シン・シティ

ジェネオン エンタテインメント
シン・シティ スタンダード・エディション
別名オーシャンズ11・ダークサイド。っていうくらい、有名どころが多数出演している、漫画原作の実験的ハードボイルドムービー。
なんたって、ブルース・ウィリス/ミッキー・ローク/クライヴ・オーウェン/ジェシカ・アルバ/ベニチオ・デル・トロ/イライジャ・ウッド/ジョッシュ・ハートネット /ブリタニー・マーフィ/デヴォン青木/ロザリオ・ドーソン/ニック・スタール/マイケル・クラーク・ダンカン/ルトガー・ハウアー/マイケル・マドセン /ジェイミー・キング/アレクシス・ブレデル/…って11人以上いるケド、誰が主役ってワケでもなく、結構贅沢な使い方をしている。
それもそのはず、基本的には、ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライヴ・オーウェンの3人がシン・シティで繰り広げるハードアクションが全編で炸裂するが、3人が絡むことは殆どなく多極的展開。ジェシカ・アルバがストリッパー役で踊っているバーだけが、唯一この物語が同じ街で成り立っていることを表している。
原作者のフランク・ミラーが絡んでいるだけあって、世界観、映像、キャラどれをとってもイメージは原作そっくりとのこと。#まあプロモではそういうこと言うんだよね
全編モノクロ、かつ非常に陰影の濃い映像で、女性のドレスとか、印象深い部分だけ鮮明なカラーで色づけした映像が何ともダークでレトロな美しさを感じさせる。
カラー映像でやったら、きっとグロさとバカさが丸出しで「KILLBILLフルスロットル」に成り下がったことだろう…実際、作中のキャラ達も、所詮オトコは暴力に訴えるバカばかり、な展開。
いかにも漫画な殺しのシーンや、激しくモノローグの多い独り言系の演出は、さすがタランティーノ・ファミリーの匂いがプンプン。
しかしタランティーノ監督作よりは 会話<アクション であるので、テンポは良い。
#ちゃっかりタランティーノもクレジットされているんだよな~
さて多数いるキャストの中でも、印象的なのはこの人達。
ミッキー・ローク…もともとはブルース・ウィリスとちょいかぶってそうなキャラだけど、今回はものすごーくマッチョでごつい男に改造されてます。唯一心を寄せた娼婦の復讐をすべく街を闊歩する。
イライジャ・ウッド…そしてその復讐相手、シリアル・キラーがこの人。眼鏡がモノクロ映像に妙に白く輝き、いかにもサイコな雰囲気を盛り上げる。アクションシーンの体さばきもなかなか。でも台詞ナシです。
デヴォン青木…女殺人マシーン。手裏剣飛ばすわ、弓は引くわ、刀は抜くわで、あれ?キタノ座頭市ってモノクロ映画だったっけ?と見紛うばかりの高速剣さばきを発揮。この人も、台詞ナシだ!
ジェシカ・アルバ…カワイイ!さすが、元祖エロカワ。出番はあんまりないのだけど、おいしいヒロイン役です。
その他、ベニチオ・デル・トロに至っては、ヒューマニズム全開のアナタが良くOKしたな!というくらい、どうしようもなくチンピラで無様な役柄を怪演。
さてこんなキワモノ系でも、続編が決定しているようだ。
エキセントリック度が増して、単なる「KILLBILLモノクロ版」と化すのか?それとも映像美をさらに追求して21世紀のフィルム・ノワールにまで昇華できるか?興味はつきない。
続編は映画館で観ようっと。
【小説】アイルランドの薔薇

石持 浅海
アイルランドの薔薇
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出版社/著者からの内容紹介
南北アイルランドの統一を謳う武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で何者かに殺された! 宿泊客は8人――そこには正体不明の殺し屋が紛れ込んでいた。やはり犯人は殺し屋なのか? それとも……。宿泊客の一人、日本人科学者・フジの推理が、「隠されていた殺意」をあぶり出してゆく!
本格推理界に衝撃を走らせた期待の超新星の処女長編!
