岩田専太郎:挿絵原画(1964)
上掲、岩田専太郎の挿絵原画は村上元三『岩崎弥太郎』のために描いたもので、鉛筆画にスミベタをのせたスケッチ風のもの。岩田にしては冒険的で気に入っています。連日、岩田専太郎続きで申し訳ないのですが、せっかくなので「虫干し」です。
大佛次郎:ごろつき船(1928)新聞小説
大佛次郎:ごろつき船(1928)大阪毎日新聞
大佛次郎の『海賊伝奇ごろつき船』は、昭和3年6月1日から12月30日まで半年間・全186回、大阪毎日新聞及び、東京日日新聞に連載された。翌新年1日からは『海の隼』と改題して6月11日まで約1年間・全137回、合計323回連載された。データは高木健夫『新聞小説年表(1987)国書刊行会』による。私のスクラップは前半部(186回/欠回あり)のみの半端コレクションです。
舞台は幕末、北海道は松前藩。正義感の強い同心で(愛妻に娘が生まれたばかり)の三木原伊織は、城代家老と商人による抜荷汚職に巻き込まれて藩から追われることに。その三木原の周囲に江戸から流れてきた盗賊や、アイヌ風の謎の男などか絡んで事態はもつれにもつれていく。
大佛次郎:ごろつき船(1929)改造社
大佛次郎:ごろつき船(1929)見開き:左
改造社版の上下本で、一冊の本の厚みが4.5㎝もあってなかなかの量感なのだが、うれしいことに本文用紙が厚いわりには軽く読み疲れがしない。装釘・見開きは岩田専太郎とのことですが、私は岩田の挿絵イメージ(上掲右)を膨らませた版下屋(デザイナー)の仕事だと思っている。
版下・下絵のスクラップ帳(右)
杉浦非水らしき下絵も
実は手元に印刷屋が残したと思われる2百点余の下絵が張り込まれたスクラップ帳を収蔵していて、そこに表紙と類似する下絵が貼り込まれている。私にはこれは(あの忙しい)岩田専太郎が描いたとは思えずまたタッチも違う。
大佛次郎:ごろつき船 下巻 岩田専太郎 口絵
改造社版の単行本下巻にはカラー口絵がついていて、岩田にしてはナチュラルなタッチで気にいっている。ただ、上巻では新聞連載につけた挿絵の中から10葉ほどを掲載しているのに、下巻はこのカラー口絵のみで他に挿絵の挿入はないのが惜しまれる。
連載 第1回
三木原伊織の妻糸と娘の春江
専太郎の風景画が美しい
物語は元御家人・土屋主水正を中心に展開
せっかくなので『海賊伝奇ごろつき船』の挿絵を数葉載せる。戦前の大判挿絵は迫力があってすばらしい。翌日の新聞配達が待ち遠しくなろうものです。