正木不如丘・大泉黒石。現代ユウモア全集 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

ドラマ「どうする家康」の山田孝之

 

 

昭和初期の円本「現代ユウモア全集」の正木不如丘『ゆがめた顔』と大泉黒石『当世浮世大學』をみつけた。同シリーズはみかけるたびに買っていたのですでに14冊ほどに。当時このジャンルは滑稽小説、諧謔小説などといわれていたから「ユウモア」は洒落たネーミングで、この全集が大ヒットしたことで世間にこの言葉が膾炙したのかも。詳細は「古本夜話」で。

 

正木不如丘:ゆがめた顔(1929)集英社

大泉黒石:当世浮世大學(1929)集英社

 

口絵:太田三郎(正木不如丘/左)前川千帆

 

「現代ユウモア全集」をあちこち拾い読みしたところ、近代以降のユーモア文学は十辺舎一九『東海道中膝栗毛』辺りをベースに、マーク・トウェインを輸入衣裳替えをした印象。近代ユーモア文学の生みの親ともいえる佐々木邦、当時人気の生方敏郎が全集に名前を連ねるのはわかるが、坪内逍遥(社会運動家の)堺利彦、戸川秋骨、長谷川如是閑が登場するあたりがなんだかね。

 

現代ユウモア全集 第8号月報

 

「現代ユウモア全集」は全12巻、好評だったことで続編12巻が刊行され全24冊。この続編の収録メンバー「細木原青起や池部均に加えて、田中比左良水島爾保布、吉岡鳥平、東健而たちを採用し、漫画漫文集の色彩が強く、つまり大人が読む漫画のコンセプトがここで成立したのではないだろうか(古本夜話)

 

正木不如丘:ゆがめた顔(1929)集英社

大泉黒石:当世浮世大學(1929)集英社

 

ユーモア文学などは一般に低く見られているせいか、その時代に消費されるとすぐに忘れ去られてしまう。それでも懐かしく思い返すのは「どくとるマンボウ」シリーズやお笑い系ドラマだったりするじゃないですか。もう少し大切にしてやってもいいのじゃないかと思ったりするのですが。

 

ということで、イラストは大河ドラマ『どうする家康』で笑いを誘う服部半蔵役の山田孝之と、服部一族の長・大鼠・松本まりかを描く。『真田丸』脚本、三谷幸喜あたりの毒がまわって大河もすっかりコミック化してしまったが、資金力豊富なNHKらしく映像は極めて劇画タッチで決めている。若者向けの作品ゆえ批評はゆずる。