木村毅「竹久夢二」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 木村毅:竹久夢二(1975)明治文献

挿絵文献から竹久夢二を抜かすわけにはいかず幾冊か読んだが、ちょっと好みから外れることもあって手持ちの夢二関連本は少ない。ただし夢二は吉井勇や(夢二と同郷の)長田幹彦などの装幀を手がけていて、どちらも感じのいい小型本に仕上がっている。木村毅は岡山県出身、やはり夢二と同郷のところから、畏敬を込めて彼の伝記小説に手を染めたが、そこは考証派の木村らしく、夢二の投稿時代の初期(雑誌)本を蒐集、そこから多くの貴重なコマ絵が採録されている。

初期の夢二作品は藤島武二の影響を強く受け、小杉未醒や鏑木清方が混ざり込んではいるが、浮世絵の系流から離れた(ディレッタント特有の)風通しのよさ自然な息づかいが心地よい。木村毅本はデビュー前後の夢二に焦点をあて、早稲田の島村抱月との邂逅を柱に、やはり最初のモデル(夢二の柳腰美人画の方向性が定まった)絵はがき屋の還(たまき)についてページを割いている。明治研究家の木村毅らしく、明治時代後半の社会状況や風俗を折込みながら手堅い作品になっている。

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 通勤風景から