筒井真理子
サイモン・クインのインクィジター・シリーズ第3巻『ミダス王の棺(1975:邦訳出版1985年)創元推理文庫』Inquisitor インクィジターとは「異端審問官」のこと。主人公のフランシス・キリーは元CIAで、ヴァティカン市国に仇なす凶悪な敵に対する。のだが、キリーはどこからみても無宗教者としか思えない。
007ジェームズ・ボンドが活躍する時代らしく、マッチョで女好き、殺しのライセンスは持っていないようだが、素手で敵を殪すのであれば赦されて?いるようだ。
S.クイン:ミダス王の秘密(1975)創元推理文庫
今回は、恋人に逃げられてショゲているキリーは、傷を癒しにでかけたスイスで元MI.6の友人に、ロシアからスイスに鉄道輸送される金塊強奪を持ちかけられる。同時期、過激なカストラート(去勢者)による宗教集団〝スコペッツィ〟の暗躍が目立つようになってきて、キリーの周辺はきな臭くなってくる。
創元推理文庫のPRペーパー
B級ノヴェルと片付けたいところだが、さすがにライモン・クインらしく金相場の仕組みなどを簡潔に盛り込んでいて、軽い内容の作品に奥行きを与えている。まぁ、凡百なテレビドラマよりはよほど面白い。
『紙魚の手帖』は文庫に挟み込まれたA3サイズ8ッ折のPR紙で、読み物風な情報誌っぽい仕上がりになっている。