マーティン・エドワーズ。処刑台広場の女 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

沢尻エリカ

 

マーティン・エドワーズ『処刑台広場の女(2018)早川ミステリ文庫』の舞台は1930年のロンドン。美女探偵レイチェル・サヴァナクは事件を解決するだけでなく、犯人には自死を強いるなど冷酷にして非情。レイチェルの父はかつて微罪の犯罪者をも断頭台に送る非情で悪魔的な裁判官として知られた。

 

まさに、この父にしてこの娘あり。それでもレイチェルの犯人追求、苛烈な私的断罪にはなにやら意図が感じられる。新米新聞記者のジェイコブ・フリントは彼女の周囲を探り始めると、なんと自身の周囲は死体の山。やがて、ロンドン上流階級の怖るべき闇が浮かびあがってくるのだが…

 

M.エドワーズ:処刑台広場の女(2018)早川ミステリ文庫

      探偵小説の黄金時代(2015)国書刊行会

 

英国ミステリ界の重鎮として知られるM.エドワーズは、ドロシー・セイヤーズ、アントニィ・バークリー、アガサ・クリスティを中心に、イギリスのミステリ作家の親睦団体ディテクション・クラブの作家たちを活写したノンフィクション『探偵小説の黄金時代』の作者。大時代的な舞台設定にこだわる。

 

アルセーヌ・ルパンもののような古典活劇を連想する内容だが、大味にならないところが苦心の末か。訳者・加賀山卓朗によるあとがきには「ジョン・ディクスン・カーへのオマージュ的作品と思われるかも」などとある。英国ではすでに3作まで刊行されている。続編翻訳本の刊行は、あるか?

 

本著原題「Gallows Court」の映像化にあたってレイチェル役には、本年、舞台で俳優復帰を果たした沢尻エリカさまにお願いしよう。氷のごと視線で瞬殺するアイス・ビューティとなれば彼女しか思い浮かばない。