黒岩涙香の巌窟王 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 黒岩涙香:史外史伝 巌窟王 巻之1(1905)芙蓉堂

 

明治38年発行の芙蓉堂版の黒岩涙香「史外史伝 巌窟王」第1巻の梶田半古による木版口絵です。「巌窟王」はご存知の通りアレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」を、涙香がかなり自由に翻訳したもので、舞台は原作のままですが登場人物の名前は和名に替えられています。

 

 黒岩涙香:史外史伝 巌窟王 全4巻(1905-06)芙蓉堂

 

涙香の翻訳ものについては幾度も書いているのでくり返しませんが、近代以降の日本人は、こうした海外の復讐潭を好み、あるいは海外理解の一助にしたのでしょうかね。私たちは「忠臣蔵」を愛する国民ですから判りやすかったのだと思います。上掲左側は巻之4の口絵で、こちらは石版刷です。

 

 黒岩涙香:史外史伝 巌窟王 巻之4(1906)芙蓉堂

 

巻之4の石版刷口絵の「墨刷」を一枚所蔵しています。試刷のようで右下脇に「明治39年6月5日」の日付が書き込んであり、巻之4の初版発行日が明治39年6月20日ですので、初版印刷時のものに間違いないようです。「墨刷」はもう随分前に手に入れたものですが出所が判った折はうれしかったですね。

 

 巻之2口絵  萬朝報附録 合本(1924)右側

 

上掲右図の「巌窟王」は大正13年の萬朝報附録を合本にしたものですが明治版の復刻のようです。相変わらずの人気だったのでしょうが挿絵の素人臭いのが残念です。巻之2口絵はコロタイプのようです。巻之1が木版、巻之2はコロタイプ、巻之3&4は石版刷ということになります。画工はいずれも梶田半古。