先日の続きで、会計士試験制度について考察を試みたい。今回は世代間比較をメーンに。
統計や数字については、前回のエントリーの表を適宜ご参照いただきたい。
③「ゆとり世代」と称される07-08年組の合格率の実態
統計上
、07-08年の合格率は15%程度と表記されている(短答式試験受験者等、の列)。
この世代は、監査法人の採用のゆるさもあり、一部からは「ゆとり世代」と称されているのだが、実態としてそこまで合格率は高くはなかったことをまず申し上げたい。実質ベースで算定すると、07-08年は8-9%程度であり、それ以前と比較して同程度である。人数がやたら多いのは、単に06年からの新制度で短答合格して次年度以降に繰り越された人たちが合格していったということである。
しかし、合格率が同程度でも、新制度の受験者母集団の平均レベルは落ちている。なぜなら、新制度で新たに試験を受験できるようになったのは、高校生や大学1-2年生であり、また社会人も比較的受験しやすくなったのだが、これらの受験者の多くは従来の受験者層と異なり、(相対的には)全力投球型ではないと推察されるからだ。それを考慮すると、この世代の合格率8%は、従来の8%よりも緩いといえる(定量化はできないが、1.3倍くらいにしておくべきか)。
結論として、この世代の合格率は、巷で言われているほど馬鹿高い(15%)合格率ではなく、実態としては8%程度なのだが、母集団レベルの低下を考えればその8%は旧制度のそれよりも緩いものである、といえる。その意味で、主に転職戦線において、この世代が事業会社等から向けられている厳しい目線というのは、若干かわいそうな面があると思っている。
しかし、残念ながら、その厳しい目線を肯定もできてしまう面がある。それは、前述の合格率の実質的上昇に加えて、この世代の甘やかされぶり(採用時、待遇、仕事スタイル)というのは半端ではなく、結果として成長がぬるく留まった若手も多数いるのである。これは、監査法人内で仕事をしてきた者としては、事実としか言いようが無い。
④世代間比較
上記③と関連するが、旧試験制度以降の世代間比較をしてみたい。
旧試験:00-05年平均で、合格率は8.5%であり特段大きな変化はない(1989年以降に広げても8.1%)。
新試験(07-08):実質合格率8% (母集団レベルの低下を考えれば、実質的にはもっと簡単となっているはず)
⇒実質的に合格率が上昇し、監査法人の採用政策もあり低品質の会計士が多く入社してきた。教育制度や職場環境より彼らの成長があまり促進されないことも後押しして、イマイチ君が多い。
新試験(09-現在):実質合格率4%
⇒一転して合格率が急激に低下し、かつ監査法人の採用枠が大幅に狭まり、高品質の会計士の卵たちが入手してきており、法人内の評価も高い。ただし、直属の上司が上記世代のイマイチ君であることも多く、鬱憤がたまったり、適切なOJTが受けられないことも多いため、今後の成長は彼らの意気込みにかかってくると思われる。
もちろん、これは机上のはなしで、かつ平均点のはなしであり、個別に見ればいくらでも優れた人や劣った人は、どの年代にもいることは変わらない。全体的な傾向と考えていただきたい。