怪傑黒頭巾
ときおり立ち寄らせていただいているブログ『明治大正埋蔵本読渉記』では、今回「高垣眸」をとりあげています。高垣眸は明治31年広島県尾道市生まれ。英語教師のかたわら少年向けの冒険小説を書き始め、大正14年雑誌「少年倶楽部」に『海賊奇譚 龍神丸』でデビューしています。
高垣眸:龍神丸(1926)大日本雄弁会
手元にある『龍神丸』は昭和11年刊で実に75版を重ねていて、ものすごい人気ぶり。挿絵は山口将吉郎です。高垣眸はこの後、冒険小説『豹(ジャガー)の眼』『怪傑黒頭巾』と話題作が続き、『怪傑黒頭巾』は戦後の児童書としてずいぶんでまわる。私のは伊藤幾久造きくぞうが挿絵を描いていた。
山口将吉郎 挿絵
単行本『龍神丸』はネット古書店で昭和10年頃の約60版が1〜2万円ほどの値付になっている。美本初版だったらどのくらいになるのかな? 人気の児童書は和洋ともに発行部数の割に美本は稀少でマニア垂涎のコレクションということに。もっとも、私蔵本は函欠で手擦れもあって、なかなかね。
挿絵を描いた山口将吉郎や伊藤彦造はこの時代の(子供たちの)ヒーローといえる。また、少し前に触れた大佛次郎の『ごろつき船(1929)改造社』でもそうですが、昭和初期、戦前は時局もあって海洋冒険譚が多いような気がします。