ホウちゃん:(7-3)÷2=2個
ゴンちゃん:(7+3)÷2=5個



同じ単元の先取りでも、その内容は塾や教材によってバラエティ豊かです。ご紹介したのは四谷大塚と浜学園の例です。うちは他塾のことを知らないので、公式を教える前段階としては、もっと色々な教え方があるのかも知れません。SAPIXの低学年とか、どんなことやっているんでしょうね?

先取りを進めているゆうくんですが、そのメリットであるはずの偏差値向上効果は今のところゼロです。偏差値の母集団が全員先取りしていることもあり、「当たり前」の結果ではあります。という訳で残念ながら、現時点では先取りの成功談を示すことが出来ません。

低学年からの先取りは、自信を喪失して勉強嫌いになってしまうケースなどデメリットも盛りだくさんです。子供の時間は有限で、遊びやスポーツなどの経験に割けるはずだった時間を、塾勉強に奪われることにもなります。お子様の特性に応じて、用法・用量に注意しながらご検討ください。

 

⇒「次記事」に続くかも?(予定)

 

最初から読む◆ 「中学受験」に療育っ子がチャレンジ!
◆ 「家庭学習」で四谷大塚の授業に追いつきたい!
◆ 「療育」(発達グレー)のあれこれ!