内容(「BOOK」データベースより)
南北アイルランドの統一を謳う武装勢力NCFの副議長が、スライゴーの宿屋で何者かに殺された!宿泊客は8人―そこには正体不明の殺し屋が紛れ込んでいた。やはり犯人は殺し屋なのか?それとも…。宿泊客の一人、日本人科学者・フジの推理が、「隠されていた殺意」をあぶり出してゆく!本格推理界に衝撃を走らせた期待の超新星の処女長編。
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ふれこみ通り、コテコテのミステリ。
アイルランドという舞台設定がヒネリが効いていて楽しめました。
正直、北アイルランド問題などは詳しくないし、アイルランドと言われてもU2くらいしか出てこないのですが、何となく日本の田舎に相当するような、素朴ながらも、土着感というか、因習縛り感というか、英国に蹂躙された怨念が根底のところに渦巻いているような、そんなおどろおどろしい印象があって、ミステリの土壌としては結構イケてるかも。(アイルランドの皆さん、テキトーな感覚で書いてしまってます。すみません)
ところで、著者が日本人だからだろうけど、主人公の日本人科学者フジはすごくカッコよくキャラが作られてますね。
探偵でもないのに、注意力と洞察力ありすぎ。しかも咄嗟の判断とNCFの兵士をも手玉にとる体さばき、只者ではなさすぎ。作中でも、さりげなくスゴイ人に惚れられるし。
途中の犯人探しの議論は少々中だるみしますが、あまり話は長くないし、途中でとってつけたように更なる殺人?が起こるしで、一気に読めます。
最後は、「ああ?コイツが?」「なにい!コイツか!」「おっとコイツもか!」みたいに、一見、アイルランドの田舎の山荘に偶然あつまったように見えたキャラ達が次々に…
超新星!ってことで売り出し中の著者。次々書いているようなので、他の作品にも期待。
BGM->U2"Achtung Baby"1991
【新書】ハリウッドで勝て!
一瀬 隆重
ハリウッドで勝て!
Jホラーでハリウッド制覇した一瀬"プロデューサー"の自伝、そして日本映画産業への提言。
映画は芸術でありエンターテイメントであるが、同時にビジネスでもある。
ビジネスとして成功しなければ製作者達は嬉しくない。
ひとつの芸術、エンターテイメントとして完成させるのが監督の役割であり、ビジネスとして成功させるのがプロデューサーの役割だ。さらに、映画がヒットしたら、製作関係者、その当事者達が大儲けできなくては、面白い映画が生まれるはずもない。
日本の映画産業界は、テレビ局などの大手企業が牛耳り、企業の商売道具になってしまっている。
そして製作者たちはサラリーマン的に手足を縛られ、発想の自由とより多くの観客を呼ぼうという野心を失い、自閉気味に、無活力状態になってしまっている。
なんだか、ソフトウェア産業界も、似たような問題を抱えているなと思った。
ソフトウェア産業も、ITゼネコンと呼ばれる大手SI企業が牛耳り、技術者達は大手企業の商売道具として過酷で労働集約的な作業を強いられている。
もちろん、近年はインターネットビジネスツールなど、技術者が本来の技術を駆使して商売道具を創造しているケースも多々あるが、大部分の技術者達は先に述べた通りの状況に甘んじているのが実態だ。
ソフトウェアを創造して、それをより多くの人に使ってもらい、儲ける。
そういうビジネスを志向するなら、きっと同じようにプロデューサーが必要なのだろうし、企業のなかに閉じ込められているよりは、自分で企画開発販売をするほうが自然である。
昔はとてもそんなことは実践できなかったけど、インターネット&Webなら、作ったソフトウェア(サービス)の流通コストはゼロだし、なんか行けそうな気がする。
でも多くの人に使われるようなサービスを企画開発するには、やっぱりプロデューサーが必須なんだよね。
サービス開発の現場で、技術者達が暴走して、テクノロジはスゴイかも知れないがとても売れないものが出来上がる、なんてことが往々にして起こるのは、このプロデューサー的視点が欠如しているからに他ならない。
何を隠そう、ワタシが所属する会社も、そんな失敗多々あるぞ!
