本間国雄。東京の印象 大正初期のスケッチ集 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

マフラー・ストール

 

最近偶然につけた本間国雄の画文集『東京の印象(1992)社会思想社』。初出は大正3年南北社から出版されました。本文見開き左にスケッチが100点、右側に短文が添えられています。本間による前文には、折々描いた「通りすがりの田舎者が見た東京の印象にすぎない」とあり、最後に「私の恩人越後関原の近藤勘次郎に捧げたい」と。関原とあるはわれらが地元です。

 

近藤勘次郎は地元の考古学研究家。息子の篤三郎とともに、新潟県長岡市関原町所在の縄文時代中期後半の馬高遺跡から、信濃川中流域を中心に広く分布する深鉢の火炎土器などを発掘した。

 

赤電車

 

スケッチというよりはコマ絵のような感じです。大正時代初期を描いた挿絵も悪くないのですが、添えられた文章がなかなかいい感じ。しゃれた体裁の文庫本です。
 

 

御茶の水          新宿踏切り

 

□お茶の水  やがて春の日が眠ったように、とっぷりと暮れた。ニコライ堂の鐘撞き男が撞く祈祷の鐘が、静かな春の宵の空気を破って響いてくる……深い谷間からは、赤いカンテラが蠢いて、幽かなかすかな艪の音が、悲しいように聞こえて来る。

 

言問にて

 

ちょっと、関東大震災(1923)後を作家&画家がペアでリポートした『大東京繁昌記(1928)春秋社』を連想する。芥川龍之介(小穴隆一)泉鏡花(鏑木清方)北原白秋(山本鼎)吉井勇(木村荘八)久保田万太郎(小村雪岱)田山花袋(堀進一)岸田劉生(スケッチも自身)という豪華メンバーです。

 

『大東京繁盛記』は東京日日新聞に掲載されていますが、本間国雄も東京日日新聞美術記者として勤務されていた。あるいは、社として画文集などへの嗜好傾向があったのかな? 本著は国会図書館でのウェブ閲覧が可能です。

 

本間国雄:東京の印象(1992)社会思想社