love storys  ~17歳、私と君と。~ -140ページ目

love storys  ~17歳、私と君と。~

どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

~side由美~


君と夏帆のキスを見て・・・どんだけ苦しんだか・・・


君にはわかるかな?


いや・・・分かるよね?


私が苦しんで、蓮君のもとに完全に心が動いた時のキスを君は見たんだから。


お互いに苦しんでるんだ。


こんな苦しみ・・・辛いだけ。


だから・・・。


「君のことは好き。けど・・・」


別れよう。その言葉が出ない。


言えないよ・・・。


涙があふれ出す。


裕樹君を見る。


すべてを察したようだった。


「終わりにしようってこと・・・?」


裕樹君から言ってくれた。


「うん」


「由美と蓮が幸せになることを祈っておくよ」


彼が寂しそうな笑顔で行った。


ありがとう。そう言おうとした時、何か違和感を感じる。


今・・・裕樹君は「蓮」と言った?


「蓮君のこと知ってるの・・・?」


「うん。だって蓮は・・・」


そこで、裕樹君は言うのを止める。


「蓮は・・・何?」


私は裕樹君に先を諭すように聞く。


「いや・・・なんでもない」


裕樹君は顔を背ける。


その時、一瞬見えた表情。


嫌悪感に似た表情だった。


2人はどういう関係なんだろう・・・?


「それより・・・由美」


「何・・・?」


「携帯出して」


裕樹君は自分の手に携帯を持っていた。


「うん・・・」


私も携帯を出した。


「言いたいこと分かるよね・・・?」


裕樹君が私に聞く。


「うん。分かるよ」


私はアドレス帳を開いて、『杉原裕樹』の欄のところで枠を止めた。


「お互いにアドレスを消そう・・・」


その言葉は二人にとってとても非情な言葉。


遠距離の二人だから、連絡先を消したら間違いなく会うことはない。


こんな、偶然がない限り・・・。


でも、私は裕樹君のその言葉を否定せず、了承したんだ。


なんで?


そんなの簡単だ。


2人の人を好きになってたら辛いだけ・・・。


分かってるんだ。


お互いに、裕樹、由美はもう必要ないってことを・・・。


「じゃあ・・・消すね?」


「うん・・・」


そして、私たちはお互いのアドレス、電話番号を消した・・・。




宗谷岬の地の牌は夏帆が言っていた通り綺麗にライトアップされていた。


点在している光の中で中心にある大きな光。


そんな神々しい場所で僕らはどんな話をするのだろうか?


少なくとも穏やかな話じゃないことは確かだが。


僕が着くと、そこにはもう由美が座って待っていた。


「久しぶりだね・・・」


僕がそう言うと、由美は


「まあ、半日ぶりだね」


僕の目を見ず、皮肉を言った。


「そうだね・・・」


「ねぇ、拓也君ならわかるよね?わざわざこんなとこまで呼び出した理由・・・」


「なんとなく・・・ね」


「ここで・・・」


由美は立ち上がり、光っている地の牌に触れた。


「君と夏帆がキスをしているのを見た」


僕の方を見る。


「うん・・・」


僕は頷いた。


「私は蓮君・・・いや男の子とキスをした。あの灯台の下で」


由美は大きな灯台を指差す。


「知ってる。見たから・・・」


僕はそう言って苦笑する。


「そうなんだ。じゃあ、質問。裕樹君は夏帆のことが好きなんですか?」


「うん」


由美が少し寂しそうな表情になる。


「じゃあ、私のことは?」


「好きだよ・・・」


僕のこの気持ちは本心だった。


「私も・・・」


由美は下を向いた。


「私も、蓮君と裕樹君。両方好きなんだ・・・」


「・・・」


「蓮君は君にないものを持ってる。やっぱさ・・・遠距離って辛いよね・・・」


「由美・・・」


由美の瞳には涙が溜まっていた。その涙は今にも溢れ出しそうで・・・。


「裕樹君・・・。君のことは大好きだよ。けど・・・」


僕は辛そうに続きを言おうとしている由美を見て自分で続きを言う。


「もう・・・終わりにしよう・・・ってこと?」


「うん・・・」


由美の涙があふれ出した。


けど・・・この涙を止めるべき相手は僕じゃなくて・・・蓮。


そう思うと、何もできない自分が腹立たしくなるんだ。


「分かった。じゃあ、別れよう。由美が蓮と幸せになれるように祈っとくよ」


「え・・・?」


由美が不思議そうな顔で僕を見る。


「何?」


「蓮君のこと知ってるの・・・?」


「うん。知ってる。だって蓮は・・・」







あんなのを見て・・・僕はどうすればいいんだろう?