新書マップ Powered by GETA
http://shinshomap.info/
これ、面白い。
汎用連想計算エンジン(GETA)というのを使っているらしくて、ほんとは違うかも知れないけど、ものすごく簡単に言うと、文脈(の単語)から連想されるキーワードを高速に検索する技術らしい。
使用許諾を守ると我々でも使えてしまうんだな。こういうのが日本でもどんどんオープンになっていくといいですね。
これ、面白い。
汎用連想計算エンジン(GETA)というのを使っているらしくて、ほんとは違うかも知れないけど、ものすごく簡単に言うと、文脈(の単語)から連想されるキーワードを高速に検索する技術らしい。
使用許諾を守ると我々でも使えてしまうんだな。こういうのが日本でもどんどんオープンになっていくといいですね。
【小説】親不孝通りディテクティブ

北森 鴻
親不孝通りディテクティブ
高校時代からの腐れ縁「鴨ネギコンビ」、長浜でカクテルがウリの屋台を引くテッキ(かもしだてっき)と、結婚相談所の不良調査員キュータ(ねぎしきゅうた)という二人が博多の街で繰り広げる、ちょっと危なくてセンチメンタル&ハードボイルドな連続短編。
個性の全く異なるテッキとキュータという二人が、それぞれの一人称で交互に語っていくその手法が、掛け合い的で、楽しい。
それぞれの一人称ってのはいいですね。キャラの心の台詞もそれぞれの語り口で語らせることによって、キャラへの感情移入度が飛躍的に高まります。
テッキは、博多でカクテルを出す一風変わった屋台を引くようになる前は、東京に何年かいっていた。よって、テッキのパートは標準語表現で、どこか語り口もシニカルな(地方の人が抱くであろう)東京っぽさを漂わせている。
東京にいるあいだ、何をしてきたのか?ちょっとアングラな世界にも足をつっこんでそうな思わせぶりな過去をちらつかせる。キャラ設定も思慮深さや冷静さを強調しつつ、かといってそればかりでもない、良いバランス調整。
対して、ばりばり博多っ子のキュータが語るパートは博多弁。「便所の100ワット」的な性格、熱しやすくイキオイ重視のキャラ設定もそれに拍車をかける。
また、ところどころで「よっしゃあ!オレの作戦は完璧じぇ」みたいなキュータの心の叫びがフレーズになっていたりして、リズミカルでいい感じ。このあたりは「池袋ウエストゲートパーク」のマコトがはく捨て台詞を髣髴させる。能天気度合いは3倍くらい違うけど。
そういや、キャラのスタイルや物語のジャンルは、I.W.G.P.と似てるところもあるね。
I.W.G.P.は若干アングラ度が高いというか、オタクっぽいところなんかもあるけど、本作はどっちかといえばウェットです。
二人の高校の恩師で現在キュータの雇い主(結婚相談所オーナー)である通称「オフクロ」や、博多署で裏のアルバイトもこなしちゃう鬼刑事、ライブハウスオーナーの伝説的シンガー「歌姫」など、サブキャラも個性的。
読み始めれば、もっとたくさん、この二人の掛け合いを読みたくなること、うけあい。
しかし、作者にはその意志はないようで?本作の最後はちょっと悲しい結末に終わるのでした。
これはこれでぐっとくるのでいいラストかも知れないけど。
そういえば、福岡ダイエー(現ソフトバンク)ホークスの初優勝シーンが出てきました。
ワタシ、いつも長嶋の次に語られることの多かった王さん、清原の次に語られることの多かった秋山選手、この二人が都落ちして九州で一念発起し我慢強くチームを強化してついに優勝する、この時期のホークスの大ファンでした。
二人とも、どっちかというと努力の人。この二人が優勝決定後のグラウンドで、大騒ぎする若手選手を尻目に、二人だけで微笑みながら何か語り合っている写真が、Numberというスポーツ雑誌に掲載されていたのですが、この写真で、何度泣いたことか。このときの日本シリーズ特集記事は文章も感動的で、保存していないことをかなり後悔しています。