監査をしていた頃、税務絡みは決まって現場最上位者がやることになっていた。別に若手がやってはいけないということはないのだが、税務、特に法人税等の計算や税効果の検討、連結税効果などは比較的監査・会計・会社のこともよく理解していないと厳しいので、現場の最上位者に近い人がやることになるのである。私も晩年は、それこそどの現場でも税金+αくらいを持ち場として、現場監督や会社折衝に精を出していた向きであった。


それはさておき消費税である。監査人にとって、消費税はあまり接触しない税目である。いや正確に言うと常に接触はするのだが、スルーするというか、適当に流せる存在なのである。幸か不幸か。


不動産業や特殊な業界で無い限り、課税売上割合が95%以上であるのが通常なので、会計システムで処理される仮払・仮受と(納付書で明確な)中間申告分を精算すれば、期末の未払(未収)消費税残高の出来上がりである。監査上は適当な分析的手続(企業秘密なので手法は明かせない)で期待値という「枠」に放り込む実務が散見されるが、上位者は何の興味も無いから完全スルーする。一応断っておくが、消費税科目への上位者(パートナー達)による興味の程度は、前払費用とかゴルフ会員権をも下回る程度で、資本金を若干上回る程度といっても過言ではない。


そんな消費税が今年度の法改正により、監査現場で熱くなるのではないかと勝手に外部から盛り上がっている。課税売上95%以上であっても課税売上5億円超の企業は、従来全額控除できていた仕入税額が控除できなくなり、あの勘定が登場してしまうのである。そう、控除対象外消費税額等がそれである。私は延べ100回程度は各企業の年度決算を見てきたと思うが、この勘定が出てくることは非常に稀であった。


しかし、今期からは一定以上の規模の会社であれば、ほぼ必ず出てくることになる。こうなると、かつての黄金時代を経験した分析的手続という生ぬるい手法は、通用しなくなる。監査人各位におかれては、消費税の細かい点を復習して、分析や詳細テストの質を高めて誤謬を未然に防いで欲しい。加えて注文したいのは、過去から設定されていたシステム上の区分もこれを機に検証されたい。昔、この設定が狂っていて過去の修正をしたという話も聞いたことがあり、監査人としても経理としても盲点が突かれたらしい。



最後に、多くの若手スタッフが開示チェック時に一様に発する「未払消費税等の「等」って何ですか??」という質問について、答えは「国税ではない、地方消費税(消費税の25%相当、すなわち1%部分)のことである」、と回答して、結びに代えたい。