ホテルのベッドで僕は考え込む。


あの後、僕は由美たちに話しかけずに帰った。


夏帆にも由美たちを見たことは言わなかった。


というか、言えるはずないのだが。


夢が現実になったんだ・・・。


蓮と由美がキスをする。


まだ、目を閉じればすぐに脳裏に浮かぶ。


あのキスシーン。


・・・。


時計の針が動く音だけが聞こえる。


今日は一人部屋だから、他に誰もいない。


隣からも声が聞こえない。


ほとんど無音だ。


この無音が僕に考える心のゆとりを与える。


そして、考えれば考えるほど・・・


思えば思うほど・・・辛くなる。


その時、携帯のバイブ音が鳴った。


・・・誰だよ。


僕は舌打ちをして、携帯を開いた。


宛名は由美からだった。


『久しぶり。今、稚内にいるんだよね?直接話したいから、昼間いた場所に来てくれない?宗谷岬に』


時計を見る。


時刻は21時50分を回っていた。


22時になれば点呼に先生が来る。


それが終われば抜け出せる。


『わかった。23時に行く』


僕はそう返信を返した。


君と会うのは何カ月ぶりだろうか?


あの時、心は一つだと誓いあったあの日以来だ。


今は・・・2人の気持ちにどれだけ変化が生じただろうか?


一つ言えることは、間違いなくあの時とは違う。


もう、単純に二人が愛し合ってるってことはない。


君の心はどれだけ蓮に動いている?


もう、僕より蓮の方が上回っているのだろうか?


そうじゃないと信じるのは自分勝手だろうか。


でも、信じたいんだ。


君の気持ちがまだ僕の方に向いていることを。


夏帆とキスをしといて・・・僕が言えるセリフじゃないことぐらい分かってる。


けど・・・。


その時、点呼の先生が来た。


そして、数秒の業務連絡を終えて先生がいなくなる。


・・・行くか。


僕は制服に着替えて、上からパーカーを羽織った。


これから、一時間後。


僕らは久しぶりの再会を果たすんだ。


二人きりで・・・。










誰かの足音が聞こえて、僕は唇を離した。


周りを見渡すと一人の少女が岬の灯台に向かって走って行くのが見えた。


・・・キスを見られたのだろうか?


「ちょっと待ってて・・・」


僕は夏帆にそう言い、彼女を追う。


何か見覚えのある後ろ姿に、嫌な胸騒ぎがする。


「やば・・・」


僕は彼女を見失う。


辺りを見渡すどこにもいない。


諦めて、戻ろうとした時、すすり泣きのような声が聞こえて僕は立ち止まった。


「由美・・・俺が支えるから・・・」


男の声が聞こえる。


由美・・・?


僕は足音を忍ばせ声の方へ向かった。


2人は灯台の裏にいた。


死角にいて見えなかっただけらしい。


そして、その二人の顔が見えた。


そこにいたのは・・・蓮と由美・・・。


由美が蓮に抱きつく。


・・・なんだよ・・・これ?


蓮は一旦、由美を離す。


上目遣いで由美は蓮を見て、目を閉じる。


由美は蓮にキスを求めているんだ。


蓮が顔を近づける。


ドクン・・・ドクン・・・。


僕の心臓が波打つ。


・・・蓮やめてくれ・・・やめろ!!


心の中で絶叫する。


けど、蓮は止まらない。


そして・・・2人の唇が重なる。


僕の目の前で。


僕はそれに対して目を逸らさなかった。


ただ、虚しい傍観者になっていたんだ。


君と僕の道はもう繋がらない。


僕はその時、そう実感したんだ・・・。


だって・・・僕は君と蓮のキスを見て、


君は僕と夏帆のキスを見たのだから・・・。