黒岩涙香の古王宮 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 黒岩涙香:古王宮(1899)扶桑堂 

 

黒岩涙香「古王宮」は涙香が発行する新聞「萬朝報」の連載小説として、明治32年2月26日から5月13日まで全54回に渡って連載された。原作はバーサ・M・クレイ「At War With Herself」で、涙香はいつものように自由に翻訳している。「古王宮」は最も好評を得たひとつで彼の絶頂期の作品である。詳しくは堀啓子の論文『黒岩涙香の翻訳小説 Berthe M.Clay 原作の「古王宮」をめぐって』がネットで読むことができる。興味のある方はそちらをご覧いただきたい。

 

ヤフオク落札本で、表紙の上に新たに表紙がつけられているうえに、丹念に補修が加えられている。ちぎれたページもあって、こちらは紙を継ぎ足し欠落した部分は手書きで補ってある。完本だと数万はするところですが、ご覧のような状態なせいか2350円で落札した。それにしても安価すぎる。木版刷の口絵が一枚挿入されていて、こちらは富岡永洗で虫食いなのが惜しい。表紙絵の蝶図も永洗なのだろうか? ちょっと判らない。

 

日本中をやきもきさせた台風10号の北進のせいで、濡れそぼって届いた〝本の抜け殻〟です。配達のおじさんが「濡らしちゃって…」などと申し訳なさそうに届けてくれた。雨中まことにご苦労さまなことでした。