梶田半古。120年前のモダンな弁天さま | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

文藝倶楽部 木版口絵(1905)梶田半古

 

明治38年発行の文藝倶楽部定期増刊の梶田半古による木版口絵。もう120年前の作品なのにすごくモダンで現代の作品といわれても通りそう。

 

描かれているのは上野不忍池の七福神のひとり弁天様で、上野は東京各所にある七福神の始まりといわれる。琵琶を弾き終えてひと休みする弁天様の足元には、ご神体とされる白い蛇が寄り添っている。オリエンタルな印象の柔らかな衣装を纏い、背景は冬枯れの不忍池の枯れ蓮である。

 

 

文藝倶楽部 定期増刊 第11巻第1号 博文館

 

明治時代の雑誌、講談読物にはこうした折り込みの木版口絵が付きもので、わけても春陽堂、博文館が双璧です。ほんとうに手の込んだ仕上がりで、手間がかかるため本文に先行して作業が進められたのか、掲載内容とは関係のないテーマが多く、やはり(四季折々の風俗を織り込んだ)美人画が多い。

 

ただ、明治30年代になるとカラー石版が定着しはじめ、刊行物の発行部数の増加とともに手刷木版印刷は後退していく。こうした雑誌口絵などは、安価な職人さんの使役によって支えられていたわけだが、その技術精度は極めて高く優れている。

 

『文藝倶楽部』の口絵については、山田奈々子『美人画口絵歳時記(2008)文生書院』に詳しい。大量のカラー図版を収拾した労作です。