アイドルたちの始球式 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 sketchbook.084 始球式より(旧作を集めて)

 

情報紙の編集を手伝っていた時のこと。ローカルニュースなどもツイッターやインスタグラムで瞬時に共有される時代に「情報〝紙〟」の立ち位置(存在意義)って「なんだろう?」と。もちろん情報格差の社会だから、ネット情報に浴さない高齢者などに発行するのであるならば分かるが、今どき情報紙は〝誰〟が読むのかな?

 

ネット上では情報は瞬時に拡散され消化される。月一回という月刊紙で〝瞬殺情報〟は無意味。試行錯誤の過程で(とりあえず)漉し残ったのが、忘れ去られた人・モノ・歴史、あるいは事象事件などの見方を変えてみるという試みで、月刊紙ゆえそれらの情報の賞味期限が一ヶ月間は必要だということ。そんなことばかり考えていた。

 

 始球式:小松菜奈

 

しかし堅い内容の情報紙など読まれるのか? エンタメとしてのアプローチは必須、娯楽としての体裁は残したい。ということで紙面の表情を和らげるために時おりイラスト・コラムを掲載することに。ゆえに安直ともいえる「始球式ネタ」はお手軽素材だったことは認めたい。暇をみてずいぶん描いたが掲載しなかったものも多かった。

 

 光瀬龍:明治残侠探偵帖(1977)徳間文庫

 国木田独歩:運命論者(近代文庫 1953)創藝社

 

光瀬龍「明治残侠探偵帖」の舞台は日清戦争の少し前、明治の御代もようやく落ち着きを見せ始めているが、官民商人の関係はさまざまな矛盾をはらんで折々グロテスクな様相を見せている。主人公は警視庁嘱託探偵・客警視、新宮寺清之輔と、彼を助けるヤクザ体の捨吉のコンビ。

 

新宮寺は帝大法学部卒業後、英独に留学、法律学と心理学を履修、帰国後は陸軍法律顧問・陸軍中佐の肩書きとともに〝遊撃探偵(客員警視)〟として謎めいた事件の探索にあたる。などと述べると、坂口安吾「明治開化安吾捕物帖」の続編のような。光瀬版はやや政治的明暗のコントラストが強いか。

 

久しぶりに再読してみたが、充分読める。絶版が惜しまれる。織田一麿のスケッチ画像で新装カバーを。国木田独歩「運命論者」は戦後出版の「近代文庫版」が書架にあったので、ポツンポツンと拾い読み。独歩の近代文壇に与えた影響は思った以上に大きい。いずれ機会があったら述べたい。独歩カバーは適当に。